もう先週のことになりますが、地元のホタルの会から、今年の総会でホタルや虫などそういう話の講師をしてくれと頼まれておりました。
お断りをしておくと、ぼくはなにかしらの専門家でも先生でもないのです。
でも、頼まれるとはずかしげもなくひょこひょこと出て行ってしまうのでした。
資料もせっかく作ったので載せようかなと思います。(ちと長いですが)
昨年(2011年)にへんぐり地区で確認したホタルは、ゲンジボタルとヘイケボタルの二種類でした。これに、ヘイケボタルと間違われることのあるヒメボタルをあわせて、それぞれの住む環境などについて見てみましょう。この3種は、夜に光って飛ぶいわゆる「ホタル」として知られているものです。
(※へんぐり地区はそのままうちの近くで呼ばれているままの地名です。かつて川がこの地を山の尾根にそってくるんと回っていたので、「辺めぐり」、「へんめぐり」がなまって「へんぐり」になったそうです。江戸時代かそのあたりに川の曲がりを切通しでまっすぐにして、その川の巡っていたところを田んぼにした経緯があります)
ゲンジボタル:体長はメス18mm、オス15mm程度。小川や田んぼの用水路に住みなじみのあるホタルです。幼虫はカワニナを食べると言われています。水の綺麗なところに住むイメージがありますが、えさとなるカワニナ自体がそれほど綺麗な水を好むわけではないので、まるっきり渓流の澄んだ水でないといけないというわけではありません。飛ぶ時期はこの近くでは6月の下旬から7月の中旬ころまでとなっています。川沿いでも飛んでいて、川から取水している堰もカワニナが多くよい住処になっています。このホタルの幼虫が生きていくには水が通年あるところでないといけないため、乾田化したのにつれて各地で数を減らしてきた経緯があります。

光るゲンジボタル成虫。
ゲンジボタルと水辺の様子。観察しているとある程度決まった飛ぶルートが見えてきます。

ヘイケボタル:体長はメス12mm、オス10mm程度。ヘイケボタルは、昨年の7月にここでで初めて確認(これまで気がつかなかった)しました。幼虫はモノアラガイやほかの生き物の死体など食性はゲンジボタルに比べてひろいと言われています。ヘイケボタルは、住む環境はゲンジボタルよりもより里のほうと言われています。発生時期はゲンジボタルよりも遅く長く、昨年は8月中旬にも観察することができました。
ヘイケボタルはゲンジボタルよりもちいさく、胸の部分の赤い模様のなかに黒い帯があります。

あぜに集まっているヘイケボタル成虫。

ヒメボタル:体長はメス5mm、オス7mmほどとちいさく、メスは飛ぶことができません。上記の2種と異なり幼虫は陸に住むため林の奥などに気がつかずに生息している可能性はあります。志津のネイチャーセンターなどではヒメボタルの観察会なども開催されているようです。幼虫は陸生のため、おなじく陸生の貝であるオカチョウジガイやキセルガイの仲間を食べているものと考えられています。このホタルの場合には、光から逃げていく習性があるため、道路灯などから避けるなどでなかなか目につかないのだと思われます。
(写真はまだありません)
陸生ホタルの幼虫について
ホタルの仲間は、日本では40種類以上が確認されていますが、そのほとんどは陸生(幼虫の時期を陸ですごす)で、世界中で見ても水にすむホタルは5種類ほどで、うち4種が日本に分布しています。ホタル=水辺というのは日本特有のものらしいのです。ここの近くで見つけた陸生のホタルでは、まずオバボタルは、庭先や山林にも生息していて、夜に森の中を眺めたりすると、あちこち地面が光っているように見えるのはこの虫のためでもあると思います。成虫は昼に飛んで、子どもなどは「ニセボタル」などと呼んでいる虫です。幼虫の時期には、水にすむのと同じく腹部が光ります。もうひとつはクロマドボタルの幼虫と思われるもので、こちらは木の枝などを這っているのを見かけます。これも、腹部が光り、雪のない時期にはかなり長い期間観察することができます。陸生のホタルの幼虫はあちこちに生息しているものですが、気がつかない場合が多く、ヒメボタルの幼虫もこれらとおなじような形をしているものと推測されます。
杉林にいたオバボタルと思われる幼虫。

