日本は人づくりの方向性を確実にしていく意志があるのでしょうか。



もう、メイドインジャパンの時代はとっくに終わってしまっていると僕は思っています。

僕は、モノづくりが好きです。決して、モノづくりが終わっているなんて言いたくはない。
モノづくりのプロセスの中に、人の持つ創造性の広がりや、可能性への刺激、心の振動や共有共感。人への関心や、なにより自分の心をどこに置くのかという世界を経験することができるから。

モノづくりは、その先に必ず誰かがいる。その対象が、愛する人かもしれないし、子供かもしれない。自分自身であることも少なくはない。その時は、必ずその人の顔が出るし、使う人の感情や生活が創り手側のイメージ空間の中に出てきます。

だからこそ、モノ作りは大好きなんです。


今の日本が創るモノづくりの中に、どれほど心を通わせる振動がそのモノの中に見てとれるでしょうか。
今使っている携帯の機能の内、何パーセントを使いこなしているのでしょうか。

使い切ることのできない機能を搭載するよりも、子どもが憧れるような仕事が、これからの人類には必要なのではないかと思うのです。



でも。
日本のモノ作りが、機能ばかり、形ばかりの内容になってしまったのは、消費者がそうさせてしまったのではないかと、僕は思っています。
意識的な刺激ばかりを求めてしまい。高さ的な豊かさばかりを求めてしまった結果が今なのだと思っています。

今のモノづくりを心が共有できるようなモノづくりに変えていきたい。それが僕の夢の一つでもあります。
そのためには、消費者の意識が変わることがとても、とても大切です。
消費者、つまり、68億人の意識が変わること。

技術のイノベーションではなく、人の意識のイノベーションが必要だと思うのですが、どう思いますか。

日本は、不完全なものに対して、美や情緒的感覚をもつことのできる感性を持っています。
この日本独自のわびさびの文化や独特な感性のスイッチが入れば、難しいことではないと思うのです。

今の時代、簡単に○や×で判断してしまう、善悪で判断してしまう、出来る出来ないで判断してしまう傾向がとても強い。そんな時代だからこそ、『日本』の人づくりへの関心がもっと、もっと高く、広がってほしいと強く想います。

敗戦の中で、これだけ物質的にも経済的にも、他の国が真似できないほどの奇跡を起こすことのできた日本。
その成長が他の国の人々にどれほどの夢や希望を与えたことか。


日本が人づくりを選択する時代が始まりました。