ヒロイン「あると思った。この無駄に広い書物室、絶対あると思った。流石ジョシュア様、別名マニュアル王子。でかした」
大人の女になると決めた私は、行動に移すべく早速マニュアルを読むことにした。
ドレスヴァンの城内にある書物室、別名無駄なマニュアル本の宝庫。マニュアル本大好きジョシュア様に心から感謝しつつ、私は「大人の女になって男という男を悉くただの奴隷にする方法」なる本を読み始める。
誰だこんな本買ったのは。ジョシュア様か。ジョシュア様なのか。どういうつもりでこれ買ったんだ。
そう思いながらも、なんでもいいからガチですがりたい私は夢中で羅列された文字に目を通していった。
ヒロイン「なになに。男は偉そうにしつつも女から振り回されるのが大好きなドエム。男は所詮女の家畜。鳴かせることに罪悪感不要。男は女主人にいびられて初めて幸福を知る実に賎しい生き物…そうだったのか!えーっと男の振り回し方は…ふむふむ。成程。頑張れば出来そう。よし、頑張れ私!待っててジャンさん!ブンブンに振り回してメロメロにしてあげる!」
大臣「書物室ではお黙りなさい!」
ヒロイン「うるせぇハゲ!!ケツに藁突っ込んで燃やしてやろうか!!」
大臣「ひぃっ!」
ヒロイン(…と、こんな感じでいいのかな。お!大臣震えてる!興奮してんのか!効果抜群!私ったらなんて罪な女!)
マニュアル通りの生き方なんてつまらないと思っていたけど、ジャンさんが関わるなら話は別。私は必死だから。男には年齢制限というものがあまりないが、女にはあるわけで。色んな意味で後がないからぶっちゃけちょっと焦っているわけで。マニュアルにもすがりたくなるわけで。
私は今から、クレオパトラになる。
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ジョシュア「オイ」
ジャン「そして明日の会議の後は」
ジョシュア「オイ、と言っている」
ジャン「はい?」
ジョシュア「あれは一体何事だ」
ジャン「…何事でしょうね」
ジョシュア「あいつ、とうとう脳ミソがマシュマロになったのか」
ジャン「どうでしょう。ジョシュア様が送られた大量のマシュマロとマカロン。あれ、彼女律儀に全て召し上がっておられましたしね」
ジョシュア「俺は悪くないぞ。俺のせいではない。…ち、違うったら違うぞ。絶対違うからな」
ヒロイン「あらぁ~僕ちゃぁん。調子はどうかしらぁ?」
ジョシュア「僕ちゃんだと?まさか俺のことを言っているわけではないだろうな」
ヒロイン「生意気な口をきく子にはケツからムカデ突っ込むわよ」
ジョシュア「ムカデを尻から?い、一体どうなるんだ…想像も出来ん」
ジャン「ジョシュア様、お気を確かに」
ジャンさんはケツからムカデを入れられた気になって顔面蒼白になっているジョシュア様を支えながら私を見た。
ジャン「ヒロイン様、いかがなさいましたか?メイクもなんだか…」
ヒロイン(気付いてくれた!)
ジャン「デーモン小暮のよう」
ヒロイン「お前も蝋人形にしてやろうかー!って、デーモン小暮じゃないわよバカバカァン!」
ジャン(口調がまるで昔言い寄ってきた新宿二丁目のオカマそのもの。奇抜なメイクに髪型。服装も…ヒロイン様、それ見せブラちゃう。モロブラや。最早ダサいとかそういうレベルじゃない。ホラーだ)
ヒロイン「あぁん、なんだか暑いわぁ~ん」
ジャン「ヒロイン様…なにかあったんですか」
ヒロイン「うっふん」
私はジャンさんのネクタイを引っ張り、顔を近付けてウインク。あ、チクショウ、白目になった。ウインク難しいなクソ。
ヒロイン「いいことベイビー」
ジャン(きゃ、キャラがよくわからんことに)
ヒロイン「私に言い寄ってくる雄豚は5万匹といるのよ。私の前で這いつくばってブヒブヒ言ってるわ。でもそうね…貴方は特別、ただの雄豚ではなくイベリコ豚という地位をあげてもいいわよベイビー」
ジャン「えっと…」
ヒロイン「食えない豚はただの豚よ。食える豚も、ただの豚だけどね」
ヒロイン(決まった…!)
