サムライ・テッシュウ
テッシュウはカムイのサムライでいまは大陸にいる。
他国とカムイは文化、生活習慣に大きな違いがあるため、使者として派遣されても、目的を果たさずに帰国する者が多く、それがカムイの問題のひとつだった。
国交を持つ意思があっても、国同士の話し合いもまとまらない内に帰っては相手の機嫌を損ねるだけである。
独自の文化を持つからこそ、ある程度手の内を見せることも必要と考えた王族は幾度も遣いを送っては、なんの進展もないことに落胆していたし、強靭な精神を持つはずのサムライの名折れだと嘆く日々だった。
テッシュウは30を少し過ぎたばかりのサムライで、彼の特性は順応性の高さであった。
誰とでも気軽に会話をし、稽古にも励み、異なる文化、特に食において(サムライの多くは食文化の違いに困惑していた)、顔をしかめるどころか大いなる関心をもって臨んでいた。
普段は米に魚が主のカムイの食生活を基本としながらも、ある国で饗されたクリームの練りこまれたパンやとうもろこしのポタージュといったものも、「なかなかうまいです」といいながら口に運んでいたという。
"生きているうちに食べられるものは実際のところ限られています。食えるものは食っておくもんですよ。同じ人間が口にするものですから、食えないものなんてはずないですな"
やがてテッシュウは、大陸へ渡れ、という辞令を受けた。
"何をするかってのは、これは仕事ですから他言はできません。ただ、我々と同じ民族の女性がいるらしいです。で、これ以上は言えない"
・・・でも自分について話すなら、サムライですから強い奴に会ってみたいとは思う。
殺し合いは望まないが磨き合いなら素晴らしいじゃありませんか。ついでに食べたことない珍しいものもね。
なかなか面白い人生です。
ただ今回のミッションには、不吉な予感もあります。
大陸に行ったら、今まで経験したことのない難題が降りかかってくる気がするのです。
しかし自分はサムライです。刀と己を頼りに生き延びます。