日曜は、コロスケさんのワクチン注射に行ってきた。
診察台にのせると、プルプルして『今日は体調がすぐれませんので…』と静かにフェードアウトしようとする。
やっぱ痛いのか?
そう思うのだけど、打たれた瞬間顔を歪めるでもなく、身体がこわばることもない。
でも、痛いのか?
帰りはブサイク面で帰る。
そういえば、昨日というか今朝、夢を見た。いつも見ているのか見ていないのか、起きても特に何も憶えていないのだけど、今日は憶えていた。
僕は、電車の扉の付近に立って外を見てる。そして、隣には大泉洋がいる。
「間に合うか?」
窓の外を見ながら、僕にそう言った。
「どうですかね」
一応敬語でそう答えておいた…。というのも、何に間に合うのか分からないからだ。
電車が駅について、彼が降りるので、僕もあとに続いた。改札で駅員に何か告げて、そのまま改札機を素通りした。僕もその後ろをついて素通りする。
駅を出て空を見上げた彼は、
「まだ大丈夫そうだな。ちょっとメシ食うか」
そう言って、商店街の方へ歩き出した。
店の前に立ち止まり、「ラーメン一つ」と
店頭で麺上げをしている人に言って、隣の惣菜屋にできた列に並んだ。
ラーメン屋の看板を見ると、聞いたことあるような気がしたけれど、よく分からない。どこかの雑誌かテレビで紹介されているのを見聞きしたのかもしれない。
どんなラーメンがあるのか、トッピングや大盛りなど気になったけれど、「ラーメン一つ」と同じように言って、隣の惣菜屋で並んでいる大泉の後ろに並んだ。
どうやら、天ぷらの盛り合わせを買うらしい。紙皿に山盛りの天ぷらを抱えて、次々とラーメン屋へ入っていく。
「天盛り」
大泉が店主に伝えると、ナスやピーマン、とり天にエビ天など様々な天ぷらが山盛りつまれている所から、適当に取って紙皿に溢れるほど盛られた。それを両手に抱えてラーメン屋へ戻っていった。僕も同じく注文した。
様々な天ぷらが山盛り盛られた。
だけど、エビ天が入っていないことはすぐに分かった。もちろんワザとではない。特に種類分けもせず、揚げたものを一か所に盛っていたのを、紙皿に、これも適当に山盛りに盛る。何が盛られるかなんて分からない。
僕はエビ天の入っていない天盛りを両手で抱え、ラーメン屋に入った。
彼の横の椅子に座る時に、彼の天盛りにエビ天が5本くらい入ってるのを確認した。
僕の天盛りをテーブルに置くと、彼は一瞬ニヤッとしたのを僕は見逃さなかった。
『エビ天入ってないから、一本頂戴』
そう言おうとしたけれど、止めた。
エビ天一本より、もっと大きな損失を受けそうな気がしたからだ。
ラーメンが運ばれてきた。
食べたことは無いが、二郎系のラーメンのようだ。野菜が山盛りに盛られている。
それを半分くらい食べて、天ぷらをスープに浸して食べるらしい。
サクサクの天ぷらなので、僕は塩でも軽く振って食べたいが、とりあえずマネて食べる。
そうこうしているうちに、何やら外が騒がしくなってきた。
彼は外に出て空を見上げた。
「来たか。さっさと食っていくぞ!」
空にはセスナ機のようなのが、フラフラと飛んでいた。それを見た時に全てが分かった。
爆弾を積んでいる。
そして、それはリモートコントロールされている。
犯人は何かしら要求をしてきている。僕たちは、飛行機の墜落に備えて現地に派遣されたらしい。
「さっさと食え」
店内から大泉洋が叫ぶ。
急いでラーメンをすする。
彼はラーメンを完食し、最後に残しておいたのだろうエビ天に手を伸ばした。
そして、僕の顔を見ながらエビ天の尻尾を掴み高く持ち上げ、口に放り込んだ。
やはり『頂戴』と言わなかった僕の選択は正しかった。
小さい男だ。
僕も完食し、彼に続いて外に出た。
空では、数台の戦闘機がセスナ機を囲むようにして飛んでいた。
「くそっ。もう、時間がないな」
そりゃ、のんびりエビ天を食ってたら時間もなくなるだろうと思ったけれど、口には出さない。
「お前はもう帰れ」
そういうと、ボロボロの財布から千円札とスイカカードを出して僕に渡してきた。
僕は、自分のポケットの中を探したが、財布が見当たらない。
「スイカに320円入ってるから、これで足りるはずだ」
スイカの残金をカウントしているのか…。
「その道を真っ直ぐ行くとJRだ。それで帰れるはずだ。じゃあな」
そう言って、彼は走って行った。
とりあえず行かずに済んだようだ。
それにしても、電車で帰らせるのか。普通タクシーとかじゃないのか?
