モーツアルトはお医者さんだと思ってました


小学校の1年生から3年生くらいまで憂鬱になるのが予防接種、いまじゃ注射はそれぞれ親がかかりつけの医者に連れて行って予防接種をするのですが、昔は学校でおこなわれた。そう注射と言えば必ず小学校の音楽室に行って受ける。おそらく音楽室が一番広くて手ごろだったのだろう。しかし小学校低学年ではここが音楽室だと言う認識がない。低学年は音楽はそれぞれの教室でやるからだ。だからここは注射の部屋と勝手に潜在意識として残っていた。

 その注射の部屋にはたくさんお医者さんの写真が張ってある。バッハ、ハイドン、モーツアルト、ロッシーニー、メンデルスゾーン。ロッシーニーはにこやかに笑っている顔、なぜか横を向いているのがモーツアルト、その前で本物のお医者さんが注射を持って構えている。憂鬱な気分をあざけ笑うかのような作曲家たちの面々・・・

「注射怖いよ!」
「こわがってちゃだめだぞ!」
肖像画のモーツアルトがそういっている。夢にまででてくるのが、白衣を着て注射を持って登場する作曲家たち。

 5年生になって初めて音楽の時間に音楽室を使うようになる。はじめてモーツアルトとは作曲家であることを教えてもらう。そのときさえもモーツアルトの肖像画を見るとおもわず注射の針が頭に浮かんで右手で左手の腕を押さえてしまう。

         そんな経験は私だけだったのであろうか・・・・