【「今後も道を切り開く」 北島×高橋対談(5)】
http://www.nikkei.com/sports/column/article/g=96958A88889DE2EAE2EAE4EAE5E2E0E7E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E0E2E6E0E2E3E2EAE5EBEA
五輪2大会連続平泳ぎ2冠の北島康介(27、日本コカ・コーラ)と、フィギュアスケート男子銅メダルの高橋大輔(24、関大大学院)。2人は水泳界、フィギュア界でそれぞれ、日本選手の道を切り開いてきた。これからはどんな道を歩んでいくのか。スペシャル対談の最終回は今後について語り合った。
高橋「いつの間にか年上の方に…」
北島 スケート界を引っ張る意識はある?
高橋 ないですね。スケート界って年齢層が低くて、女子の場合だと10代でチャンピオンになるケースが多い。僕もけっこう年下だと思っていたら、まだ24歳ですけれど、日本の男子でも年上の方の選手になっていた。
北島 フィギュアスケート界の男子で史上初の五輪メダリスト。周りから求められることが多いでしょう。僕もそうだから。
高橋 外から見る人にとっては、そう映るのかなと思う。でも、僕が引っ張っていっているという自覚はないですね。それより、みんなが競い合って、競技全体が盛り上がっていけばいい。後輩を後輩とは思わないですね。試合では誰がどこでどうなるか分からないから、上も下もない。みんながライバル。負けないぞって。
高橋「自覚を持って」
北島 プライドを持ってね。
高橋 それは常にある。僕は誰かにあこがれてこの競技をしてきたのではなく、続けてやってきたらここ(トップ)までなったという感じだからなのかな。(あこがれの対象となる)自覚がないのかもしれない。でも、いろんな意味で自覚を持たないといけないとは思っている。
北島「競技するのは自分自身」
北島 結局、競技をするのは自分自身というのは変わらないもんね。
高橋 気づいたら「男子初のメダリスト」っていう経歴がついてきたので、これからも道を切り開いていきたい気持ちはある。女子はアジアの選手が世界のトップ層にいるけれども、男子は少ない。だからアジアの選手でも勝てるんだ、ということを見せていきたい。
北島 (バンクーバーで)見せたでしょう。
高橋「有力選手が続いて出てきて」
高橋 見せられましたかね?
北島 強いアジアの選手。世界で勝負できたことは自信を持っていい。冬季競技でも「アジアの人々はスポーツが弱い」って言われているんだ。アジアでひとくくりにされるのも、オレ的には嫌なんだけれど……。今後、フィギュア界を変えるには何が必要だと思う?
高橋 (有力選手が)続いて出てくること。僕が現役のうちはいろんな成績を取り続けることで、後輩が「やれるんだ」というイメージを持ってくれるといい。やっぱり最初にイメージがないと、強くなるのは難しい。(僕の位置までは)行けるって思ってもらえると思うんで、後は(僕に続く)選手が出てくることかな。一回プツっと切れると止まっちゃう。どんどん若手が出て、僕を抜かしていってもらえればいい。
北島 エッ、(抜かれて)いいの?
高橋 悔しいとは思うけれど、(実際に抜かれても)そんなに嫌じゃないかもしれない。フィギュアスケートの日本男子全体が盛り上がればいいから。女子ばかり注目されて、ちょっと悔しい思いをしてきたんで。
北島「男が頑張ることは必要」
北島 バンクーバー五輪では女子フィギュアばかりが注目されていたけれど、僕は男子の頑張りに注目してたんだ。男子にとにかく頑張ってほしいと心から応援していた。(北島が初出場したシドニー五輪競泳日本代表21人中男子は9人。獲得した4つのメダルはすべて女子。続くアテネ五輪は男子9、女子11でメダル8個中5個が男子だった)
男の選手が頑張るっていうことは、すごく必要。男が強いところを見せると、競技全体がポンと一段レベルアップすると、僕は思っている。後に続く選手の数も増えるしね。僕自身は水泳界での役割はもうそんなにないかな、と思っている。
高橋 失礼ですけど、まだまだ行けそうなイメージがありますよ。
北島「もう一回味わってみたいって…」
北島 そう思ってくれるとすげえうれしい。「もういいんじゃないか。成績がダメならそこで終わりだから、北京(五輪)でやめとけ」っていう声もあったから。でも、自分が好きなスポーツなんで、簡単に嫌いになれないし……。
高橋 (練習や試合を)やっている時は、「もういいかな」ってなりますけどね(笑)。
北島 うん。でももう一回、あの緊張感とか、(五輪の)感動を自分で味わってみたいと思っちゃうんだよね。まだできるんじゃないかって感じたからこそ、続けられた。
でも、これからは後輩が今後の水泳界を切り開いていってほしいな。僕がずっといられるわけじゃないから。実際に、若い選手が出てきて、僕もビクビク、ビクビクしている。この気持ちは復帰しないと、分からなかった。すごいいい効果だと思う。次世代に期待する気持ちも(高橋くんと)一緒だね。
高橋「来年の世界選手権がまず目標」
高橋 まず来年、東京で開かれる世界選手権。日本人が2連覇したことはないので、それを目標にしたい。難しいとは思いますよ。五輪の後に行われた今年の世界選手権では金メダルが取れちゃったという感じですけど、来年は取りに行きます。
北島 難しいことにチャレンジするのがいい。(2014年の)ソチ五輪も見据えてる?
