☆A Y U M I Z M☆-2009110711120000.jpg

今までに見たことのない蕁麻疹が現れたのは約10日前のことだった。
「内臓が疲れているんだな」
たまたま出現した場所が初めてなだけ、「いつものことだ」と特に気にせず過ごしていた。

生活態度を変え、一週間経ったのにも関わらず、様態の変わらない身体に多少の疑問を持ち始める。
「でも、持病でアトピーをかかえているし、、もう少し様子を見よう」
皮膚の異常には幼い頃から慣れっ子だった私。小さな疑問は抱きつつも、あまり深く考えないように心掛けた。

数日後。
やはり蕁麻疹が消えない。月経前に必ずある腹部の痛みを感じる。
「そういえば、、生理も近いことだし、免疫力も低下しているんだろう。」

私の場所、月経前に感じる憂鬱さや腹部の違和感が、早い時で月経2週間前からおとずれる。
逆に『月経前』であればどんな身体の不調も『月経前』のせいにしてきた私。

「毎月同じ周期で月経が来るんだもの、健康な証拠だわ。」

と、高を括っていた。

腹部の痛みを感じた次の日。
私は今まで経験したことのないような痛みに襲われた。
今までで一番酷い生理痛のような、下っ腹にしても下すぎる部分がパンパンに腫れだしたのだ。

「いったいな~。。まるで子宮の筋肉がツッタみたいに…」

そのうちにその膨張は、腸、胃に達し、みぞおち部分をしめつけられる痛みに襲われ呼吸もうまくできなくってしまった。

「こりゃ~本当にヤバイかも。。」

終いには痛みが肩まで達し、どの体勢でも息苦しくなってきた。

「病院に行きたい…」

時間は既に夜八時をまわっていたので緊急になってしまう。仕方ない、もう少し様子を見てみよう。。

痛みのせいで寝返りを打つのもままならない身体だったが、その日はご飯も食べず無理矢理に床についた。

次の日、こちらの日の出時間近くに、腹と胸に激痛を感じ目を覚ました。

「こりゃ~普通じゃない。。病院へ行かなくちゃ!」
急いで知人を呼び、病院へ連れて行って欲しいとせがむ。
日本では掛かり付けの医者がいるくれど、何せ海外で大病などしたことのない私たち。どんな病院へ行けばよいかも分からない。
とりあえず、日本語が通じる病院へ行こうと判断した。時間は起床から一時間半が過ぎていた。

その時既に私は尋常ではない冷や汗をダラダラとたらし、立ち上がることもままならないほどに状態が悪化していた。

「車まで頑張って!」

廊下を這いつくばりながら必死にエレベーターに乗り込む。しかしエレベーターの揺れで酔ってしまい吐き気がおさまらず、胸が苦しくて上手く空気も吸えないのであくびばかりが出て、自分がどんな姿なのかも分からないほど意識も朦朧としていた。

意識がぶっ飛びそうになりながらも車の後部座席に乗り込む。
車の微動すら痛みとなって身体中に響く。
「私、どうなっちゃうの?!」
なんとか日本語の通じる病院のあるビルに到着するも、気持ちが悪く意識も朦朧としていた私はその場に倒れこんでしまった。

「もう無理。。歩けない。。」
地面に横たわる私。

「ゆっくりでいいからね!」
知人が肩を優しくさすってくれた。
その手には母親の温もりを思い起こさせるような安心感があった。
異国の地での緊急事態、虚ろな意識の中…両親の姿がうつる。
「お母さん…どうしよう…」
呼吸もままならず、気が動転している私を

「もう大丈夫、大丈夫だからね。」

と一生懸命励ましてくれた母のような知人の温もり、とてもとても、心強かった。

そのビルのドアマンだったのだろうか、近くにいた自称『日本人』だというおじさんが

「大丈夫?」

と日本語で声をかけてきた。
何故か日本語が流暢な彼は私の状況を確認するなり車椅子を持って来てくれた。
英語がうまく話せない私達にとって彼の登場はラッキーだったとしか言い様がない。
日本人だと言い張るこの方、見た目は明らかに日本人ではないので(汗)

「こんな緊急事態にギャグをとばしてくれているのか?シンガポーリアンは愉快だなぁ…」
と思っていたら、

「嘘だと思ってる?ほら?本当に日本人だよ」

と私達にネームプレートを見せてきた。名字が「ハシモト」。。うん、、本当に日本人のようだ(笑)
日本人うんぬん関係なしに彼の登場には本当に感謝した。
彼の手助けのお陰で、なんとか病院の階へたどり着いた。

「こちらで休んでいて下さいね~」

日本語の通じる看護婦さんに院長、普段は日本人がいる場所を尽く嫌っていた私だが、この日はどれほど日本人が恋しかったことか。
急いでレントゲンを撮り痛み止めの薬をもらってベッドに横たわる。

「一時は死ぬかと思ったけど、病院だし、もう大丈夫…」

張っていた気持ちの糸が一気に緩み、疲れがどっと押し寄せた。
病院の休憩時間だったこともあってしばし仮眠をとることに。


昼食から戻ってきた知人たちと医師に起こされ、私の身体の現状を知らされた。
日本語がカタコトで少々インチキくさい(失礼)院長。

「あなたね~レントゲンを診るとお腹に水か血液が溜まってるのよ。普通なら自然に身体に吸収されるんだけどね。
原因とか、どちらが溜まっているのかは産婦人科に行かなきゃわからないよ。だから、紹介状書いてあげるから行ってきて!
ん?大丈夫だよ~、貴女の顔みたら重大な病気じゃないことくらい分かるよ~」

