リクエストがあった馬鹿に付ける薬のないお話。


俺の大切な友人から、ある後輩を紹介された事があった。

その友人も刺青全開、その後輩の馬鹿さ加減を表すファーストコンタクトでの一言。

「二人ともなんでそんなにいかついのに、粋がらないんすか?」

先輩に対し「粋がる」という言葉を使った馬鹿はきっと、後にも先にもこいつくらいしかいないと思う。

とある世界ではやからだのやくざだの言われていたその後輩「オラオラした方がかっこいいっすよ!」と言ってきたのには閉口したのを覚えている。


紆余曲折はあったものの、ある事件が起きるまではまだ抑えながらもよく飲む場を共にしていた。

そしてある事件が起きる。

私怨で揉めていた事で、自分の大切な友人を巻き込み、その友人が警察に聴取を受ける羽目になったのだ。

仮にもその後輩を大事にしてくれていた恩人をそんなくだらない事に巻き込み、尚もその友人が聴取で庇った事に対する感謝の念、悪かったという謝罪の念の無さに激しく憤慨した。


しばらくは縁を切るという事で我慢していた事が、余計に怒りを大きくしてしまう。

そんな目に遭わされながらも俺の友人は慕う後輩を許し、一緒にセッションライブのメンバーとして迎え入れたのだが、俺には理解ができなかった。

セッションライブ当日、楽屋に遊びに行くも「俺とお前はもう無関係」という俺に対し、へらへらした態度で「勘弁してくださいよー」という始末。

ライブが終わり、友人に別れを告げると頼んでもいないのにその後輩「上まで送りますよー」と言い出した。

「冗談でもなんでもなく、マジでついてくるな」というのについてきた。


階段を上がり切り、路上に出た瞬間何度も殴り、何度も重いブーツで蹴り倒した。

「手前え何へらへら調子こいてんだこら」と言いながら。


しかし中途半端だったのだろう、後日その友人に「あの人プロっすよ」とのたまわっていたと聞いて、余計に怒りが噴出する事となった。


ある晩行きつけの酒場に苛つきながら行くと、大切な友人とその後輩がいた。

もう酔うだけ酔ってから会ったのがそいつにとって運の尽きとなった。


外に呼び出し、路上の時より激しく叩いた。

その後三階の階段の踊り場から落とそうと、フェンスの外側に追いやり、何とか命からがらに掴まる手や腕を蹴りつけた。

「死んじゃいます!死んじゃいます!」と騒ぐ後輩に「人間そう簡単に死なないようにできてるからしばらく入院でもして反省しろ」と言い聞かせた。

多分そのまま落ちていたら塀などに何かを強打して、ただでは済まなかったと思う。

今でこそ直った事だけど、当時は自分に正義があれば何をしてもいいと思う悪い癖があったから。

結果友人の静止が入った為大事には至らなかったが、それまでゆとり的環境が作り上げた反省と尊敬の念を持たない後輩の姿勢を打ち崩した…かのように見えた。

実際は違った。


その時受けた恐怖から、俺の事をシリアルキラーだと思い出し始め、世界で一番恐い人間が俺だと思うようになっていた。

馬鹿過ぎるその後輩は、歌舞伎町で揉めようと本物の不良にも「オサムさんに比べたら恐くない」と思うようになり、以前に増してトラブルの多い馬鹿に育ってしまった。

俺と会うと震え出し、尖ったものを三メートルほど離れた場所から向けても「オサムさんならあれを目に発射できる」とか言い出したり、俺が「目に煙草押し付けさせろ、目玉焼きって言うの知ってるか?」というと「見えなくなっちゃうじゃないですか!」と当たり前の返答をするソイツに「ああ、大丈夫。もう一つ残っているから」と返すと観念するまでになってしまった。

その後仲直り?というか許したので、ジーンズをやる約束の為住所を聞くも俺の友人に「やばいっす。オサムさんが兵隊送るって言っているので、先輩から止めてもらうよう言ってもらえませんか!」と変な勘繰りを入れるまでになってしまった。


馬鹿は馬鹿、何をしても変わらない事を教えてくれた後輩、今でこそかわいい後輩になりました。

しばらく会っていないけれど、あんまり俺の大切な友人を困らせないよう成長して欲しい。