2月。

 

首都圏の中学受験を経験したご家庭にとっては、2月は、否が応でも中学受験の季節です。

受験本番があり、そしてまた次の学年が始まります。

 

数年前にこどもたちの中学受験を終えたわが家でも、

また今年の受験生のみなさまの受験に合わせて、学校が休みになったりして、

そんなこんなで思い出話をしたりすることもあるのですが、

先日、唇を尖らせた娘に、

「でも、あの合格発表の時のママちゃんは冷たかった!」

と言われてしまいました。

 

 

 

私は中学受験生の母として、かなりの劣等生でした。

塾の面談で一番多く言われた言葉は、

「勉強しなさいって、言わないんですか・・・?」

です。

そして、その答えはいつも、

「そうです、ねぇ・・・あはは・・・」

でした。

 

家庭用としては立派すぎるコピー機を買って、「何回もやるんでしょ!?教材ガッツリコピーするよ!!」と意気込んだものの、

コピーしても全くやらないこどもたちを見て、

「ねぇねぇ、どうせ1回しかやらないんだから、直接テキストに書き込めばよくない?」

と提案し、コピー業務をスリム化。

 

ですがこのコピー機、

「今日のテスト、もうダメかも・・・」という時には、上の子の過去のテストをコピーするのに役立ちます。

(テスト中に見るわけではないので、カンニングではなく、過去問演習ということで・・・!

 ダメですか、ダメですかね💦

 すみません、時効にしてください!!)

息子のトンチンカンな答えまで暗記してしまう娘。

そんな悪事をせっせと手引きする母。

 

 

こういう母は、中学受験生の母としては、かなりの、というか、おそらくはとびきりの劣等生だったのですが、

娘は、中学に上がってからお友達の壮絶受験体験を聞いて驚き、

「ママちゃんがママでよかった❤️」

と何度も言ってくれていました。

過去問演習(という名のカンニング)を推奨する母が本当によかったのかはわからないのですが、

とりあえず、娘はのびのびと中学受験を終え、

娘がそれでよかったと思ってくれたのならよかったなぁと思っていたのです。

それなのに、あろうことか、「冷たかった!」とは!

私は、色々酷かった自覚はありますが、冷たいか優しいかで言ったら、優しかったという自負があります!

 

ですので、びっくりして、

「いつも「ママちゃんがママでよかった」って言ってくれてるじゃない!?」

というと、

「それはそうだけど、でも、あれは冷たかった!!」

と返されてしまいました。

 

 

娘に「冷たかった」と言わせしめた合格発表、どんな合格発表だったのかというと、

その時、私と娘はプラプラと買い物をしていました。

その日も他校の受験があったので、朝から試験を受けて、お昼ごはんを食べ、

その後、散歩がてら買い物をしていたのです。

ちょうどFrancfrancにいる所で、娘が、

「あ、合格発表出てるかも?」と気がつきました。

「あ、そうかもねー、見る?」と、スマホを渡します。

娘が自分の受験番号を打ち込んだりしていますが、

私はその時、本当にハンカチを買い足そうと思っていて、真剣に柄を選んでいました。

フランフランのハンカチ、かわいくて、しかも3枚で990円ってすごくお得じゃないですか!?

わりと定期的に買ってしまうハンカチの一つです。



 

 

真剣に選びすぎて、娘の話を聞いていなかったのかもしれません。

娘 「ねぇ、ママちゃんってば!」

私 「ん〜?ねぇ、これ、どっちがいいと思う?」

娘 「受かってる!」

私 「うーん、そうねー、ま、練習だしさ!で、これ、どっちがいいかな?」

娘 「ママちゃん!見て!!受かってるの!!」

 

ハイハイ、画面見るのね、

うん、合格・・・?

えっ、合格・・・?

えっ、合格・・・!?

「パパちゃんに電話しなきゃ!!!」

お会計の済んでいないハンカチを手に持ったまま、お店を飛び出そうとする私を、娘が必死に呼び止めます。

 

そこから急いで夫や義母に連絡をし、

ようやく一息ついて、娘に、

「すごいねぇ〜!!絶対落ちてると思ってた〜!」

と言ったのですが、

どうやらこれは冷たい合格発表だったようです。

 

 

言い訳をさせてください。

娘には、「だって本当に受かると思ってなかったんだもーん」と笑って言いましたが、

そしてそれはもちろん嘘ではないのですが、

あの合格発表をどうでもいいことのようにしたのには、もっと深い、ふかーーーーい、理由があります。

 

 

 

そもそもその日は、別の学校を受験する予定だったのです。

娘が2年生の時から受験すると決めていた学校です。

ですが、コロナで学校見学が6年生のみになってしまい、6年生になった時ようやく見学に行ってみたら、

「思ってたのと違う・・・」

 

じゃあやめよう!ということで、

(その学校に通いやすい場所に引越しまでしてしまっていたので、その駅を通る度に、

 「ここに通うと思ってたんだよなぁ・・・」と苦笑いする羽目になりました)