私はジャンさんを解放し、優雅に立ち去る。ジャンさんだけではなくジョシュア様もが私に熱い視線を送っていた。間違いない、大成功だ。
ヒロイン(マニュアル本バンザーイ!!)
ジョシュア「…俺のせいなの?俺がマシュマロとマカロン大量にやったから、あんなことになってしまったの?」
ジャン「ど、どうでしょうね」
ジョシュア「俺、とんでもないことをしてしまったのだな。オリエンスの警視総監から逮捕状きたらどうすればいい?ヤコフのせいにすればいい?」
ジャン「ジョシュア様、ひとまず冷静になりましょうか」
ジョシュア「ひっひっふー」
ジャン(ヒロイン様に一体何が…)
―――――――
ヒロイン「きったぞーきたぞホワイトデー♪」
やれるだけのことはやった。滅茶苦茶しんどかったが、後悔はしたくなかったから思い切りマニュアル通りに振る舞った。心なしか、ジョシュア様やら他の男共が私に優しくなった。さては惚れたな…?つくづく私は罪な女だ。全員フラなきゃならんのだからな!!
肝心のジャンさんはというと…私の方を切なそうな目で見てくるようになった。ヤキモチですね、分かります。
取り敢えず今晩ジャンさんが部屋に来ることになってるんで、私は街にイベリコ豚を買いに行くことにした。
ジャンさんが告白してきた暁には、目の前で生のイベリコ豚を食いちぎってやろうと思う。
きっと
ジャン『ヒロイン様!豚肉を生で召し上がっては…!菌が…!』
ヒロイン『ベイビー。伝わったかしら』
ジャン『え』
ヒロイン『生の豚肉が危険なのは承知の上』
ジャン『なら…何故っ』
ヒロイン『命の危険を犯してまで、あなたをいただきたい。そう、体をもって言ってるのよベイビー』
ジャン『そこまで俺のことを…貴女って人は、なんて良い女だ!!』
こうなるに違いない。
正直このキャラ演じるの疲れるけど、ジャンさんの為にやりきってみせる。
ジョシュア「なにをしている」
ヒロイン「ぶえ!?ジョシュ…ぼ、僕ちゃぁ~んなにしてるのかしらぁん?SPはどこにいるのかしらぁん?まさか、一人で街中にきちゃったのかしらぁん?悪い子ねぇ~ケツにストロー挿して空気いれたろかしらぁ」
ジョシュア「ムカデとどっちがヤバい?」
ヒロイン(知るか)
ジョシュア「ふん。俺だってな、一人で街を歩くことくらいどうということは」
一瞬でジョシュア様が目の前から消えた。そして、一台の車が猛スピードで去って行った。
ヒロイン「…おっと。冗談でしょ。何が起こった」
黒服男に引き摺られ、一瞬で車に乗せられたジョシュア様。その車は猛スピードで…
ヒロイン「誘拐ダアアアアアアア!!!」
周りにいた人らが化け物を見るような目でこっちを振り向いたが、気にしてる暇などない。童貞だけど恋愛対象外だけど、一応私にとっては大事な人なのだ。
私は車が去った方向に猛ダッシュしながらスマホを手に持った。そして、ジャンさんにかける。
ジャン『もしもし』
ヒロイン「ジャンさん!!」
ジャン『どうしましたか?』
ヒロイン「ジョシュア様が誘拐されました!今、追いかけてます!今私はイッテェエエ!!」
ジャン『ヒロイン様!?』
グキィッと音を立てて足が可笑しな方向に曲がったと同時にぶっ倒れた。その拍子にスマホが道路にぶっ飛び、トラックに轢かれた。
ヒロイン「ワァオ!アンラッキー!!って、こんなことしてる場合じゃないってーのぉ!」
私はヒールを脱ぎ捨てる。
ヒロイン「武器、武器はないか…ハッ!ポケットの中には裁縫ばさみが一つ!よし、一応武器は確保した!いざとなったらこれで眼球突き刺したろ!」
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その頃、ジャン。
コック「ジャン様?」
ジャン「…すみません。急用が出来ました」
コック「この、作り途中の煎餅はいかがしますか?」
ジャン「帰ってきてから、作り直します」
続く