二十代前半の海でのお話。

知り合いの社長が持っていた江ノ島の海の家でのお話。

「店長勤められるしっかりした者はいないか?」と聞かれ、一人の友人を誘った。

その後一緒に会社を設立したり、店の経営を一緒にした盟友F。

本を愛し知識の多い部分を持ち、サディスティックな部分を持ち、責任感に長けているというはちゃめちゃな性格のFはすぐに店長となった。


そんなFが働いていた海の家の話を一つ。

まあ、ざっくり言うと遊びに行くのに楽しい場所の一つだった。

ご飯もお酒もご馳走していただき、良い待遇で居られたその海の家には毎年遊びに行っていた。


スタッフの若い子達とも意気が合い、盗撮していた男を見付けると「オサムさん、ちょっといいですか?」と俺を呼びつけては盗撮していた男が震え出すのを楽しんでいたりした。

俺は別に何もしてはいない。

一言「何撮ったのか見せて」と言うだけで、スタッフが呼び止めた時に見せなかった姿に変わるのを、スタッフの若い子達は楽しく思っていたらしい。


ある夜、その海の家に泊まる事を決めていた俺は、Fやスタッフ達と酒を飲みつつ、腕立て伏せをしていた。

次の瞬間「ボンッ」と大きな音と共に、隣の海の家の窓替わりの穴からめらめらと炎が上がり出した。

「何か爆発した」そう思った俺とFは、他のスタッフとは違う動きに移る。

スタッフ達はすぐさま火の元に近付くのだが「二次災害の可能性がある」と思った俺とFはしばらく様子を見ていた。

海の家の外に出て、隣の海の家の様子を見る。


隣の海の家の女性スタッフがふらふらと出てきた。

脚の皮はべろべろに剥け、髪の毛はチリチリと焼けていた。

スタッフの若い子に「たらいに氷水、それと毛布を持ってこい」と伝えた。


たらいの氷水にその女性スタッフの脚を浸けさせ、体温がそこに奪われないように女性スタッフの上半身を毛布でくるみ、背中を擦った。

聞いたところ、プロパンガスのガス漏れに料理していた火が引火した為の火災だったようだ。

救急車が到着するまで「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と何度も繰り返した。


処置も良かったらしく、数日後元に戻ったその女性スタッフが、元気そうにしていたのを見られてほっとした。


その海の家では下らない事ばかりしていた気がする。

その海の家で起きた事、Fとどう過ごしたのかは、またのお話。