そして彼の口ぶりから、この電車賃もギリギリな感じだろう…ほんと小さい男だ。
駅についた。
何駅か分からない。漢字をどう読むのか分からない。
とりあえずスイカに千円チャージする。
チャージ出来たはずなのに、スイカが機械から出てこない。
『取り消し』ボタンを連打し、ようやく出てきたカードは、どうみてもプラスチックではなく、紙で出来ていた。しかもふやけて二枚に剥がれていた。それで詰まって、中々出てこなかったらしい。
駅員に言うと、
「ズボンのポッケに入れてた?」
いきなりタメ口で、そう言われた。
確かに、ずっと入れてきた。だからふやけた?そんなショボいのか?
「ふやけちゃうんですね」
当たり障りのない感じで言うと、駅員は
「は?ふやけるわけないよね?」
何だコノヤロー。
そう思うも弱っちいので、
「違うんですか?」
と、低姿勢に聞く。
「静電気だよ!だからズボンのポッケにハダカで入れないでって、アナウンスしてるでしょ?聞いてない?」
初耳じゃボケ!って、静電気でプラスチックの材質が、ヘロヘロな紙っぽくかわるわけないやろ!
ぐっとこらえて、愛想笑いを作り
「結構あるんですか~?」
何も答えず、剥がれたカードを機械でスキャンし出した。
何だコイツ。
「とりあえずコレ」
そう言って千円を渡してきた。
そして、僕のことは解決したかのように、次の客を相手し出した。
「あの、カードは…?」
「なに?再発行するの?」
「ないと面倒なので…。それと千円ともうちょっと入ってたと思うのですが…」
320円入ってるのを、チャージした時に確認した。「もうちょっと」と濁したのは、『なんだコイツ、残金を正確に把握してる小さい男か』そう思われたくなかったからだ。
駅員は奥から大きなバインダーを持ってきた。このスイカの書類を探しているらしい。アナログ過ぎる…。
「新規の発行でも構わないですよ」
「今探してるから、待ってもらえる?」
待てないと言っても、無理そうだ。
今のうちに帰り道を検索しよう。
スマホは持っている。そうだ、駅名だ。
「すみません。これ何て読むんですか?」
駅名が書かれた看板を指差し、駅員に聞いた。
すると、面倒臭そうに立ち上がり、カウンターの脇に置かれたパンフレットの束を、僕の目の前に置いた。
「多いんだよね、読めない人」
パンフレットには、『駅名の由来』と書かれている。
サッと口で答えろや!
っていうか、こんなパンフ作るんやったら、看板に振仮名打てよ!
何なんだこいつら…。
パンフレットを開くと、この駅の建つ前の田畑だった頃の風景。そして着工中の写真。そして完成した写真などと共に、説明文が書かれてある。
サッと読んだが、どこにも駅名の読みが書いていない…。
何だコレ。
駅員に聞こうとしたけれど、ココ!と『ちゃんと見ろよ』的な感じで言われたくないので、もう一度最初から細かく見る。
こいつらのことだから、こんなとこに?ってとこに書いてあるはずだ。
最後まで見たが、見つけられない。やはり書いてないのか?
最後に編集者などクレジットの欄に、駅名が太文字で書いてあった。
その下にローマ字で
「ooozuriguchi」
そう書いてあった。
ここかよ…。
スマホを出して調べる。
が、インターネットブラウザのアプリを終了させられない。仕方ないので、ネットのヤフーとかで調べようとするも、【< >】の記号だけしかない。つまり、閲覧履歴を進むか戻るしかない。
戻るボタンを連打しどんどん戻る。
早く。
駅の窓から空を見る。
まだ数台の戦闘機に囲まれて、爆弾飛行機は飛んでいる。
早く…。
早く…、痛っ。
目の前にコロスケさん?
いつものように顔面引っ搔きパンチで起こされ、夢終了…。
月曜から訳わからん夢を見る39歳のおっさんですわ…。