トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

ゆいが卓人の異変に気付いた時点で話し合えば良かったのか。頑張ってるスタッフたちのことを考えると、この話し合いは遅すぎたのかもしれない。ゆいだってまさか撮って欲しかったカメラマンがいたなどとこれっぽっちも想像しなかったのだから。しかし、いくら卓人が指名をお願いしたところで、肝心の『神崎妖花』は超有名人しか撮らない。全くの新人と変わらない卓人にはカメラマンを指名するのはお門違いなことだった。

先生に咎められ、ゆいから説教をされた卓人はどう感じたのか、少しずつ表情がハッキリしてきた。ゆいがカメラを構える姿を後ろからスマホで録画しながら見ていた製薬会社の広報さんと広告代理店の人が何やらコソコソと話をしていた。

そして先生にCM撮影はこの場所を使いたいと話を持ち掛けた。

先生にとっては願ったり叶ったりで二つ返事でOKをした。

ゆいの撮影は終わらないので、代わりに先生が契約書に目を通すことになり、現場の見学はここまでとなった。

先生から軽く話を聞いたゆいは汗だくの中、広報さんたちに一礼。それでも爽やかすぎる笑顔は印象が良かったようだ。

 

しばらく撮影は続いたが、どうせ今日は遅くまで掛かる。ゆいは一旦中断し、スタッフ全員を集めた。そして事情を話し、納得いかなかった衣装の撮影をやり直したいがどうしたらいいか、お願いではなく相談をした。撮り直したい衣装は2着分。事が事なだけに先生からの小言を聞いていたスタッフたちは、本当ならここは卓人本人が気持ちを切り替え自ら発信するが物の通りだと誰もが思っていた。それをゆいに言わせること自体まだ心を改めていないのかとスタッフたちの視線は卓人に。

「分かりました!やりましょう!」

一人のスタッフが声を掛けると全員が『やりましょう!』と言って持ち場に入ってくれた。スタッフたちがゆいに賛同してくれても卓人は何も言わないままだった。

 

スタジオの中が大変な頃、今もテラスで一人時間を過ごす小百合は、ゼミの時間まで後30分ほど二人のインスタグラムに過去の思い出を投稿していた。

時系列は合ってないが、二人の大事な思い出なのだから時期がずれても構わない。ちなみにUPしたのは、ドライブ中のゆいの横顔とベッドで顔を寄せ合う幸せいっぱいの笑顔。そして自分だけのものにしたかった、ゆいの寝顔。今まで何度もこっそり撮って来たゆいの無防備な寝顔はいっぱいあるが、その中でも小百合が一番好きな、小百合のツボにハマった寝顔。

どこが?と言われると答えに困るが、唯一横を向いていると言えばいいのか。

もしゆいがいない日の夜に一人で寝る時があるなら、この写真を見ながら寝たら淋しくないかもしれない。

「これUPしちゃったけど絶対に怒るよなぁ。でもコメント読んでくれたら分かってくれるかな」

ゆいは今、撮り直しの衣装一着目が終わり、チェックしながら一息。

溜息を吐きながらスマホを開けると小百合からLINEが入った。

『インスタUPしたけど怒らないでね❤』

何だろうと呟きながら席を外してコソっと開けた。

寝顔の自分を見たゆいはビックリ。

『私の一番好きなゆいの寝顔。こっちを向いてくれてる唯一の写真なんだ。

夜一人で過ごすときが来たらこのゆいを見て寝ようと思う』

「いつの間に!でもこの写真で気持ちが紛れてくれるなら」

ゆいはコメントの返事を書き込み、次の撮影に入った。