またコロスケさんか!狂ってるな…と思いきや、起こしたのはでんちょん。
僕の足元でゴゾゴゾして、お腹に乗っかり顔を覗き込まれる…。何事かと起きる。
どうやら、足元にある電気膝掛けが暖かくないと訴えているらしい。昨晩は暖房をつけていたので、部屋は暖かく、電気毛布替わりに使っているそれの電気はつけずに寝た。
どうやら寒くなって、暖かいはずの場所に来たのに全然暖かくないやんけ!ということらしい
そこまで理解してるなら、自分でスイッチ入れろやボケ!と思ったのだけど、起こしたことに対し、とても申し訳なさそうな感じだったのと、あまりに寒そうなので、静かにスイッチを入れてやった。
そしてウトウトと気持ちよく眠りに入るか入らないかしていると、本職の方がやってきた。
もう全てが雑な起こし方…というか、普段のうっぷんを晴らすかのような感じで、僕の顔を殴打する。
白ブタをギッと睨んでやったが、もはや気にもしないらしい。
走っていると、後ろから大きな声で話しながら近づいてくる人がいる。僕はイヤホンをしてラジオを聴いてるのに聞こえるのだから、かなりの大声だ。
何事かと後ろを振り返ると、チャリに乗った70前後のじいさんが見えた。声の主だ。
どうやら電話で話しているようだ。時折相づちをうっている。
最近、ハンズフリーで話している人が、ホント多い。
歩いていると、僕の方をニヤニヤと見ながら向かってくる若い兄ちゃん。
なに?イイチコ系の人?とビビってたら、ハンズフリーで電話。自分がニヤつきながら歩いていることに、気がついていないらしい。
他にも、歩いていて後ろから追い抜き様に「あっ!それ!」と言われ、
えっ⁈
と、踏み出した足を引っ込め飛び退いてそいつを見たら、同じように「えっ?」と逆側に飛び退いた。
そいつの耳にはイヤホン、手にはスマホ。電話か、と僕は理解出来たが、そいつは僕が飛び退いた理由を理解出来ず、変なおっさんを見る目をしてスタスタと歩き去って行った…。
なんやねん!
全くどいつもこいつも…そんなことを考えながら走ってると、どんどんじいさんの声が近づいてきた。
ハンズフリーの機械の進化も凄いが、じいさん達の進化も凄い。僕が子供の頃なんて、じいさんと言えば、歩くのもヨイヨイで黒電話すら、誰かにダイヤルを回して貰っていた。それがチャリに乗りながら電話で会話してるのだから、進化のスピードが凄まじい。
そんな進化したじいさんが僕の右側をチャリで追い抜いて行く。手に携帯らしき物は持っていない。やはりハンズフリーで話しているのか。何気に見えた左耳にはイヤホンはささっていない。
ん?
なんとなく気になったので、抜かされてから少しじいさんの右側が見える位置へ斜行して走る。そして右耳を見た。イヤホンはささっていない。
骨伝導?
にしても、なにかしら耳付近につけていなくてはならないが、何もついていない。
あっ…もう答えはそれしかないか…。
このじいさんにしか見えない方達と会話している…そういうことか。究極のハンズフリーだな…。
そんなことを思っていたら、いつの間にかじいさんの会話が止まっていることに気がついた。
その瞬間、ぎゅるっとじいさんの首が回った。
目が合う。距離にして5メートル程だろうか。
一瞬の間があった次の瞬間、じいさんがニヤっと笑った。
僕の毛穴の全部から、凄まじい勢いで何かが飛び出す感覚。動けない。
じいさんは、前に向き直って走っていった。
僕は来た方向、つまり家へ向かって一目散に走る。今までで考えられないくらいの速さで…といきたいのだけど、心拍だけ上がりハァハァ息苦しく、身体が重く速く走れない。それでも、全力で走った。時折後ろを振り返ったが、僕が見えるものは、とりあえず何もついて来ていない。
何なんだ…じいさん、この世の人なのか、それともあちら側の人なのか…。
じいさんの進化、ハンパねぇわ😱
無事に家についた。
家では、待ってましたとばかりにコロデンがお散歩待ち。
コロスケさんにリードをつけて、でんちょんにも…。だけど、やつは静かに玄関の方へ歩いて行く。
おいっ!
いや、そろそろボクもハンズフリーで…