「あなたが寝てるところ、初めて見たわ」
先週のお泊りデート
での朝、起きぬけにアタシを抱きしめながら、恋人がポツリと一言。
「え、マジで!!」
思わず、大きな声を出してしまうアタシ。
「やっちゃったなぁ!」
嬉しそうに言いながら、彼はアタシの頭をポンポンと叩いた。
一気に身体の力が抜ける。
「はぁ、もういいねん……(>_<)」
恥ずかしさのあまり、開き直らないと壊れてしまいそうになる。
それにしても、いつ見られたんやろう??
なんでアタシは、目覚めなかったんやろう??
警戒心が強いのか、アタシは昔から、人がいるとうまく眠ることができない体質である。
短大時代は寮生活をしていたけれど、同部屋の子を含め、誰もアタシが寝ているところを見たことがないと言った。
人が眠ってからしか寝られず、起きる気配で目が覚めてしまうからだ。
修学旅行なんか悲惨で、いつも徹夜に近い状態だったことを覚えている。
そんなアタシが、彼に寝顔を見せたらしい。
3年以上付き合って、とうとう……。
彼と初めてホテルに泊まったのは、出逢って半年ほど経ったころだった。
それまで、最高で半年しか男性と付き合ったことのなかったアタシは、泊まりというのが初めてだった。
そのため、行為を終えた後も、半分寝ながら触れてくる彼に、いちいちドキドキしてしまっていた。
初めて迎えた朝は、当然、寝不足。
前もって体質のことを話していたものの、のび太並みに寝つきのいい彼には想像が及ばなかったらしく、かなり驚かれ、そして心配してくれた。
それから何度かベッドを共にするうち、彼が熟睡しているときは寝られるようになった。
しかし彼はいつも、「また全然寝てないやろ?」なんて、心配そうに訊く。
「大丈夫。寝たよ!」
アタシがそう答えても、
「いやぁ、寝てへんって。いつ見ても起きてるもん」
なんて言われた。
彼に心配をかけてしまうことは心苦しかった。
だけど反面、無防備な寝顔を見られたくないという気持ちも強く、「寝てないやろ?」と問われるたび、少しホッとしていたのも事実だった。
今回、寝ているところを見たと言われ、心なしか動揺してしまった。
変な顔、してなかったかな?
寝言やいびき、歯ぎしりは大丈夫やったかな?
寝相は悪くなかったかな?
そんなことばかりが、頭の中をぐるぐると駆け巡った。
こんなんだから、きっと寝られないんだろう。
体質というより、性格の問題か……。
そんなアタシが、どうして彼が起きたとき、目覚めなかったのか。
1つにはおそらく、彼に対する安心感が増した結果なのだと思う。
もちろん、これまでも非常に信頼していたけれど、心を開くまでに時間がかかるアタシのこと、きっとまだまだ開放できていない部分があるのだろう。
そして、もう1つは、異様に疲れていたのだ。
翌日休みを取るということで、いろいろとやっておかなくてはならない仕事を詰め込んだからだと思う。
あ、珍しく2回エッチしちゃったからかしら?(笑)
いつもたいてい1回しかしないのに、夜中の1時ぐらいに、彼が再び求めてきたのだ。
複数回に慣れていないため、疲れてしまったのかな。
「あぁ、もう歳やからしんどいわ」
なんて彼は言っていたけれど、アタシのほうがこたえてるのかも!?
「もう初老やし……」
「何言ってるのよ、バカ(笑)」
アタシがそう言うと、彼はフフッと笑う。
疲れなんてどうでもよくなるぐらい、かなり幸せな時間だった(*^_^*)
「ちゃんと寝られた?」
彼の携帯のアラームが鳴り、そろそろ起きて着替えようと話した後、彼は踏ん切りをつけるかのようにギュッとアタシを抱きしめ、耳元でささやいた。
「だって……見たんでしょ?」
「でも、幻覚かもしれへん。夢で幻を見たのかも」
ひどく自信なさげな彼。
このぐらいおぼろげな記憶なら、変なところは見せていないようだ。
それを暗に伝えようと、彼なりの気遣いでそう言ったのかもしれないけれど、とにかく少しホッとした。
もっと、無防備なほうが“可愛い”んやろうけど、こんなふうに考えてしまう時点で無理な話。
だけど、自らの意思が働いたわけではないにしろ、寝ているところを見せたということは、アタシにとって大きな一歩なのかもしれない。
無意識の深層部分で、許しが出たわけだ。
これからも少しずつ、素直で可愛い女になるための切符を手に入れていきたい。
……うん、がんばろ。
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