底砂掃除のススメ
先日、これはやはり記事にすべきだと強く思ったことがありましたので、水換え日ではないですが、記事にすることにしました。
結論から言うと、マリンアクアリウムを始めようと思っている方は、ぜひ底砂掃除をちゃんと週に1回掃除をする習慣を続けてほしい、という内容です。
これは私の経験及び今まで得た知識からそのような結論に至っているのですが、その結論に至った経緯について書いてみようと思います。
私自身、淡水水槽は何年も前から惰性で続けていましたが、いまいちうだつの上がらないアクアリウム生活を送っていました。
これは、私のブログの最初の頃に、記事にしていたと思います。
その頃、you tubeをよく見ることがあり、たそがれアクアさんのチャンネルをよく閲覧する機会が多くなり、こんなに淡水水槽を数多く管理し、しかもルーチンワークをちゃんと決めて丁寧に飼育をしている方がいるんだ、と非常に感銘を受けたことを、今でも思い出します。これが概ね2年ちょっと前だったと思います。
一念発起し、淡水水槽を一から作り直し、水換えもちゃんと行い、まず自分の水槽をちゃんと水草が育ち、コケで悩まされることがない水槽を作り上げようと頑張りました。今までは水換えが次第に滞り、コケも繁茂し、見るたびにテンションが下がるような水槽ばかりやっていました。しかしちゃんとメンテナンスを続けると、不思議なもので水槽はちゃんと答えてくれました。ある程度、思い通りの水槽を作り上げることができるようになりました。
これで満足していればよかったのですが、その頃、同じくよく閲覧していたのが、アクアリウム大学のチャンネルでした。ここの社長さんの動画も、非常にわかりやすく、プロはこういう視点で水槽を作り上げているんだなと、非常に感心することが多いチャンネルでした。
この、アクアリウム大学のチャンネルでマリンアクアリウムを紹介されている動画が、私がマリンアクアリウムを始めるきっかけとなりました。なので、私の最初のマリンアクアリウムにおける基礎的な考えは、このアクアリウム大学の動画で謳われているものが由来となっています。
アクアリウム大学のマリンアクアリウム水槽のススメでは、底砂は厚く敷き、底砂掃除はせず、生体は少なめとし、SPSは難しいので飼育しないという、いわゆる初心者向けの飼育法でした。当然自分も初心者でしたので、それに従い、30cm海水水槽を立ち上げたのでした。

それが当時のブログの写真のこれです。
まぁ、いきなりセオリー通りではないと言えばないというか、厚底な底砂なのは確かなのですが、いきなりイソギンチャクを飼育しているんですけどね。しかもアマモ・・・。今思えば、まぁよくここまで難しい条件を揃えたものだと恥ずかしくなります。得た経験から申し上げるなら、アマモ飼育をしたいなら、水温はかなり低く保つべきですし、イソギンチャクも飼育するにはスペースが狭すぎる。ただ、同時は全然わかっていなかったんですよね。でも、カクレがイソギンチャクにもふもふするのは見ていて本当に嬉しかったですし、やってみて良かったとは思いました。
同じ理論で立ち上げていたのが、こちらの水槽です。

