日本経済新聞『フィギュアの世界』
【高橋大輔「僕のジャンプはタイミング。そのコツは…」 】
http://www.nikkei.com/sports/column/article/g=96958A88889DE3EBEAE6E1E6E4E2E3E1E3E0E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E0E2EAE0E2E3E2E1E6E6E4

12日まで北京で開かれたグランプリ(GP)ファイナルは、4位と悔しい結果に終わった高橋大輔(関大大学院)。練習でアクシデントもありましたが、「軽い打撲でもやれるくらいの精神力、体を作らないといけない」と自らの“修行不足”を嘆いています。特に今大会はジャンプのミスが目立ちました。ジャンプはちょっとしたことで狂うといわれます。フィギュア未経験者には想像の世界でしかないジャンプについて、聞いてみましょう。

■ようやく右ヒザのバネが戻る

 僕はジャンプを、力ではなくタイミングで跳ぶタイプです。タイミングというのはコンディションなどちょっとしたことで変わってきますが、今季も昨季とは違っていてちょっと調整にてこずりました。

 右ヒザの手術をして約1年9カ月が経過したころから、ようやく右ヒザのバネが戻ってきました。そして体の隅々まで脳からの指令が瞬時に行き届いて、反応も早くなった気がします。

 自分の感覚的なものでいうと、今までカチッと止まってそれ以上いかなかったところがグーンと伸びたり、ヒザや足首が思った以上に曲がるので体が深く沈みこんだりします。

 11月くらいからようやくタイミングが合うようになってきましたが、試合に向けてコンディションを整えると体が変わってくるので、また合いにくくなってしまいます。



■後半は疲れで反応鈍くなり、ミスが出やすく

 ジャンプは力んでしまうと跳べません。ステップしながら、ジャンプに入る方が跳びやすいこともあります。

 フリープログラムの後半にジャンプをするのが大変なのは、足に疲れがきて反応が悪くなり、タイミングが合いにくくなるからです。「ここで跳びたいのに、なかなか足が(氷から)離れない」といった感じでしょうか。細かいところまで気を回せなくなるので、ミスが出やすくなるんです。

 疲れた中でも跳べないといけないので、練習であまりジャンプの回数を制限しません。「足が痛くなるから(跳びすぎは)良くない」という声もありますが、ちゃんとコンディショニングをしているので大丈夫です。


■張りはコンディショニングで治す

 ちょっと張りが出たとき、なるべく練習後のコンディショニングで治すようにしています。それでも張りが取り切れないときは、トレーナーにマッサージをお願いすることもあります。もともとケガが少ないから。といっても、右ヒザ靱帯(じんたい)断裂の大けがをしてしまいましたけれど……。

 でも、その後トレーニングを積んだ結果、今の体があるわけで、そうした過程を見ずに体だけ触られるのは嫌ですね。僕の体は外からの刺激に反応しやすいので、基本的に体を触られるのは好きではありません。

 僕のジャンプには「癖がない」とよく言われます。だから、跳べるのかもしれません。もっとも、子供のころは、プロのコーチに手取り足取り習ったわけではないので癖があったと思いますが……。金妍児(キム・ヨナ、韓国)、安藤美姫(トヨタ自動車)選手も癖がなく、リラックスして跳んでいると思います。でも、癖があっても、うまく跳んでいる選手も多く見られます。


■跳んだ瞬間に「いける」ときは分かる

 練習ではサルコー、ループから跳び始めて、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)、そして4回転ジャンプと跳んでいきます。

 跳んだ瞬間に「いける」ときは分かるし、失敗も分かります。“危機回避能力”が高いので、「失敗した」と思ったときは空中で修正します。ただ、それができるのは3回転まで、ですね。

 4回転からが大変です。それは、滞空時間は一緒なのに、3回転より1回多く回らなくてはいけないから。4回転の難しさは、最後の1回転にあるんです。

 体の締め方は、3回転も4回転もそんなに変わりません。でも、4回転は3回転より遠心力がきつくなるから、持って行かれそうになる体を保てるか、回っているうちに緩んでくる腕を持ちこたえられるか、などといった点がポイントになります。