高橋 見据えないです。4年後は意識しないって決めたんで。
北島「本来の感覚を取り戻して」
北島 そうだよね。僕も(12年に開催される)ロンドン五輪とは言いません。今年はパンパシフィック選手権、来年は世界選手権。そういった国際大会で自分が持っている本来の感覚を取り戻して、また頑張っていきたいです。
――対談の後、別室でそれぞれに感想を聞いた。
北島 感覚とか、すごく似ている。芸術競技だからストイックで、自分の気持ちを曲げない子かと思ったら、気さくで人間らしい、高橋くんらしさが見れてよかった。「うん、そうそう」とうなずくところが僕とほとんど一緒。もっと話したかったな。会う前以上に、一緒に頑張っていきたいと思えた。
高橋 厳しい人というイメージがあったんですけれど、フランクな方だったので良かった。失礼かもしれないですけれど、感覚とか、意識の持ち方とか、すごく自分と似ている点があった。「そういう考えもアリだな」って、自分のチョイスも広がった。やっぱり僕も五輪で金メダルを取りたかったですね。4年後は考えないんで(ソチ五輪のことは)言わないですけれど、「この気持ちは忘れないで」って言って下さったので、忘れないでいたいです。=終わり
(6月の毎日曜日の昼にBS日テレ「北島康介TV」で放送予定)
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お二方とも、本当に、競技を愛し、将来を考えているというところに今回も感動しました。
後輩が育ってくれるのを願うというところもスポーツマンマインドにあふれていて、素晴らしいです。
男が頑張らないと、というところはどうかとも思いますが、
人気、実力とも男女のバランスがとれて、初めて、その競技の認知度が高まるかもしれません。
今年のローザンヌバレエコンクールでは、初めて決勝に進出した、男子の数が女子の数を上回りました。
バレエの関係者も似たような発言をしていました。
プリンスアイスワールドでは、ちびっ子スケーター達が登場しましたが、殆どが女の子。
フィギュアスケートやバレエは女の子のお稽古事というイメージがありますが、
男子も盛んになり、
将来的には国産ペアや有力なアイスダンスも出て欲しいと思います。
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http://www.nikkei.com/sports/column/article/g=96958A88889DE2EAE2EAE4EAE5E2E0E7E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E0E2E6E0E2E3E2EAE5EBEA
五輪2大会連続平泳ぎ2冠の北島康介(27、日本コカ・コーラ)と、フィギュアスケート男子銅メダルの高橋大輔(24、関大大学院)。2人は水泳界、フィギュア界でそれぞれ、日本選手の道を切り開いてきた。これからはどんな道を歩んでいくのか。スペシャル対談の最終回は今後について語り合った。
高橋「いつの間にか年上の方に…」
北島 スケート界を引っ張る意識はある?
高橋 ないですね。スケート界って年齢層が低くて、女子の場合だと10代でチャンピオンになるケースが多い。僕もけっこう年下だと思っていたら、まだ24歳ですけれど、日本の男子でも年上の方の選手になっていた。
北島 フィギュアスケート界の男子で史上初の五輪メダリスト。周りから求められることが多いでしょう。僕もそうだから。
高橋 外から見る人にとっては、そう映るのかなと思う。でも、僕が引っ張っていっているという自覚はないですね。それより、みんなが競い合って、競技全体が盛り上がっていけばいい。後輩を後輩とは思わないですね。試合では誰がどこでどうなるか分からないから、上も下もない。みんながライバル。負けないぞって。
高橋「自覚を持って」
北島 プライドを持ってね。
高橋 それは常にある。僕は誰かにあこがれてこの競技をしてきたのではなく、続けてやってきたらここ(トップ)までなったという感じだからなのかな。(あこがれの対象となる)自覚がないのかもしれない。でも、いろんな意味で自覚を持たないといけないとは思っている。
北島「競技するのは自分自身」
北島 結局、競技をするのは自分自身というのは変わらないもんね。
高橋 気づいたら「男子初のメダリスト」っていう経歴がついてきたので、これからも道を切り開いていきたい気持ちはある。女子はアジアの選手が世界のトップ層にいるけれども、男子は少ない。だからアジアの選手でも勝てるんだ、ということを見せていきたい。
北島 (バンクーバーで)見せたでしょう。
高橋「有力選手が続いて出てきて」
高橋 見せられましたかね?
北島 強いアジアの選手。世界で勝負できたことは自信を持っていい。冬季競技でも「アジアの人々はスポーツが弱い」って言われているんだ。アジアでひとくくりにされるのも、オレ的には嫌なんだけれど……。今後、フィギュア界を変えるには何が必要だと思う?
