うっかり紹介して、血も涙もない誰かにお宝を買われたらどうする。そんなケチな性分が邪魔して、今までレコ屋の訪問記など書いたことのない僕だ。

 

 だが、ここは繁盛して欲しい! 名盤、良盤に出会える店として永く続いて欲しい!

 

 そんなイノセントなフィーリングで紹介するのは、今まで諏訪湖の周辺にまったく無かった系の、ガチの新譜・中古レコ屋だ。

 

 CELLAR RECORDS(セラーレコーズ)は、2022年7月7日に長野県・岡谷市にオープンしたナイスなレコード店である。

 

 

 これがレコ屋って、信じられる?

 

 古い繭蔵を改装してレコード店をオープンする。と、ローカルニュースで小耳にキャッチしてはいたが… ここまでレトロモダンにリファビッシュするとはアメージング。

 

 JR岡谷駅から徒歩10分ほどだが、電車で通う人はどれだけいるか。がほとんどだろう。道路を挟んだ向かい側に、数台分のPがある。歩いて数分の場所に公営の巨大な駐車場もあり、そこなら5時間無料だ。アクセスいいね。

 

 店内の写真は遠慮したが、ドアを開けて一歩入ると、古い蔵とまったく感じさせない、広々としたフロアに迎えられる。2階をブチ抜いた、解放感あふれる天井からの採光も抜群で、正直、ここまでオシャレでいいのかと戸惑うほど。

 

 古い蔵をリノベーション… と聴いたとき、てっきりオサレなカフェが出店して、その一角にインテリア代わりにレコードが並んでるとか、そんなもんじゃね?と高をくくった自分だが、舐め腐ってすいませんでした。

 

 フロア全面がレコ屋と分かって嬉しかったが、広さの割りにレコードは少ない。3,000枚ぐらいだろう。手前が中古盤で、壁レコが並ぶ奥は新譜。壁では「NEU!」のカラーバイナルが目立ってた。欲しいけど、リイシューは高いなあ。

 

 オールジャンルだそうだが、明らかにオーナーのチョイスを感じる。中古盤は、R&B、ソウル、ファンク、ジャズが多いが、ラテンやシティポップ、和ジャズもある。ジャンル分けがないので、ダニー・ハサウェイの裏にユーミンマイルス・デイヴィスが隠れてることも。面白い。意外な盤がまろび出て、digる指がたびたび止まる。楽しい!

 

 これもオーナーの好みなのか、売れ筋のロックが少ない。ビートルズストーンズが(ほとんど)ないレコ屋は珍しい。王道ロックに恨みでもあるんだろうか。80sニューウェーブ系は普通にあるので、そう言いたくもなる。ドゥルッティ・コラムの1st黒ジャケがmintコンディションであったが、あれは痛みそうで心配だ。4,800円か…

 

 相場という点では、レア盤はそれなりの値段だが、不当に高くはなく、真っ当。それより、800円の陽水と20,000円の和ジャズが同じ棚にあるので、digり中は不意打ちの連続で大変である。オーナー氏は陽水推しのようで、店頭3,000枚の中に「ライオンとペリカン」が2枚もあって、熱い推しコメントまで書き添えてあるのが、これまた楽しい。

 

 こんなオシャレな店なのに、ちゃんと300円コーナーがあるのも泣かせる。しかも、チョイスがいい。先日取り上げた菊池桃子の「OCEAN SIDE」も、ここで発掘したもの。レンタル落ちのためその値段だったが、レンタルレコードはジャケこそ傷んでるが、メディアは健全なことが多い。当時、世の音楽ファンは借りたレコードを急いでテープにダビングしてから、キズつけないように気をつけながら返却したもんだ。だから、ほとんどの盤は再生回数がそう多くない。このコーナーだけで、安全地帯の全アルバムが揃う勢いだったな。

 

 新譜については、セレクションが少し違う。(僕のまったく知らないジャンルの)アンビエント系が多い印象だ。これ系はプチノイズが聴こえがちなので、新譜には価値がある。が、値段がね。最近の新譜は…

 

 一角には Technics SL-1200(MK3か4)とヘッドホンもあり、どのレコードも視聴できる。DJと思しき客が多いので、これは大事。

 

 2階の踊り場までの階段が残されていて、上まで上がると店内の全景を一望できる。ここからの写真撮影はOKだそうだ。

 

 総じて、オーナー氏はかなりの数のレコ屋を見てdigった経験から、客にとって快適な店をはっきりイメージしてるようだ。レコードの陳列に余裕があり、バタバタとギロチンdigをしなくても、楽にチェックできる。また、その枚数も、端から端まで見るのにちょうどいい分量である。通路にも余裕があり、すれ違いに窮することもない。

 

 最後になったが、店内の音響も他と違うことを書いておきたい。オーナー氏の知人が設計、工作したという無指向型スピーカーが天井から吊るされ、フロアのどこにいても心地いいサウンドに包まれる。また、それと別にタンノイのフロア型スピーカー(WINDSORかな?)もあって、オーソドックスな音を聴かせる。

 

 これまでこの辺りはレコードを買いに行く地域ではなかったが、まさに砂漠にオアシスを見た気持ちがする。金沢のレコードジャングルに次ぐ優良店だ。

 

 

ちょうどホームページもオープン。ウェブショップも遠からず、らしい。うわあ、アレもコレも買われてしまう。今ならまだ間に合うか…

 

CELLAR RECORDS

OPEN 13:00-20:00 / CLOSED 火曜、水曜

TEL 070-8555-6642

MAIL info@cellar-records.com

〒394-0028 長野県岡谷市本町2-5-7(駐車場 有)