多分この「仮・切り取り」を知らない方もいるでしょうから簡単に説明させていただきます。

今でこそ色々な方とも気軽にお話させていただいていますが、元々短気で暴力ばかりの日々を過ごしていた事、様々な出来事や様々な出会いで人間らしくなれた事、過去は今を作る大切なものなので、淡々と過去にあった事を綴るのが「仮・切り取り」です。

それには暴力的な表現であったり、人間性を疑うような表現も含まれると思います。

ただそれは今の俺を作る一つ一つの過程なので、仮に一人のオサムに興味ひかれた方がいらっしゃれば、過去の「仮・切り取り」も読んでみてください。



二十代の頃、自由業を生業にしていた俺の下には、十三人の舎弟分がいた。

一つの「仮・切り取り」では修まりきらない為、一人一人との思い出を書いてみようと思う。

一人目はT。


岡山出身でNと上京して暮らしていたH。

NもHも俺の舎弟分であり、紹介したい人間がいるとの事だった。

ぼろぼろの車から降りてきたTは挨拶の仕方も知らないのか、首をこくりと気持ち程度下げ「うっす」と言った。

後に知る事となるが、このTは岡山で喧嘩を売られたり、揉め事に巻き込まれる事なく育ったらしい。

理由はこのTの従兄弟が同和出身者で、地元で知らないものはいないほどの不良だった事で「あいつらには関わるな」という風潮にあったようだ。


地元で上下関係を学ばなかったTを「いずれきちんと礼儀を教えてやろう」と思った。

集金などの簡単な仕事を与えても、やれなんやかんや言い訳しながらこなせないT。

敬語もなってない、言う事は適当に聞き流す。


ある日仕事を終え、俺の部屋で当時の格闘技番組「PRIDE」を見ていた時に、一緒に飲んでたHとTに言った。

「俺と打撃なしで、十番ずつグラウンド勝負しようか」

Hは少し嫌がったが、Tは乗り気で渋々Hも乗り、勝負する事となる。

総合格闘技の経験はないものの、俺は頭の中でイメージできるものは体現する事ができる。

体格はほぼ同じな三人、負けたり勝ったりがあると思ってたのだろう。

HもTも運動部で汗をかいた仲、俺はスポーツというスポーツは「熱くなるのは格好悪い」という理由だけでしてこなかった、分としては舎弟分二人の方がある。


五番目を終えHが言う「もう勘弁してください」

五番目まで全戦全勝、Tは「おかしいな」とか呟いてた。

Hが降参したので、九戦目まで適当にやるものの、それまでも全戦全勝。

腕ひしぎ十字固めや、三角絞め、技の名前分からない技など、常に勝ち方を変えた。

勝ち方を毎度変えるのは、圧倒的な力の差を見せる為。

それでもTは気付かない「おかしいな…おかしいな…」と呟く。


最後の極め技は決めていた、袖車絞めだ。

首相撲から飛び付き、床に引き込んでから体を反転させ上下入れ替わる。

その後首を左手で巻き付け、右手の尺骨でTの気道を押し潰すようにして、両腕の上腕を掴みぎゅうっと気道を押していく。

苦しそうにはするものの、タップをしないTに対し耳元で囁いた。

「タップししないなら、俺このままお前、◯しちゃうよ」と言いながら上半身の全体重を掛けた。

ぺこんという妙な感触が俺の尺骨に伝う、気道が潰れたのだ。

真っ赤な顔でパニックに陥っているTに「まだタップしないの?◯んじゃうよ」と聞くと、何度も何度も俺の体を叩いた。

腕を外しても潰れてしまった気道が開く事なく、ただただパニック状態のTに言う。

「なあ、T。思い切り息を吸うか、思い切り息を吐いてみ」

そう言うとTの気道は元に戻り、真っ赤だった顔はみるみる青ざめた。


Tが落ち着くのを見計らい、Tに説教を始めた。

「手前えごときが一度でも俺に勝てると思ってたのかこら」と言うと、それまでに見せた事のないような態度に一変した。

その日を境に、Tは俺の言う事は聞くようになり、どんな仕事でもこなすようになった。

わざと不良の交渉事に出向かせ、分が悪く圧されそうになった時俺の携帯電話を鳴らすT、一言「お前、その不良と俺、どっちが恐い?」と聞くだけできちんと交渉をこなすまでに成長した。


性格的には真面目で優しい奴だった。

だからいずれラーメン店でも持たせてやろうと思い、俺の運転手させていたのを辞めさせ、とある有名なラーメン店に修行に行かせた。

ラーメン修行もようやく仕込みを覚えるであろう時、子供ができ岡山に戻って行ったT。

今はパチンコばかりしているらしい。

嫁とも離婚してしまったし、今は特に用事も言い付けもないし、どこかで元気にしているって情報聞くだけで俺は嬉しいよ。


このブログの事なんて、十三人の元舎弟分達は知らないだろうけど、元兄貴分は一人一人幸せを手に入れてくれる事を願っているよ。


たまにで良いから手前えら

連絡くらい寄越せ