ふたりの大男
好きな女の子がいたボクは故郷を離れたくなかった。
昔、父は一時だけ傭兵になったことがあったから、彼は武器を使うことができた。
大陸を2年ほどかけて一周して戻った父は、ボクと兄に剣術を叩き込んだ。
そのときは迷惑に思ったものだけど、いまとなってはそれで生きながらえることができたのも父の教育のおかげなのだから感謝している。
ボクが仲間たちに出会ったのは24歳のとき。
大好きな女性とコルシオンという湖に囲まれた国に移ってきた。
そこでリューゲンと、闘技場から逃れてきたターシルという大男と酒を飲んだのが始まりだ。
リューゲンはメレフという国の第4皇子。
容姿・頭脳・体格と腕力に恵まれた、完璧としか言いようのない男だった。本人は跡目争いに嫌気がさして、有事のとき以外は城を出て好き勝手にやっていた。
なんにしてもボクには凄い男に見えた。
そんな男もやがて思い悩む日々を送ることになるが、まだここでは早いだろう。
ターシルは流刑の島・バコスタ島の生まれで、幼い頃から貧しい生活をしていたそうだ。
彼の両親はよりよい職を求めて大陸に渡ったと言っていた。ターシルは祖母に預けられたが、便りのひとつもない両親を捜すためにやがて島を出た。
両親と同じに大陸に渡った彼だが、寝る場所と食事に困らないことを理由に、なんと自分から剣闘士になったのだという。
体の大きな彼は・・・リューゲンもボクから見たら、いいや、誰から見ても大男だがターシルはそれよりも頭ひとつ大きなとんでもない男だった。
闘技場で何連勝もした男の噂は風に乗ってリューゲンの耳に届き、やがてふたりは仲間となって旅に出た。
てっきりターシルは両親を捜すのかと思ったが、彼自身はそれをすでに諦めていた。
なんの確証もなかったが、もう死んでいるだろうと思ったそうだ。
リューゲンはボクのことも仲間にしようとしたが、ボクは迷った。
大好きな女の子と一緒だったから。