息子は根っからの交渉人です。
小さい頃、家族でタイの水上マーケットに行ったのですが、
その時からキラキラした金色のものが好きな息子は、どうしても金色に輝くトゥクトゥクのチョロQ的なものが欲しくて、船頭さんに頼んで、お店を一つ一つ回っていました。
でも、かなりふっかけられてしまうんですよね。
値段を聞くと、首を振り、
「No!」とハッキリお伝えします。
私ならここでお店から離れてしまうのですが、息子は生まれながらの交渉人なので、なんとかまけてもらおうと試みます。
ほとんど喋れない英語で、
「I have no money.Down,down,please.」
などと言って、拝むポーズをしてみたりします。
すると1回、いい時は2回ほど値下げしてもらえるのですが、それでも納得のいかない息子、
「ダメだ、別のお店にしよう」と言います。
慌てたお店の方に、「ここまでならいいよ!」と引き留めてもらえたりもしますが、
「No.」と首を振ります。
私ならもう3回は買っちゃってるな・・・と思いながら、何軒もお店をはしごする息子を眺めていると、
最後は、交渉前から良心価格だったおばあちゃんのお店で買っていました。
(それもゴリゴリ値切ろうとするので、慌てて止めました。)
そんな交渉人な息子ですが、年末の旅行の前に体調を崩しました。
お医者様からは、インフルやコロナだったとしても、もううつしたりしないから大丈夫、と言われたのですが、咳がなかなか抜けず、
咳止めを飲みながらの旅行となりました。
旅行は10日ほどの日程で、前半がラスベガス、後半がアナハイムでした。
後半ではほとんど咳が出なくなったのですが、前半のラスベガスではまだ時々咳をしていて、
特に、ラスベガスはカジノの空気があまりよくないのか、
通り抜けようとすると咳き込んでしまうことがしばしばありました。
ジップラインのためにフリーモントストリートに行った時も、帰りに食事をしてから帰ろうということで、トニー・ローマに行ったのですが、
カジノの近くを通ってしまったのがよくなかったのか、入店してまもなく咳き込んでしまいました。
すると、お隣のテーブルのマダムがウエイターさんを呼んで、息子の方をチラチラ見ながら何か話しています。
心配になって「すみません」とお声を掛けると、
「違うのよ、あなたは悪くないわ!彼にお水を持ってきてあげてって頼んだだけよ」
と笑顔で言ってくださったのです。
なんてお優しく、かつ行動力のある方なのだろうと感激してしまいました。
とてもあたたかい気持ちになって、その後のお食事もとてもおいしく感じました。
私が咳をしている方をお見かけしても、「大丈夫かな、かわいそうに・・・、早く治るといいな」とは思っても、
それ以上のアクションを起こすとなると、勇気が出なくてなかなかできません。
もし誰かが物を落とされたら、すぐに拾うことはできますが、
落としたわけではない物を、「重そうですね、お持ちしましょうか?」はとても難しいし、
完全に目が不自由な方のサポートはできるけど、
「もしかしたらお手伝いしたらお役に立てるのかしら・・・」くらいだと、
「どうしよう、どうしよう」と思っているうちにタイミングを逸してしまいます。
でも、そんな私ももう40代です。
あのお優しいマダムのようになりたい・・・!
あんな風にスマートに優しさを伝えることができるように、日々研鑽を積まなくてはなりません。
そして先日、電車に乗っていたら、早速私の覚悟が試される場面に遭遇してしまいました。
電車は、ほとんどの方が座っていらして、それでもポツポツ空席があるくらいの混み具合でした。
私が端の席に座っていると、途中の駅から、お母さん、お嬢さん、ベビーカーに乗ったお嬢さんの3人のご家族が乗っていらっしゃいました。
妹ちゃんはまだ小さくて、おしゃべりもほとんどできない感じだったので、1歳くらいだったのかな・・・?
お姉ちゃんも、トコトコ歩いていておしゃべりもお上手でしたが、でも、それでもとても小さくて、年少さんくらいに見えました。
そのご家族が乗ってこられたタイミングで私の向かいの座席が空いて、お座りになられ、しばらくは順調だったのですが、
お姉ちゃんが妹ちゃんの持っていたスマホを覗き込むと、状況が一変しました。
どうやら妹ちゃんは、一人で遊びたいようなのです。
お姉ちゃんは、スマホが見たいと言っても、「順番ね」と言われてしまい、
しばらくは我慢して静かに待っていましたが、どうやら電車に乗る前からかなり待っていたようで、
何度もそんなことをしていると、とうとう泣き出してしまいました。
妹ちゃんは、スマホがお姉ちゃんに渡るとかなりのボリュームで文句を言いますが、
お姉ちゃんは堪えて堪えて、うるさくならないように我慢しながら、大粒の涙を流して泣くのです。
お母さんは、おそらくは周りへの迷惑を考えて、「電車を降りたら交代にして?」とお姉ちゃんに頼みます。
「でも、もう、私、ずっと観てないよ・・・」と、あんな可愛い声で言われたら、耐えられません。
「どうぞ!これ、お貸しします!!私今、スマホ使ってないんで!!」と、自分のスマホを差し出しそうになりましたが、
絶対受け取ってもらえないんだろうなぁ・・・と必死に思いとどまりました。
何か力になれることはないものかと、
「せめて、辛そうなお母さんに気のきいたことが言えたら・・・」
「我慢してほんとにえらいねって、知らないおばさんに言われても、気持ち悪いだけかしら・・・」
とか、ぐるぐるぐるぐる考えて、変な汗が出てきます。
そうこうしていると、妹ちゃんが自分の後ろを振り返り、ベビーカーの持ち手の部分に手を伸ばしながら、
「うー、うー」と言い出しました。
泣きながらもそれに気づいたお姉ちゃん、涙を拭いながらお母さんのお膝から降り、
お菓子を取ってあげて、「これ?」と差し出すではありませんか・・・!
もう、私まで泣きそうです!!
そうしてまもなく、目的の駅に到着されたようで、降りて行かれました。
「何もできなくてさー。。。
いやー、本当に優しいよね、いい子だよね。。。」
と、事の顛末を息子に話すと、
「ママ、スマホは貸せないよー。
うん、その子はきっといい子に育つだろうねー。
僕だったら絶対、お菓子とスマホ、交換条件ねって言うもん」
と返されました。
なんでこう育っちゃったんだろう。
追記
どうしても冬休みの課題をやりたくない息子、
先生とも交渉して、「次のテストでこの点数が取れれば課題やらなくていいって!」と息子にとってはかなり厳しい約束を、なぜか嬉しそうに自信満々で取り付けてきて、
「いや、絶対無理だからやっときなって」と言ったのに、見事に一つもやらず、
案の定英語が9点クリアできなかったそうで、しばらくは自習室で居残りをさせていただいています。
なんて面倒見のいい先生なんだろう・・・!と感謝でいっぱいなのですが、
なんでこう育っちゃったんだろう。。。
ママはあのお優しいマダムをお手本にするから、
君はあのお姉ちゃんをお手本にしたらどうだい?