さて、こけしの絵付けをした博物館の一室には、民具が何十点か収められていました。
まだそれほど古くない、今も使われているようなものもあり、ものによっては触れる状態になっていました。

はけごです。
「はけご」は、あけびのつる、あるいはわらで編まれたものもある腰に付け、または背負うように作られたかごのことです。トートバッグとウエストバッグをあわせたような役割でしょうか?
腰につけるものは、山菜やきのこ採り、田植えなどにも使用します。背負うタイプのものは落ち葉集めや桑の葉、草刈りしたものを運ぶのに用いました。
はけごの編み
編みの丁寧さに目をとられ全体を撮った写真がありません。

ふちもつるで編みこまれています。
はけごの編み ふち

わらだもありました。
「わらだ」はカイコを飼う際に、ここに桑の葉を敷き、そこにお蚕様を置くのに使ったそうです。
うちでもかつて養蚕をしていたので、わらだがあり、今はゼンマイを干したり、梅干にも使います。重ねておいてある後ろの木の板は、よくわかりませんでしたが、わらだを作るのに用いたのかもしれません。
わらだ

材料を見ると、う~む。
細い竹のような素材です。チマキザサ(平たくは「くまざさ」とも呼びます)の茎でしょうか?
竹を割った材料を使ったりすることもあります。
ササの茎を編んだ

かんじきもありました。うちのひいじいさんの作っていたかんじきとは少し様子が違っています。
針金で補強したりした跡があり、かんじきの輪の左右にかけたひもは、これは何の繊維でしょう?麻繊維でしょうか?麻だとするとどの麻かなあと思いました。ここの部分が樹皮で出来たものも見たことがあります。
うちに残るものは、足を結びつけるひもそのものが左右にかけてあります。
地域差による違いなのか、それぞれ好きなように工夫していたものなのか、時代の変遷なのかわかりません。
かんじき
かんじきに用いる木は、マンサク、クロモジなどが有名ですが、そのほか、ウリハダカエデ、スギ(枝)、イタヤカエデ(幹)、アブラチャン、オオカメノキ、と様々であったようです。このほかにも竹を曲げたものなども見たことがあります。木のつめもあったり無かったりしますが、クリの木、イタヤカエデ、ミズナラなど用いられるようです。

こちらは「ときと」と呼ばれる頭巾というか、帽子というか、笠というか、そのようなものです。
これはうちの集落でもかぶるかたがあったそうです。
じいさまに聞くと、これはなんでも普段の集落の中にだけいる時にはかぶらないんだそうです。
これは山に行く際にだけかぶるそうで、なぜか聞いたところ、あまり見た目がよろしくないということでした。普段は毛の帽子などをかむり、山に行く時はこれ、という使い分けであったようです。なぜ山に行くのにこれなのかとさらに聞くと、「いだますぐないさげ(もったいなくないから)」だそうです。買ったものなどはいだますいんですが、自分で作れるものはいだますぐないんですね。材料は、イグサの類やワラ、編むのにはあおそ糸を使ったようです。
なお、クルミの殻は飾りだそうです。
ときと

わらのくつのいろいろ。
これらは、冬用、あるいは冬用です。
真ん中の編みこまれたものは、ずんべぐつ、奥の丈のあるものはふかぐつ、右のスリッパのようなのはよそうき(おそうき)。
わらのくついろいろ

ずんべぐつ、です。
山に行くのに用いられたと書いてありました。わらを編みこんであり厚みで断熱がよかったのかもしれません。実際の使用の際にはどんなふうだったのでしょう?素足で履いたものなのでしょうか?どうもそのあたりがよくわかりません。
ずんべぐつ

すごいものがありました。
あおじし(カモシカ)の毛皮製の手袋と革靴、いえ、革沓と書いてありますね。
ガラスケースのなかで、どちらももさもさと毛皮ですから見分けがつきません。
あおじしの手袋と革沓

こちらが沓のようです。
説明によると、これは熊狩りに用いられた沓で、雪での滑り止めにカモシカの足の爪を利用したと書いてあります。そのために一頭のカモシカから一足しか作れずたいへんに貴重なものであり、熊狩りのリーダーのみが使用したとありました。一般の狩人は先ほどのずんべぐつを使ったとも書いてありました。大変に貴重なものですね。
あおししの革沓
カモシカは天然記念物になっておりますが、今は数もある程度多くなっております。
かつては食用にもし、たいへんに美味しいそうです(美味しくない、という見解も聞いたことがありますが)。天然記念物ですから、現在は捕まえて食べたりしてはいけません。
アオジシ(発音はあおずす)、あるいは単に「あお」、とも呼びます。「あお」ですと、カケヤ(でっかい木槌)も「あお」と呼ぶものですから少しややこしいです。

最後に、この日に、一番感心したものです。
わら(おそらく)を織り込んだようにして作ってあるミトン型のてぶくろです。
織り込むことでこのような造形ができるものなのですね、なんと見事な手仕事、そして使い込んであるのか手の形がそのまま残されたような使用感ある姿でありましょうか。感嘆するほかありません。
てぶくろ

実際の暮らしで、あるいは山で使われたこれらの品々はどれもその地で採れる材料で工夫して作られたものなのですね。作る技術は、代々受け継がれたものなのでありましょう。
じいさまの言を借りれば、いだますぐないもの、なのでしょう。
自分で作れるので暮らしの中で、山で実際に使うのにいだますぐない。
でも、ぼくには自分では作られない品物たちなのでたいへんにいだますぐ感じられました。