おなじところのクロマドボタルと思われる幼虫。

ゲンジボタルとヘイケボタルの幼虫のえさについて
水棲のゲンジボタルのえさについてのカワニナは、各地のホタルをふやす運動などであちこちから移入され、もともと移動する能力の少ない淡水の貝類の地域個体のかく乱が懸念されます。また、寄生虫をもっていることもあり、安易にほかの水域からの持込などはすべきでありません。写真に一緒に写っている丸い巻貝は、近年になって分布を広げている外来種のサカマキガイと呼ばれる淡水の貝です。以前から生息しているモノアラガイとは貝の巻きが逆になっていて、また触覚の形状などの違いがあります。この外来種による生態系への影響はいまのところよくわかりません。

ホタルの住んでいる環境と羽化するまで
水棲ホタルの幼虫は5月ごろに、これまで住んでいた水のなかを離れ、土やコケのなかでさなぎになります。このため、ホタルが少なくなった=水が汚くなった、と思われがちですが、水質に加えて土の側溝からコンクリートの側溝に更新されてきたことが住む場所を少なくしてきた大きな要因と思っています。コンクリートの側溝では、落ち葉が残らずに流れ、えさとなるカワニナが生育できず、また蛹になるため土に上がることも出来ないためホタルが住むことは困難になります。また小川でも同様に、これまで護岸工事が進められた結果、流速は早くなり、ホタルが上陸することもできなくなっています。また、畦道などが舗装された場合には、土に潜ることができなくなってしまいます。ヒメボタルについては、まだ生態が充分にわかっていない部分が多いのですが、えさになる陸生の貝類は、落ち葉などを食べて生きていることから、道路周辺のむやみな殺虫剤や除草剤の使用により少なくなっているであろうことが想像されます。
つまり、ホタルが安定して成育するためには、水と土とあわせてそのまま守っていく必要があり、へんぐり地区に多くホタルが残った要因として、土のままの側溝があったこと、上流部にある程度深い池があり、年間を通して水が流れていることがあげられます。このため、堰の管理方法の変更などで水を止めてしまうことや、土が固まってしまったり、コンクリート側溝になったりした場合には、ホタルの成育には直接的に影響がでてきます。また、ヒメボタルは、ここでは確認できていないものの、不要な街路灯の撤去など住みよい環境にしていくことで今後確認できる可能性は高まるのではないでしょうか。
と、まあ、このような資料をお渡ししてお話をしたのでした。
これまで、山村のむらづくりというと、道路を拡幅し、いろんな建物をたて、というように進展してきました。全国各地に「三流の都会」を作るのが発展することだったのでしょう。
ホタル飛ぶ風景は、田んぼと山と川、草むらの風景ですから、うちの近くの集落でそれを大事だと思うようになったのにはかなりおおきな気持ちの変化があるように思います。
山村を「三流の都会」へ、ではなく、「一流の山村」へ。
そしてまた、ホタルというのは希少種というわけではなくそのへんにいる虫です。
ホタルそのものが貴重なのでなしに、ホタルが住みうるそういう環境があるということ、そういう環境はヒトもずっと住むことができるのだろう(むやみにクスリをつかわずに田んぼをしているとういうことですね)ということにホタルの光を眺める嬉しさがあるのかもしれません。
ここ数年には「生物多様性」という言葉がでてきました。これまでの生物種の保護というと、ある特定の珍しいものを保全していこうという活動でした。
ところが、実際にひとも一緒に住みよい、ずっと作物を作ったり、山で採集して暮らすことのできるところとして考えると、特定のある種類を守っていくということではなしに、大事なのはいわゆる「普通種」と呼ばれるものの豊富さなのだろうと思うのです。
ついついね、珍しいものを有難がってしまうのが人の性なのですが、当たり前のそのへんにある草や虫が、いつまでもそのへんにある。そういうのが良いですね。
はなしの終わりには、ぼくは道端で草を撮ったり虫を撮ったりしているのですが、実はこういうものを観察しておるのですから、怪しいものでも、おかしくなってしまったのでもありませんよ。と言わせていただいて、よし、これでもっと安心して草を眺められるなあ、と思ったのでした。
お断りをしておくと、ぼくはなにかしらの専門家でも先生でもないのです。
でも、頼まれるとはずかしげもなくひょこひょこと出て行ってしまうのでした。
資料もせっかく作ったので載せようかなと思います。(ちと長いですが)
昨年(2011年)にへんぐり地区で確認したホタルは、ゲンジボタルとヘイケボタルの二種類でした。これに、ヘイケボタルと間違われることのあるヒメボタルをあわせて、それぞれの住む環境などについて見てみましょう。この3種は、夜に光って飛ぶいわゆる「ホタル」として知られているものです。
(※へんぐり地区はそのままうちの近くで呼ばれているままの地名です。かつて川がこの地を山の尾根にそってくるんと回っていたので、「辺めぐり」、「へんめぐり」がなまって「へんぐり」になったそうです。江戸時代かそのあたりに川の曲がりを切通しでまっすぐにして、その川の巡っていたところを田んぼにした経緯があります)
ゲンジボタル:体長はメス18mm、オス15mm程度。小川や田んぼの用水路に住みなじみのあるホタルです。幼虫はカワニナを食べると言われています。水の綺麗なところに住むイメージがありますが、えさとなるカワニナ自体がそれほど綺麗な水を好むわけではないので、まるっきり渓流の澄んだ水でないといけないというわけではありません。飛ぶ時期はこの近くでは6月の下旬から7月の中旬ころまでとなっています。川沿いでも飛んでいて、川から取水している堰もカワニナが多くよい住処になっています。このホタルの幼虫が生きていくには水が通年あるところでないといけないため、乾田化したのにつれて各地で数を減らしてきた経緯があります。