知人等も笑いをこらえることに必死なくらい、ちょっと風変わりな院長だった。
とりあえず検査をしないと何も始まらないので婦人科を受診することに。
日本語の通じるこちらの病院の産婦人科は予約で激混みだったので、隣接するマウントエリザベス病院に運ばれ、詳しい検査を受けた。


結果、なんと今すぐオペが必要とのこと。

「えっ!!マジで?!〓〓〓?!」

医療費いくらになっちゃうの?てか、なんて病気なの?!
とにかくお金の心配が頭を過る。一番避けたかった最悪の事態になってしまったようだ。

「卵巣に腫瘍が出来ていたらしい。それが破裂して血液が子宮や身体中に流れ出している。今すぐオペの手続きを取って下さい。」

腫瘍って何だ?!神様私はそんなに悪い子ですか?!
医師の説明が続く…
「卵巣から排卵された卵は精子がいなければ体内に吸収されてしまうのだけれど、希に蓄積して腫瘍になことがある。それが大きくなってはち切れてしまうと血が身体中にれ出して、子宮にも負担をかけてしまうから今すぐのオペが必要なんだ」

ああ、私ったらまだ嫁入り前のお嬢さんだというのに、、これで子宮に後遺症など残ってしまったら大変…悩む暇がない。選択枠すらない。。オペをしてもらうしかない。


検査を行っている間にも子宮に血液が流れ出ていると言われた。すぐに手術室に運ばれ麻酔薬を吸う吸引器を装着された。
「ノーペイン??」
医師に質問する間にも意識が遠退く。喉が痛い…麻酔薬が効いているのだろう。。



「ミス、ナカザト!」
看護婦の声が聴こえた。
まだ目が見えない。ここは何処だろう?手術は終わったのだろうか?

気が付いた時には手術室を出て病室に向かう途中だった。
全身麻酔のせいだろう、強い歯ぎしりが止まらない。加えて、異常な寒気に歯はガチガチと音をたて、身体は震えが止まらず、
「アイム…コールド…」
と仕切りに看護婦に訴えた。
こんな寒気を感じたのは初めてだった。
病室に着くなり知人の姿が見えて少しホッとする。

「よく頑張ったね」

異国の地での手術、マウントエリザベス病院は全く日本語が通じない。
本当はもの凄く心細くて不安で、どうしようもない気持ちでいっぱいだったけれど、周りの方々から沢山の優しさや愛情を頂いて本当に勇気付けられた。
本当に心強かった。

まだ麻酔薬が効いていたのだろう、手術の疲れもあり、病室に着くなり深い眠りに堕ちることができた。



翌朝、血液検査や血圧検査があったため、早めに起床した。
麻酔が効いているとはいえ、よくもまあこんなに爆睡できるもんだなぁ…とノーテンキな自分に驚いた。
面会開始時間前にお見舞いに来てくださった知人の顔を見て、改めて深い安心感を得た。

「一時間ちょっとの手術だったよ」

ちょうどその時、オペをして下さった先生、産婦人科を紹介して下さったカタコトの日本語が話せる先生が病室にいらした。

「気分はどう?傷口は痛む?」

「まだ少し痛みます」

大丈夫、大丈夫。とオペをしてくださった先生が話を続ける。

「実は結構な血液が流れ出していて、1リットル以上の血液が溜まっていたんだ。輸血をするか迷ったけれど、万が一、身体にショック反応が出てしまったら大変だから輸血はしなかったよ。これからは点滴と食事で体調を回復させるようにね」

なんと血液がそんなに失われていたらしい。
だから血色も悪かったし、オペ後も異常な寒気に襲われたのだろう。
しかし人間は4リットル血液を失うと死亡するというし、自分の身体は危機一髪だったのだと改めて確信した。
「しかも、腫瘍が4センチにも達していて結構な大きさだった。そしてこの腫瘍以外にもう1つ腫瘍が見つかったから、どちらとも取り除いておいたよ」


なんと、腫瘍が2つもできていたらしい。もしもそれが悪性で発見が遅くなっていたら…
考えるだけでも恐ろしかった。
日本でもなかなか良いお医者様に巡り合えないというのに、異国の地でこんなにも良い先生と巡り合えるだなんて、本当にラッキーだったとしか言いようがなかった。

かなり一般的で、女性ならば誰でもなりうる病気だとお医者様はおっしゃっていた。日本で同じ手術を受けた場合、入院が4~5泊必要らしい。
こちらの場合、あまり入院はさせず自宅療養を義務づけているため、今回も短い期間で退院することができた。

私はこのかた、大病という大病をしたことがなかったため、高を括りすぎていた。
今回ほど人の有り難みを感じたことは未だかつてなかったであろう。情けない話、自身で経験しなければわからなかったことである。
本当に本当に、感謝してもきりがありません。
どのようにかえしていけば良いのかわからないけれど、ヒト嫌いっぽい私がヒトをとてもいとおしく思うことができました。
愛する知人、オペをして下さったアレックス医師、周りの方々、親族、本当に感謝しています。ありがとう。

これを見てビックリした日本の方(笑)元気になったらこちらから連絡します。
私は食欲旺盛、相変わらずなので大丈夫です。

ではまた★