底砂が分厚いですよね。淡水から海水に入ると、底砂を厚くと言われると、ソイルを敷くかの如く分厚く敷くと良いと思ってしまうのです。今思えば、よくこんなに敷いたものだと思います。
ブログを最初頃からご覧の方はご存知と思いますが、これらの水槽は今は存在しません。それは、この飼育理論が、少なくとも私の飼育法には合っていなかったからです。
なぜなのか。理由を今から書いてみようと思います。
①マリンアクアリウムは何年もかけて1つの水槽を作り上げていく趣味だからである
この概念を、マリンを始めた当初、知らなかったんですよね。淡水であればソイルが古くなれば、1年程でリセットすることはよくあると思いますが、マリンはそんなことはまずしません。というより、多彩な微生物叢の本当の意味での熟成が、概ね1年程で達成されるため、1年でリセットどころか、1年経ってやっと安定してく感じなんですよね。これが、淡水しかやったことがないうちは全然理解できないんですよね。淡水だと1ヶ月もすれば概ね立ち上がっているじゃないですか。他のネット記事やyou tubeなどでも同じようなことが言われてはいるのですが、実際経験してみないとなかなかこれが理解できないと思います。1年っていうとすごく長いんですけど、やっぱりそのくらいかかるんですよね。よって、場合によっては10年以上かけて同じ水槽を続けていくこともあります。少なくとも、5−6年はリセットせずに続けることが多いです。サンゴの成長はゆっくりなので、5−6年でも、そこそこの成長程度なのです。生体も長生きする個体はかなり長く生きますからね。しかし、これにより②につながっていきます。
②掃除をしないと底砂にデトリタスが蓄積していく
淡水でもそうですが、底砂を掃除しないと、デトリタスが底砂の隙間にどんどん蓄積していきます。デトリタスの蓄積による水質の酸化(pHの低下)に加え、底砂はORPが低下し、底の方になるほど、酸素含有量が低下、窒化還元、硫化還元が行われやすくなります。窒化還元は水槽中のNO3の還元に役に立ちますが、硫化還元は硫化水素の発生を伴い、非常に危険な還元反応です。硫化還元は、使い所によっては脱窒素の助長を行う良い側面がありますが、基本的には硫化還元を起こすようなシステムを組むべきではありません。発生した硫化水素は、条件がそろえば一夜にして多くの生体の命を奪うことがあります。そして、小型水槽における脱窒素は、初心者がよくやりがちな、魚をそこそこの数飼育するシステムにおいて、十分な能力を発揮するには、全くもって力が足りず、それを目的に底砂を厚くすることは勧めません。現状、魚をある程度の数飼育し、かつ水換えの量を少なめで飼育したいなら、BPシステム以外に良い方法はありません。大量水換えを頻回に行うのもありですが、まぁ長続きしないのではないかと思います。飼育者が無理がない範囲で続けられるシステムを組むということは、非常に大事なことです。時間も体力も、無限大に手に入るわけではありませんからね。
③オールドタンクシンドローム
問題は②だけではありません。
数年かけて②が続いていくことで、オールドタンクシンドロームが起きていきます。すなわち、硝酸塩とリン酸が、いくら水換えをしても減らなくなるのです。それは、底砂に長期間かけて蓄積した栄養塩が、底砂だけでカバーできなくなり、常に海水中に放出され続けるようになるということです。これはレイアウトのライブロックでも実は同じ現象が起きるのですが、底砂を厚めにしていると、よりその傾向が顕著になっていきます。このオールドタンクシンドロームの解消法は、リセットか、底砂の毒抜きしかありません。
しかし、淡水水槽と異なり、マリンはリセット=全滅と考えて良いと一般的に言われています。それは、バクテリアの発育が淡水よりもかなり遅く、①に書いた通り、完全な熟成には1年、少なくとも3ヶ月はかかるからです。この間に、同じ数の生体を維持しようとするといくつかの個体が病気となり死亡します。また、サンゴもソフトコーラルであればなんとなかるものもあると思いますが、LPSやSPSでは壊滅的ダメージを受けるものが多く現れます。すなわち、マリンアクアリウムにおいて、リセットをするということは、初心に戻り、一から全部やり直すことを意味しており、今まで積み上げてきたものが瓦解することを意味しています。10年かけて築き上げようとし、夢見てきた光景も、システムの不備により、それを成しうることができないのです。
④景観の問題:底砂が汚くなる
底砂にデトリタスや苔などがつき、どんどん底砂の見栄えが汚くなっていきます。これが嫌でマガキガイを入れたり、ナマコを入れたりするのですが、マガキガイの掃除する範囲は所詮表面のかなり薄いところだけです。また、ナマコはかなり細かいサンドにしないと、綺麗にすることができません。しかし細かい砂を使うと、ORPの低下が同じ厚みでも進みやすくなり、硫化還元のリスクが高まっていきます。かつ、ナマコは水流ポンプに巻き込まれると死亡するリスクがあり、その際サポニンが多量に水槽内にまきちっていくことになるので、非常に危険です。
⑤水槽内の水量が減ってしまう
本来薄敷の底砂にしていれば、もう少し多めに海水を入れることができたものが、厚底にした分、維持できる海水量が少なくなってしまいます。
⑥底砂に病原菌が蓄積していく
魚やサンゴの病気の元となる、いわゆる悪玉菌的な側面を持つ微生物が湧くようになります。これらは普段変化のないタイミングではなりを潜めていますが、何か人為的なトラブルがあった際に、一気に崩壊を招く原因となります。それは魚の病気であったり、サンゴの病気であったりします。これらは、普段から底砂掃除をしていると溜まりにくいのですが、全くしていない水槽では、そのリスクがどんどん上がっていきます。しかしそれを恐れ、ある程度底砂掃除をしていなかった水槽で、いきなり掃除を始めると、これらの病原菌が一気に巻き散ることになり、水槽は崩壊します。すなわち、水槽を立ち上げる時点で、底砂を掃除しないという選択肢を選んでしまうと、自然と自分の首を麻縄で締め続けていくようなことになっていくのです。しかも、それは元に戻ることができない、一方通行の道なのです。
以上が、現時点で私が考える、底砂を定期的に掃除しなければならない理由です。マリンアクアリウムは、水槽設計、どういうシステムを組むのか、それの時点で、ほぼ未来が決まってしまう趣味です。途中でリカバーができるところもありますが、取り返しがつかない部分も数多くあるのです。これが、経験してみないとわからない部分と、有名な人が伝えている内容で、一部誤解を招いてしまう部分があり、私の場合、アクアリウム大学のチャンネルで伝えられていることを鵜呑みにし過ぎていました。もちろんアクアリウム大学のチャンネルを悪く思っていることは全然なくて、すごく分かりやすく解説してくれているし、今でもよく閲覧させていただいていて、自分的には好きなチャンネルなのですが、ことマリンアクアリウムについては、自分としては底砂は薄く、掃除をちゃんと続けるシステムにしないと、後々後悔するようになることを強く伝えていきたいと思い、今回記事にしました。初心者の方に、他山の石と思い、今回の記事を参考にいただければ幸いと思います。なお、現在はちゃんとシステム設計を行い、計5つの海水水槽を維持していますが、いずれも今のところ順調に維持できています。