光るゲンジボタル成虫。
ゲンジボタルと水辺の様子。観察しているとある程度決まった飛ぶルートが見えてきます。

ヘイケボタル:体長はメス12mm、オス10mm程度。ヘイケボタルは、昨年の7月にここでで初めて確認(これまで気がつかなかった)しました。幼虫はモノアラガイやほかの生き物の死体など食性はゲンジボタルに比べてひろいと言われています。ヘイケボタルは、住む環境はゲンジボタルよりもより里のほうと言われています。発生時期はゲンジボタルよりも遅く長く、昨年は8月中旬にも観察することができました。
ヘイケボタルはゲンジボタルよりもちいさく、胸の部分の赤い模様のなかに黒い帯があります。

あぜに集まっているヘイケボタル成虫。

ヒメボタル:体長はメス5mm、オス7mmほどとちいさく、メスは飛ぶことができません。上記の2種と異なり幼虫は陸に住むため林の奥などに気がつかずに生息している可能性はあります。志津のネイチャーセンターなどではヒメボタルの観察会なども開催されているようです。幼虫は陸生のため、おなじく陸生の貝であるオカチョウジガイやキセルガイの仲間を食べているものと考えられています。このホタルの場合には、光から逃げていく習性があるため、道路灯などから避けるなどでなかなか目につかないのだと思われます。
(写真はまだありません)
陸生ホタルの幼虫について
ホタルの仲間は、日本では40種類以上が確認されていますが、そのほとんどは陸生(幼虫の時期を陸ですごす)で、世界中で見ても水にすむホタルは5種類ほどで、うち4種が日本に分布しています。ホタル=水辺というのは日本特有のものらしいのです。ここの近くで見つけた陸生のホタルでは、まずオバボタルは、庭先や山林にも生息していて、夜に森の中を眺めたりすると、あちこち地面が光っているように見えるのはこの虫のためでもあると思います。成虫は昼に飛んで、子どもなどは「ニセボタル」などと呼んでいる虫です。幼虫の時期には、水にすむのと同じく腹部が光ります。もうひとつはクロマドボタルの幼虫と思われるもので、こちらは木の枝などを這っているのを見かけます。これも、腹部が光り、雪のない時期にはかなり長い期間観察することができます。陸生のホタルの幼虫はあちこちに生息しているものですが、気がつかない場合が多く、ヒメボタルの幼虫もこれらとおなじような形をしているものと推測されます。
杉林にいたオバボタルと思われる幼虫。

