あなたが私を呼ぶ時に、
私の名前の後ろに「さん」をつける、
ほんの一瞬の間が好き。


もう少ししたら、
きっと「さん」は聞けなくなるんだろうなって思うから。


ねえ、
私もあと少しであなたの名前を呼べるかも。


お互い、
あとちょっとだね。


たった二文字の短い名前同士なのに、
その二つだけで呼ぶのがこんなに難しいなんて。


もどかしいけど、
こんな時間も大切に感じる。


だって近づいて来る、
あなたの足音を聞いているみたいな気分だから。

あなたも、
あなたに近づいて行く私の足音を聞いててね。



迷わずまっすぐに
歩いて行くから。
一緒にお昼ご飯を食べてたら
熱いお茶が運ばれて来た。
お湯呑みもとても熱くなっていて持てなかったから
「私、手のひらの皮が薄いみたいで熱いもの持つの苦手なんだ」
って言ってみた。

そうしたら
「うん、それ分かる。さわってて、そんな感じがする」
って返事が返って来た。

…そんな言葉、すごい照れる。
あなたも私を確認してるんだなって感じるから。

でも、照れるけど何だか不思議。
感触を確かめてるのは私だけじゃないんだなって事が。


私にとっては、私がいて
“あなた”がいるんだけど、
あなたにとっては、あなたがいて
“私”がいるんだね。



そうか、
“二人”ってそういう事なんだね。


ままならない出来事も
思いが叶う瞬間も

不自由だと嘆く一時も
羽の生えたような解放も

それは絶え間なくやって来る

それも全て
この途方もなく長いと感じる中の一瞬のたった一枚

心の残像が
幾重にも重なり
一つの私を作っていく

私はまるで葉の増えていく樹木のよう


どの葉が本当の私なのかと尋ねられても

どれもが私、なのだから
どれかが私、ではないのだから



離れたところから眺めてみれば
私の形が見えるでしょう

きっとあなたの好きな葉があって
嫌いな葉もある



それが私、なのです