前回 の続き、やっと本題の呼吸のやり方です。


妊娠中&出産時の呼吸ということでご紹介します。


「少しずつ、長く息を吐く」ということですが、具体的には「腹式呼吸を声を出しながら行う」ようにします。


まずは腹式呼吸から。


腹式呼吸とは吐くときにお腹が凹む呼吸です。


あまりやり方を意識すると混乱するので、最初のうちは寝る前や運動の後、リラックスした深い呼吸をしているときに、自分のお腹に手をあてて、「どんな呼吸をしているか」を確認すると良いかと思います。


先ほども書きましたが、寝ているとき=リラックス時はみんな腹式呼吸をしているのです。だから腹式呼吸にこだわって、ガンガン練習をするよりも、まず自分が落ち着いているときに「自分の呼吸を観察する(感じる)」というところから始めると、練習がスムーズに進みます。


吐くときにお腹が凹む状態を感じられるようになったら、少しずつ普通に起きているときにもできるかどうかを試してみましょう。


慣れてきたら「吐くときには腹横筋(背中からお腹にかけての、着物の帯のような形をした筋肉)で赤ちゃんをしっかり抱きしめる、吸う時には赤ちゃんのお家(子宮)をふっくら大きくさせる、というイメージを持つと良いでしょう。


通常の腹式呼吸はこれだけなのですが、妊娠中&出産時にはこの呼吸にプラスして、「吐くときに低い声を出す」ということをプラスします。


のどには力を入れず、「オー」とか「ウー」など、できるだけ低い声をお腹に響かせるようにします。産道から声を出すようにイメージしましょう。


なぜ声を出すと良いのでしょう?


理由は大きく3つあります。


1)出産時に赤ちゃんがスムーズに出やすい状態をつくる

2)リラックス状態をつくる

3)胎教のため


詳しく見ていきます。


1)出産時に赤ちゃんがスムーズに出やすい状態をつくる

会陰(赤ちゃんが出てくるところ)、腹筋、のどは実は連動して一緒に動きます。


例えばおしっこを我慢する(会陰のそばにある尿道を締める)と下腹部に少し力が入り、喉の奥が少しつまった感じになります。


だから腹式呼吸で息を吐く(=お腹を凹ませる)と、通常は会陰とのどもキュッと締まります。


でもこの時に低い声を出す(=のどをゆるめる)と、のどに連動して会陰がゆるみやすくなります。


すると、腹圧で赤ちゃんを外に押し出しながら(お腹を凹ませながら)、出口である会陰をゆるめることができるので、赤ちゃんが外に出る動きを応援することになるのです。


本番で一発でできる人はまれなので、事前に知識を得て、練習をしておくことをお勧めします。もし腹式呼吸がうまくできなくても、出産のときに、低い声を出すといいのだな、力まなくていいのだな、と知っているだけでもリラックスにつながりやすいと思います。


また、出産をお手伝いしてくださる助産師さんやお医者様が、この呼吸法を知らないということもよくあるそうなので、事前に「ヨガで習った呼吸法を試したいです」という意思を伝えておくとよいかもしれません。


また、熟練した助産師さんは、一人一人に合った呼吸法をその場で伝えてくださると思うので、このやり方にこだわらず、助産師さんのリードに身を任せる感覚も必要だと思います。


2)リラックス状態をつくる

呼吸と自律神経(リラックスに関係しています)は連動しています。


吸う息は交感神経(元気が出る)、吐く息は副交感神経(リラックスして眠くなる)に関与しているので、吐く息を長くすると、ほぼ自動的にリラックス状態になってしまいます。


やってみればすぐわかりますが、低い声を出しながら呼吸をすると、自動的に吐く息が長くなります。だから、リラックス状態に入りやすいのです。


また、自分の低い声を自分で聴くことで、自分の居場所がはっきり自覚でき、気持ちも落ち着きやすいのです。


出産時だけでなく、妊娠中のリラックス法としてもとてもおすすめです。


3)胎教のため

リラックスした妊婦さんから発せられる低い声には、赤ちゃんの気持ちをリラックスさせる「胎教」の効果があります。モーツァルトの音楽などに含まれることで有名なα波がたくさん含まれているそうです。


赤ちゃんのためにも、出産の練習のためにも、妊娠中から練習をするとよいでしょう。


※注意事項

1)思った以上に腹筋を使うはずなので、お腹が張りやすい方もいるかと思います。お腹に少しでも異変があったら、練習をやめるようにしましょう。がんばらなくていいのです。


2)腹筋をたくさん使う、ということから本格的な練習は安定期に入ってから、そして経過が順調な時にしましょう。