6分間練習の時、登場した浅田真央を見て、私の心はどうしようもなく震えた。

彼女の纏う透明でいて、それでいて強い、美しいオーラ。

ただそこにいるだけで美しかった。

今まで見たことのない浅田真央がいた。

あんな美しい浅田真央を私は見たことがない。

それほど美しかった。


滑りが非常に良くなっていた。
全く腰を折らず、直立の姿勢のままですいすいと滑る。
それは見ていて非常に気持ちの良いものだった。

ジャンプを飛び始めた。
まずシングルアクセル。
パンクしたように思った。

そして、ダブル。
集中を高めていくのが手に取るようにわかる。

そしてトリプルアクセルを何度か降りた。

彼女の周りにだけ、見えない壁があるようだった。



演技が始まった。
トリプルアクセルを降りた。
(アンダーローテの確立は高いと思った)

しかし、そんなことはどうでもよい。
ただひたすら美しかった。

涙が出てきた。



しかし、フライングシットで何か違和感が。
何がどうというわけではないが、ちょっと違うと思った。
(もしかして故障か?と思ったが、違うよね・・・)

ステップも素晴らしかったけど、やはり物足りない。
秒数の関係はあるだろうが、元に戻して欲しい~。

ファンは強欲だ。


誰もが浅田真央の優勝を確信した。





私の心を一番揺さぶったのは安藤美姫だった。


何が起こったのだろう。
彼女の演技を見ていたら、涙が出てきた。
とめどなくあふれてくる。
愛を感じたのだろうか。

それは私だけではなかった。
演技が終わった時、全員スタオベ。

安藤は"魂"で見せてくれたと思う。


そして、村主も"魂"で見せてくれた。
エレメンツをこなすのがせいいっぱいな状況で、
演技自体は洗練されているとは言えず、
往年の彼女の演技とは比べ物にはならなかったが、心に届いた。
感動した。

フリーでも体力、気力が続くことを祈る。



その次に素晴らしいと思ったのは、石川翔子。
3T+3Tも成功したが転倒が痛かった。

しかし、滑り、表現の技術、すべて素晴らしかった。
おおきな成長である。
(あぁぁぁぁ、NHK杯に出して欲しかったよ・・・)

フリーでも良い演技をして欲しい。
連盟とジャッジの目を覚ますほどの。



鈴木明子はエッヂに相当苦しんでいるようだった。
6分間練習で、何度も何度もエッヂを確認。

それが彼女を硬くしたと思う。
演技は素晴らしかったが、彼女の最高のものではなかった。
彼女の"最高"は本当に本当に素晴らしいから、それを望んでしまう。

フリーでは、最高のものを見せて欲しい。
泣かせて欲しい。
世界選手権にいくのは鈴木明子だと、関係者の前で宣言して欲しい。



村上佳菜子は、6分間が始まる前、なぜか一人だけ先に出てきた。
カメラが彼女を十分にクローズアップしたと思われた頃、他の選手が登場。

6分間の前に一人だけ先に出てくるのを初めて見た。
禁止されていることでもないし、アリだとは思うが。


演技は、全く良いところがなかった。

かなり緊張していたのだろう。
素晴らしい"音楽表現"もダメダメ。
いつもは細かく音を取れるのに、音楽に遅れていた。

自慢の3T+3Tは降りたが、セカンドは幅はあったが高さなし。
(でもきっと加点はてんこ盛り。同世代はもっと高度な3-3を飛んでいる。)

全てのポジションが汚い。
ステップもエッヂが荒く、いやはや。

あのPCSは他の選手を馬鹿にしている。
スピードもなかった。

会場から何度も手拍子を誘導する動きがあったが、結局、手拍子は起こらず。
あれじゃ、観客は乗れない。

何も伝わるものもない。
(これは仕方がない。まだ16歳なのだから)

ただ、彼女のプロ根性は見た。

ジャンプの失敗のあと、ふてくされたような表情をしていたのだが、
ステップでカメラの前に行った時は、満面の"かなこ"スマイル。
演技が終わった後も一瞬、表情が変わったが、その後も"かなこ"スマイル。

これはすごいと思った。
ある種、"プロ"。
ここまで16歳でできるのは素晴らしい。
彼女の"顔芸"は、"芸"だ。
"芸術"まで高めてくれ。

"プロ根性"はあると思う。
だから、あんなショートでは終わらないはず。
今日は、少しはまともなものを見せて欲しい。



スピード自体は今井遥の方があった。
エッヂワークも彼女の方がいい。

DOIで見た時は、同等に見えたのだが、今回は今井の技術の方が秀でているように見えた。

しかし、彼女は結果が出せていない。
メンタル的なものは試合を続けることで調整できていくだろうし、
PCSもついてくるだろうし、
表現ももっと洗練されるだろう。
まだまだこれから。


村上の話に戻るが、良い素質を持っている。まだまだこれから。
今の状態は非常にもったいない。

彼女は今までの日本人選手にはないものも持っている。
それはよく言われていることだが「自分を見て!」という気持ち。アピール。

ショートの笑顔の開始ポーズだが、なんとジャッジ席の目の前。
日本人的に無理だろってことを、シニアにあがりたての彼女がなんなくやって見せる。

あの自己顕示欲と度胸の良さはすごい。
大物だ。
きちんと技術を磨くことができたら、世界のトップにいけるかもしれないと思った。

あと、蓄膿症治そうね・・・。
口をあけて演技するのはちょっと・・・。



庄司理紗も西野友毬も非常に良い演技をしたが、
やはりお姉様達の見せる力にはかなわない。
全日本は良い経験になったと思う。
この年頃はたった一つの試合で驚くような成長をすることがある。

全日本の後の彼女達がとても楽しみだ。



女子は全体的に傾向が似ていた。
かつて"表現力"と呼ばれていたものは下位の選手ですら、身に着けている。
キム的な動きといえなくもないが、ほぼ全員できているということは素晴らしいと思った。
"新採点"に対応している、と言うこともできる。
ただし、その分、画一的。
自分の"味"というものを出して欲しい。

表現技術があっても、それが観客の届くかと言えばまた別問題。
それにはある程度の経験が必要であろう。

多くの有望な才能を目にした喜びと、
やや画一的な個性に不安を覚えた一夜であった。

フリーではもっと個性が出ると思うので期待したい。








得点はPCSの出方に非常に疑問を持った。
あと調整はやっぱりテクニカル、だった。