冒頭で述べましたが、僕はタイミングで跳ぶタイプなので、助走で勢いをつければいいってものではありません。むしろつけすぎる方がダメですが、ある程度ついていないとジャンプに迫力が出ません。


■「ヤバイ」と思ったら


 跳ぶ前に力みが入ったり、タイミングがずれると、体が持っていかれてしまったり、詰まったりしてしまいます。

 「ヤバイ」と思ったら、危機管理能力の登場です。根性で体を締め切って、なんとか回転不足で収めるか? パンク(フィギュア用語で3回転ジャンプを跳ぶはずが回転が抜けて2回転になったりすること)するか? 転ぶか? すべてはタイミングの度合いで決めます。

 今季はショートプログラム(SP)から4回転ジャンプを入れる選手も見かけます。僕は、まだ4回転の確率が戻ってきていなくて、そこまでのリスクを冒せないので、その分、振りや表現に力を入れています。

 振り付けを少し減らせば可能ですけれど、音と振りが合っているので、今季は4回転を入れなくてもいいかな、と思っています。SPは失敗が許されないからリスクが高いですし、フリーでの4回転に集中したいと思います。


■連続ジャンプは3つすべて後半に

 フリーでは、3つ入れられる連続ジャンプを後半に入れています。苦でないなら、ジャンプの基礎点が1.1倍になる後半で跳んで、効率よく得点を稼ごうという考えです。

 ルール改正で今季からスピンが難しくなったので、長めに時間をとってあります。あまり得意ではないので、ポジションをキープするのに時間がかかります。しかも僕のステップは長いですし、つなぎの振り付けも詰まっています。ジャンプをピタリと決めないと、曲と振りが合わなくなってしまいます。

 後半の連続ジャンプは今季、3試合連続してトリプルアクセルでミスが出ましたし、3回転フリップ-3回転トーループの連続ジャンプは昨季からうまくはまりません。ジャンプの構成が良くないのかもしれません。要検討事項ですね。

 すべては全日本選手権(長野、24~26日)が終わってからのこと。一度、心を真っ白にリセットして、5度目の優勝を狙います。




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全日本連覇はまず間違いない。

今シーズン、ショート、フリー通して「これぞ高橋大輔」という試合をまだ見ていないように思う。
全日本がそうであって欲しい。
(もちろん、最高の試合は世界選手権!)

クリーンプログラムを演じることは大きな手応えになるはずだ。

ただ、前回のアクシデントの影響がないか。
それだけが心配。
本人が言っていることが真実であれば、大丈夫なはずではあるが。
(気を遣いすぎるからなぁ・・・。)

もし何の影響もないのであれば、フリーで4回転フリップを見たい。
本人も言っているように。

ようやく右ヒザのバネが戻ってきたのも嬉しいこと。
それで4回転トゥループがよくなってきたのも素晴らしい。

フリップの方がザヤックを気にせずできるので、本人も気楽なのではないだろうか?
エッヂが心配ではあるが。


4回転フリップ成功「世界初成功」をやって欲しい。
(実は、これが一番だったりする・・・。ファンのわがままだが・・。)
記憶に残る選手であることは間違いないが、記録も残して欲しい。



彼は、調整が難しいということは見ていても分かる。
非常に波が見える。
(良い時のジャンプは本当に素晴らしい。高く、完全なディレイド。)
それでも結果を出せるのは"ベテラン"でもあるし、
本人が言う“危機回避能力”の高さがあるのだろう。


安藤選手もこの“危機回避能力”が高いといえると思う。
他に思いつくのは、後はレピストとか。

現在の採点システムでは、3回転で着地が乱れるよりは、
クリーンに2回転を下りた方がお得なので、
“危機回避能力”が高い選手は有利だ。



良くないコンディションでも、それなりの演技が出来るのは分かっているが、
良いコンディションで最高の演技を、
そして二連覇、
に期待。