以前の写真ですが、本当に厚く敷いていましたね・・・今の感覚からすると、すごく恐ろしいことをしていたなぁと思います。
ちなみに、ベアタンクでのサンゴ飼育がアメリカなどで流行していますが、景観が悪いので私はやることはありません。

この水槽を立ち上げていたときも同じ発想でしたね。最初はいいんですけど、栄養塩がどうしても溜まっていくので、底砂が必ず汚くなるんですよね。

分岐点となったのは、やっぱりこの90OFを始めた頃ですね。徹底的に勉強して、最初の設定・設計がいかに大事かを痛感しました。これでも立ち上げ初期の栄養塩の出が、茶ゴケの付き具合でわかります。自分で言うのもなんですが、私もだいぶ目が養われてきたと思います。大体、見た印象と水槽の匂いで、その水槽が破綻しているかうまくいっているかは分かります。
初心者の方はSPS飼育はとても敷居の高い行為と感じると思いますが、是非挑戦してほしい領域と思います。私もまだうまく飼育できているとはとても言えませんが、やはりSPS飼育ができる水槽が、最も自然な海に近く、かつ見ていて非常に楽しい気持ちになる水槽であると、私は思います。そして、それを維持するための勉強を続けてみてください。

では、また水換えの日にブログを更新します。