そこからたくさんの学校に見学に行ったのですが、

その日に受けられる学校は、どこもピンと来ないようです。

でも、その後の試験のために、その日は受けておいた方がいいかもしれない。

そういった練習に適した学校はたくさんありますが、受かっても行かない学校は受けない、というのがわが家の信条なので、受けません。

その結果、とても素晴らしいけれども、どう考えても受かりそうもなかったため見学にさえ行っていないその学校に、

「もし、当日、気分が乗ったら受ける」ための学校として出願することになりました。

 

ですので、塾の先生に、

「対策プリント、用意してお渡ししたので、ぜひやってみて下さいね!」と言われた時も、

「えっ、あっ、あの、そこまでじゃないみたいで・・・すみません・・・💦」

とお断りする始末。

 

そんな風だったので、私も前日まで、受けるのかなー、どうするのかなー、と思っていました。

すると、塾の先生から激励のお電話を頂戴した時、

その日の受験は見送ると思って声をかけて下さったようなのですが、

娘、「あ、受けます・・・」と言っています。

慌てた先生が、私にかわるようにおっしゃったようで、お電話をかわったのですが、

「受けられるんですね!?」

「はい、そうみたいですね、しばらくのんびりしてしまったので、その方がいいような気がします」

という間抜けなやり取りになってしました。

 

 

 

娘が決められるならその方がいいと思って、何も言わずにいたのですが、

この時私が考えていたのは、息子の受験の時にSAPIXの先生が言って下さった言葉です。

「塾の講師としては、おめでとうございますなのですが、

 彼の今後の人生を考えたら、今回、第一志望は落ちた方が良かったのかもしれません。

 彼は挫折を知った方が良かった。今後が難しくなると思いますが、支えてあげて下さい」

息子は問題児なので、入塾直後から怒られてばかりだったと思いますが、何一つ直さないまま、受験を終えました。

「今日は、6年生でも泣くくらい怒りましたが、顔色一つ変えませんね」とお電話をいただくこともありましたし、

でも、SAPIX的にはアウトなことでも、息子を評価し、褒めていただくこともたくさんありました。

本当に、塾という枠組みを超えて、息子と向き合ってくださる先生で、

変わらない息子を、評価してくださる反面、最後まで心配して下さっていました。

 

 

 

落ちる経験は、人をどう変えるのか。

まだ弱冠12歳で、選抜される、という経験は、成長に繋がるのか。

そしてまた、落ちなかった、という経験は、こどもから謙虚さを奪い、間違った万能感を植え付けてしまうのか。

中学受験の数年間、ずっと悩んでいたことです。

いつでもやめていいと言い続けました。

むしろ、やめた方がいいと言ったことさえあります。

特に息子は、学校の人間関係に悪影響を及ぼしていると感じることがあり、何度も言いました。

一緒に受けた、優秀と評判のクラスメイトのお友達が入塾テストに落ちてしまったことで、

その後ずっと、「あの子よりすごい」といった間違った認識を持たれることになってしまい、そこから抜け出せなくなっているように思えたためです。

小さいこどもにとって、塾のテストやクラスは一大事でしょう。

でも、そこで測れるものなんて、人間のほんの一部です。たまたまです。

中学受験を、大きく捉えすぎないでほしいというのが私の一番の願いでした。

受験は、ただの受験です。

 

 

 

娘の受験において、

娘がその学校を受けるということは、私の目線では、確実に黒星が一つつくということを意味していました。

試験は水物の要素がどうしてもあります。

娘は、うっかりしたら、全勝でいけるかもしれない。

ほとんどをアルファベットクラスで過ごしておいて、よくもそんなことを、と思われると思うのですが、

試験の傾向を見て、娘が得意とするタイプの学校を選んでいることもあり、そういった可能性も考えられると思っていました。

でも、その私でも、その学校だけは、100%落ちると思っていたのです。

ですので、その覚悟で受験をさせました。

当日も、もう二度と来ないだろうと思っていたので、ほとんど敷地内に入っていません。

終わってからも、すぐに翌日以降に気持ちを切り替え、合格発表も、娘が言わなかったら、しばらくは見なかったと思います。

 

 

 

不合格の経験は、してもいいような気がしました。

もう行きたい学校からいくつも合格をいただいていたし、ここでのダメージは、今後の数日に多少影響しても構わないと思いました。

今後の伸びしろとして捉え、バネにしてほしいと思いました。

 

それでも、傷にはなるんだろうな。。。と思います。

ですので、できるだけ、なんてことないようにしたい、と思いました。

残念だけど、どうでもいいことだと伝えたかったのです。

まぁ、そういうこともあるよね、くらいの感じで、

残念っていうのも、別にそこまで残念じゃないよ、と伝えたかったのです。

 

 

 

 

前提が違ってしまっていたので、

全く違った伝わり方をしてしまいました。

 

 

 

 

 

追記

全勝で終わるかに見えた娘でしたが、

模試でも合格確実、塾の先生からも大丈夫だと言われていた第一志望校で不合格になります。

「ママちゃん、受験の時、「4月からお世話になります〜」のテンションで行っちゃったの恥ずかしいよ〜」と、今でも笑ってしまいます。