ピッ、ピッ、ピッ、ピッ
「ふぅーっ」
ガチャ。

「…おはようございます…」

………

この部屋に誰もいないわけではない。
無視しているのだ。

千尋の部署は個人情報を取り扱っている為、テンキーの暗証番号が必要になる。
しかも、この扉は重い。いや、千尋の気持ちも乗っているからかもしれない。

「おはようございます。」

隣の席の課長の川端に挨拶をした。
川端は目の端でを見て「うん。」と言うだけで千尋を見ない。

ガチャ

「おはようございます!」

常務の道中が入ってきた途端、座ってた5人全員が起立し、元気良く挨拶をした。

道中と千尋はほとんど話す機会がないが、優しい口調であることだけは分かる。
そんな程度の存在だ。

「いやー。今日も暑いですねー。そういえば。。。」


朝から川端の猫なで声が狭い部屋中に響きわたっている。
他の4人の男どもも道中と話したくてたまらないようだ。

千尋以外は全員男性の職種。
千尋を含めて7人の部署。
そして、千尋にとっては全員が敵なのだ。
味方は1人もいない。

忖度しかない空気の中、今日もとりあえず生還して家に帰るのだ。