恋を超える想い
「 きっと僕はあなたを愛していると思う」
ハ・ティムはマーティン・リヒターに正直な気持ちを打ち明けたことがあるらしいわ。
この二人は子供のころから主従関係にあり、リヒターは皇子様で、ハ・ティムはその家に代々使える給仕の家の子供だった。年もひとつしか離れていなかったこともあり、当時リヒターの父親が二人が友達のようになれるような、そんな環境を作った。
同じ家庭教師につき、一緒のテーブルで食事することを許され、夜遅くまでカードゲームに興じる日もあったとか。
そんな生活が十数年続き、二人は立派な青年へと成長した。
リヒターは剣術を主に体得したのだけど、家庭教師の計らいで、ハ・ティムには生まれつき魔力が強いとのことで、リヒターの父王はいざというときのためにもハ・ティムを魔術師の見習にもしていたそうね。
忘れてはいけない。ハ・ティムはあくまで給仕の家系であることを。
国を家を守るべく戦士の一団に迎えられはしたものの、特別扱いはそこまでだった。それはハ・ティム自身も素直に受け入れた。
これは当然の身分の違いなのだから。
自分を懐刀に利用するつもりであったとはいえ、リヒターの父王には修行をさせてもらったことを、心から感謝しているらしいの。
実力を身につけたからこそ、尊敬から恋慕へと気持ちの変わったリヒターについていけるのだと。
最初の告白をしたとき、リヒターは一瞬だけ驚いて言葉を失ったようだけど。ほんと、一瞬だったみたいね。
そのすぐあとに
「ありがとう。これからもよろしくな?」
なんて言ってのけたらしいから。
でもハ・ティムの尊敬の念の表わし方のひとつだと勘違いしたようだったから、たいへん。
リヒターはそろそろお后を選ばないといけない時期にきていたのよ。