高橋 (有力選手が)続いて出てくること。僕が現役のうちはいろんな成績を取り続けることで、後輩が「やれるんだ」というイメージを持ってくれるといい。やっぱり最初にイメージがないと、強くなるのは難しい。(僕の位置までは)行けるって思ってもらえると思うんで、後は(僕に続く)選手が出てくることかな。一回プツっと切れると止まっちゃう。どんどん若手が出て、僕を抜かしていってもらえればいい。
北島 エッ、(抜かれて)いいの?
高橋 悔しいとは思うけれど、(実際に抜かれても)そんなに嫌じゃないかもしれない。フィギュアスケートの日本男子全体が盛り上がればいいから。女子ばかり注目されて、ちょっと悔しい思いをしてきたんで。
北島「男が頑張ることは必要」
北島 バンクーバー五輪では女子フィギュアばかりが注目されていたけれど、僕は男子の頑張りに注目してたんだ。男子にとにかく頑張ってほしいと心から応援していた。(北島が初出場したシドニー五輪競泳日本代表21人中男子は9人。獲得した4つのメダルはすべて女子。続くアテネ五輪は男子9、女子11でメダル8個中5個が男子だった)
男の選手が頑張るっていうことは、すごく必要。男が強いところを見せると、競技全体がポンと一段レベルアップすると、僕は思っている。後に続く選手の数も増えるしね。僕自身は水泳界での役割はもうそんなにないかな、と思っている。
高橋 失礼ですけど、まだまだ行けそうなイメージがありますよ。
北島「もう一回味わってみたいって…」
北島 そう思ってくれるとすげえうれしい。「もういいんじゃないか。成績がダメならそこで終わりだから、北京(五輪)でやめとけ」っていう声もあったから。でも、自分が好きなスポーツなんで、簡単に嫌いになれないし……。
高橋 (練習や試合を)やっている時は、「もういいかな」ってなりますけどね(笑)。
北島 うん。でももう一回、あの緊張感とか、(五輪の)感動を自分で味わってみたいと思っちゃうんだよね。まだできるんじゃないかって感じたからこそ、続けられた。
でも、これからは後輩が今後の水泳界を切り開いていってほしいな。僕がずっといられるわけじゃないから。実際に、若い選手が出てきて、僕もビクビク、ビクビクしている。この気持ちは復帰しないと、分からなかった。すごいいい効果だと思う。次世代に期待する気持ちも(高橋くんと)一緒だね。
高橋「来年の世界選手権がまず目標」
高橋 まず来年、東京で開かれる世界選手権。日本人が2連覇したことはないので、それを目標にしたい。難しいとは思いますよ。五輪の後に行われた今年の世界選手権では金メダルが取れちゃったという感じですけど、来年は取りに行きます。
北島 難しいことにチャレンジするのがいい。(2014年の)ソチ五輪も見据えてる?
高橋 見据えないです。4年後は意識しないって決めたんで。
北島「本来の感覚を取り戻して」
北島 そうだよね。僕も(12年に開催される)ロンドン五輪とは言いません。今年はパンパシフィック選手権、来年は世界選手権。そういった国際大会で自分が持っている本来の感覚を取り戻して、また頑張っていきたいです。
――対談の後、別室でそれぞれに感想を聞いた。
北島 感覚とか、すごく似ている。芸術競技だからストイックで、自分の気持ちを曲げない子かと思ったら、気さくで人間らしい、高橋くんらしさが見れてよかった。「うん、そうそう」とうなずくところが僕とほとんど一緒。もっと話したかったな。会う前以上に、一緒に頑張っていきたいと思えた。
高橋 厳しい人というイメージがあったんですけれど、フランクな方だったので良かった。失礼かもしれないですけれど、感覚とか、意識の持ち方とか、すごく自分と似ている点があった。「そういう考えもアリだな」って、自分のチョイスも広がった。やっぱり僕も五輪で金メダルを取りたかったですね。4年後は考えないんで(ソチ五輪のことは)言わないですけれど、「この気持ちは忘れないで」って言って下さったので、忘れないでいたいです。=終わり
(6月の毎日曜日の昼にBS日テレ「北島康介TV」で放送予定)
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お二方とも、本当に、競技を愛し、将来を考えているというところに今回も感動しました。
後輩が育ってくれるのを願うというところもスポーツマンマインドにあふれていて、素晴らしいです。
男が頑張らないと、というところはどうかとも思いますが、
人気、実力とも男女のバランスがとれて、初めて、その競技の認知度が高まるかもしれません。
今年のローザンヌバレエコンクールでは、初めて決勝に進出した、男子の数が女子の数を上回りました。
バレエの関係者も似たような発言をしていました。
プリンスアイスワールドでは、ちびっ子スケーター達が登場しましたが、殆どが女の子。
フィギュアスケートやバレエは女の子のお稽古事というイメージがありますが、
男子も盛んになり、
将来的には国産ペアや有力なアイスダンスも出て欲しいと思います。
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