『私なら』…心の傷寄り添う 法テラス 犯罪被害遺族が相談業務
今月、開業一年を迎えた日本司法支援センター(愛称・法テラス)の電話相談で、犯罪被害者の遺族たちが電話相談を受けている。
殺人事件や交通事故の遺族、性犯罪の被害者…。
深く傷ついた痛みの声をすくい上げ、どう法的救済へとつないでいくのか。
自ら痛みを知る遺族オペレーターにとっても手探りの日々が続く。(佐藤直子)
東京・新宿の高層ビル群を間近に望むオフィス街にある法テラスコールセンター。
八十人のオペレーターが待機する相談室の一角で、都内の犯罪被害者自助グループで活動する遺族三人のほか、検事、警察官出身者ら十数人が被害者からの相談を担当している。
遺族の一人、都内在住の糸賀美恵さん(53)。電話の向こうで消え入りそうな声にも耳を澄ませ、相づちを打ちながら聞き取っていく。
相談者が何も話さなくなると、沈黙を共有してじっと待つ。
無理に聞き出したりはしない。
『話せることだけを話してくださいね』。こう伝えた途端に、堰(せき)を切って話し始める相談者もいるという。
今は落ち着いて話せるようになった糸賀さんも、長い間苦しい時間を過ごしてきた。二〇〇二年五月、当時二十五歳だった長男が、かつて交際していた女性に刺されて亡くなった。
女性には自殺願望があり、警察の捜査に「道連れにしたかった」と動機を語った。
裁判では謝罪の言葉もなかった。
突然肉親を奪われた喪失感に糸賀さんは体調を崩し、二年間は誰とも話せず、日常生活を送るのも難しかったという。
電話相談で自分が被害者の遺族と名乗ることはない。
それでも、時々相談者の痛みに自分の経験が重なって涙ぐみそうになる。
「だから、私は『あのとき』自分がこんなふうにしてほしかった、と思うことをしているんだと思いますね」
長男の事件を週刊誌などが興味本位で書き立てた。
警察や弁護士の対応などにも不満が残った。
だが、当時の糸賀さんはその無念を誰にも語れなかった。
犯罪被害給付制度の拡充など被害者に対する法整備は少しずつ進んできている。
だが、「ある日突然に」被害者になってしまう当事者にとって、どんな救済内容があるのか、どうしたら受けられるのかなどは分かりにくい。
「相談者が必要とする情報を分かりやすく伝えたい」と語る糸賀さんは、法テラスに対する期待を込めて言った。
「私のような被害者遺族も相談業務にかかわることで、法テラスが市民に身近な組織になれば。一日も早く被害者が立ち直れるきっかけの場でありたい」
●法テラス
日常生活で法的なトラブルを抱えた市民への援助を目的に、司法制度改革の一環として昨年10月に業務を開始。
コールセンター(東京)に寄せられた相談は業務開始から1年間で23万6000件で、半数は消費生活関連の相談だった。
犯罪被害者支援の専用ダイヤルへの相談は6700件で、生命や身体に危険を及ぼす性被害やドメスティックバイオレンス(DV)被害、暴行に関する相談が大半だった。
“司法過疎”の解消にも取り組んでおり、全国で刑事事件の国選弁護などに当たる常勤の「スタッフ弁護士」として58人を採用し、地方事務所など計38カ所に配置した。
コールセンター=
(0570)078374、
犯罪被害者支援の専用ダイヤル
=(0570)079714
■もしあなたのまわりにDVや性被害で悩んでいる人がいたら、法テラスのことを教えてあげてください。
殺人事件や交通事故の遺族、性犯罪の被害者…。
深く傷ついた痛みの声をすくい上げ、どう法的救済へとつないでいくのか。
自ら痛みを知る遺族オペレーターにとっても手探りの日々が続く。(佐藤直子)
東京・新宿の高層ビル群を間近に望むオフィス街にある法テラスコールセンター。
八十人のオペレーターが待機する相談室の一角で、都内の犯罪被害者自助グループで活動する遺族三人のほか、検事、警察官出身者ら十数人が被害者からの相談を担当している。
遺族の一人、都内在住の糸賀美恵さん(53)。電話の向こうで消え入りそうな声にも耳を澄ませ、相づちを打ちながら聞き取っていく。
相談者が何も話さなくなると、沈黙を共有してじっと待つ。
無理に聞き出したりはしない。
『話せることだけを話してくださいね』。こう伝えた途端に、堰(せき)を切って話し始める相談者もいるという。
今は落ち着いて話せるようになった糸賀さんも、長い間苦しい時間を過ごしてきた。二〇〇二年五月、当時二十五歳だった長男が、かつて交際していた女性に刺されて亡くなった。
女性には自殺願望があり、警察の捜査に「道連れにしたかった」と動機を語った。
裁判では謝罪の言葉もなかった。
突然肉親を奪われた喪失感に糸賀さんは体調を崩し、二年間は誰とも話せず、日常生活を送るのも難しかったという。
電話相談で自分が被害者の遺族と名乗ることはない。
それでも、時々相談者の痛みに自分の経験が重なって涙ぐみそうになる。
「だから、私は『あのとき』自分がこんなふうにしてほしかった、と思うことをしているんだと思いますね」
長男の事件を週刊誌などが興味本位で書き立てた。
警察や弁護士の対応などにも不満が残った。
だが、当時の糸賀さんはその無念を誰にも語れなかった。
犯罪被害給付制度の拡充など被害者に対する法整備は少しずつ進んできている。
だが、「ある日突然に」被害者になってしまう当事者にとって、どんな救済内容があるのか、どうしたら受けられるのかなどは分かりにくい。
「相談者が必要とする情報を分かりやすく伝えたい」と語る糸賀さんは、法テラスに対する期待を込めて言った。
「私のような被害者遺族も相談業務にかかわることで、法テラスが市民に身近な組織になれば。一日も早く被害者が立ち直れるきっかけの場でありたい」
●法テラス
日常生活で法的なトラブルを抱えた市民への援助を目的に、司法制度改革の一環として昨年10月に業務を開始。
コールセンター(東京)に寄せられた相談は業務開始から1年間で23万6000件で、半数は消費生活関連の相談だった。
犯罪被害者支援の専用ダイヤルへの相談は6700件で、生命や身体に危険を及ぼす性被害やドメスティックバイオレンス(DV)被害、暴行に関する相談が大半だった。
“司法過疎”の解消にも取り組んでおり、全国で刑事事件の国選弁護などに当たる常勤の「スタッフ弁護士」として58人を採用し、地方事務所など計38カ所に配置した。
コールセンター=
(0570)078374、
犯罪被害者支援の専用ダイヤル
=(0570)079714
■もしあなたのまわりにDVや性被害で悩んでいる人がいたら、法テラスのことを教えてあげてください。