走って転んだ。血が出た。かさぶたになって治った。走った。転んだ。血が出て治った。繰り返し繰り返し転んだ。起き上がるのがしんどかった。そのうち転ぶのが怖くなった。起き上がるのが面倒になった。転びそうになって怯えた。転んで泣いた。走るのが怖くて歩いた。それでも足元はぐらぐらだった。まるで一本足で立っているようだった。膝は傷だらけだった。もうくたくただった。止まりたくなった。そんなときに転んだ矢先に松葉杖を手に入れた。それは私に似た弱々しい松葉杖だった。転びそうになったら支えてくれた。それが松葉杖の役割だから。けどやっぱり転ぶこともあった。血が出た。そんなとき立ち上げてくれた。その弱々しい棒で。今度は泣かなかった。止まらなかった。松葉杖があるから歩くのを止めちゃいけない気がした。だからまた歩いた。時々走った。転んでも泣きながら立ち上がった。そこにはちゃんと支えがあった。支えがあってもおぼつかない足元は変わらない。足の傷は治らない。跡は残る。きっとまた傷は出来る。けど私はまだ歩き続けたかった。だから明日も歩き続けよう。





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