「フェルナンドだ。お前でいい。俺を倒せ、先へ進むために」
曇天の下で、黒馬が不気味なまでの鮮やかさで主を乗せ、そこにいる。
一枚の絵画のように、暗い空は剣士とその僕を現実の視界に描きだす。
名を呼ばれたのは、フェルナンド。
なんの遺恨もない相手に向かって剣を抜く。
生きるために。
元の自分に戻るために。
なんの怨みもない者同士が闘う理不尽さ。それを超えて戦士は生き、成長する。
黒馬が嘶き、フェルナンドに向かってくる。
フェルナンドの剣裁きは一瞬にしてウォレスから僕を奪った。首を刎ねられた巨体の馬は大地に転がり、ウォレスは両の足で土を踏んだ。
もうすぐ雨の予感がした。