おなじところのクロマドボタルと思われる幼虫。

ゲンジボタルとヘイケボタルの幼虫のえさについて
水棲のゲンジボタルのえさについてのカワニナは、各地のホタルをふやす運動などであちこちから移入され、もともと移動する能力の少ない淡水の貝類の地域個体のかく乱が懸念されます。また、寄生虫をもっていることもあり、安易にほかの水域からの持込などはすべきでありません。写真に一緒に写っている丸い巻貝は、近年になって分布を広げている外来種のサカマキガイと呼ばれる淡水の貝です。以前から生息しているモノアラガイとは貝の巻きが逆になっていて、また触覚の形状などの違いがあります。この外来種による生態系への影響はいまのところよくわかりません。

ホタルの住んでいる環境と羽化するまで
水棲ホタルの幼虫は5月ごろに、これまで住んでいた水のなかを離れ、土やコケのなかでさなぎになります。このため、ホタルが少なくなった=水が汚くなった、と思われがちですが、水質に加えて土の側溝からコンクリートの側溝に更新されてきたことが住む場所を少なくしてきた大きな要因と思っています。コンクリートの側溝では、落ち葉が残らずに流れ、えさとなるカワニナが生育できず、また蛹になるため土に上がることも出来ないためホタルが住むことは困難になります。また小川でも同様に、これまで護岸工事が進められた結果、流速は早くなり、ホタルが上陸することもできなくなっています。また、畦道などが舗装された場合には、土に潜ることができなくなってしまいます。ヒメボタルについては、まだ生態が充分にわかっていない部分が多いのですが、えさになる陸生の貝類は、落ち葉などを食べて生きていることから、道路周辺のむやみな殺虫剤や除草剤の使用により少なくなっているであろうことが想像されます。
つまり、ホタルが安定して成育するためには、水と土とあわせてそのまま守っていく必要があり、へんぐり地区に多くホタルが残った要因として、土のままの側溝があったこと、上流部にある程度深い池があり、年間を通して水が流れていることがあげられます。このため、堰の管理方法の変更などで水を止めてしまうことや、土が固まってしまったり、コンクリート側溝になったりした場合には、ホタルの成育には直接的に影響がでてきます。また、ヒメボタルは、ここでは確認できていないものの、不要な街路灯の撤去など住みよい環境にしていくことで今後確認できる可能性は高まるのではないでしょうか。
と、まあ、このような資料をお渡ししてお話をしたのでした。
これまで、山村のむらづくりというと、道路を拡幅し、いろんな建物をたて、というように進展してきました。全国各地に「三流の都会」を作るのが発展することだったのでしょう。
ホタル飛ぶ風景は、田んぼと山と川、草むらの風景ですから、うちの近くの集落でそれを大事だと思うようになったのにはかなりおおきな気持ちの変化があるように思います。
山村を「三流の都会」へ、ではなく、「一流の山村」へ。
そしてまた、ホタルというのは希少種というわけではなくそのへんにいる虫です。
ホタルそのものが貴重なのでなしに、ホタルが住みうるそういう環境があるということ、そういう環境はヒトもずっと住むことができるのだろう(むやみにクスリをつかわずに田んぼをしているとういうことですね)ということにホタルの光を眺める嬉しさがあるのかもしれません。
ここ数年には「生物多様性」という言葉がでてきました。これまでの生物種の保護というと、ある特定の珍しいものを保全していこうという活動でした。
ところが、実際にひとも一緒に住みよい、ずっと作物を作ったり、山で採集して暮らすことのできるところとして考えると、特定のある種類を守っていくということではなしに、大事なのはいわゆる「普通種」と呼ばれるものの豊富さなのだろうと思うのです。
ついついね、珍しいものを有難がってしまうのが人の性なのですが、当たり前のそのへんにある草や虫が、いつまでもそのへんにある。そういうのが良いですね。
はなしの終わりには、ぼくは道端で草を撮ったり虫を撮ったりしているのですが、実はこういうものを観察しておるのですから、怪しいものでも、おかしくなってしまったのでもありませんよ。と言わせていただいて、よし、これでもっと安心して草を眺められるなあ、と思ったのでした。