悪魔に魅入られて | "THE LAST BATTLE" ミリアムの魔術書・外伝

悪魔に魅入られて


 わたしが修行と祈りによって得た法術(このストーリーでは”プリーストマジック”に該当)は強大だった。


 

 だからリューゲンもウィルソンもわたしを放さなかった。


 

 本当に愛した人が死んだとき、神を呪ってこの胸を裂いた。あんなに祈りを捧げたのに、何度も、気を失うほど精神力を使って法術を使ったのに。


 恋人は死んでしまって。仲間はいてもわたしの心はひとりぼっちになってしまった。

 そしてどれだけ時間が過ぎたか(フェルナンドの話では3日は眠っていたというけど)。

 

 気がつくと胸の傷は跡形もなく、ゆったりとしたベッドの上に横たわっていた。


 

 そこにはフェルナンドがいてわたしにコップ一杯の水をくれた。


 

 「君はたしかに死んだのだけれど、なぜか生き返った。そして君を救ったのは神ではなかった。君に魅入られた悪魔だったんだよ」


 

 彼は恐ろしい話も淡々と語る癖があって、事情をのみ込めなかったわたしにはかえって滑稽に見えたし、だからこそ安心することさえできた。いい仲間だわ。


 

 「神より悪魔に愛されたと思う? わたしが」


 

 「わからない。でも君を救ったのは少なくとも神ではないんだろうな」


 水を飲み干し、コップをフェルナンドにお願いすると、わたしは印をきり、いつものように、神にむかって”おはようございます”と念を送った。神は不思議なオーラでわたしを包み、わたしの心の声に応えた。


 

 そしてもうひとつ印をきり。



 

 ”わたしを助けてくれたあなたは誰? 胸の傷を消してくれたあなた”



 

 禍々しい生ぬるい空気。



 フェルナンドが不思議そうな顔で窓を開けて、部屋に風を入れたけど。


 風はあっという間に湿って時折冷たい感触を肌に残した。



 

 それが返事だとわたしは感じた。



 

 「気味が悪いな、マリア。今日の天気はなんか変だよね」


 フェルナンドにはわからない。それがわたしと悪魔の最初の”会話”であったことを。


 


 わたしは信仰を捨て、悪魔の力を得るためのダーク・プリーストとなった。

 理由がどうあれわたしを利用しようというのであれ。


 

 それが悪魔でも。


 

 力を得るためならば人間であることもわたしは捨てられた。こんなにも容易に。


 


 単純な選択。単純な人生。


 


 ただ力がほしかった。