三方境から降りてくる光は、はじめヘッドライトだと思いませんでした。
明るい人工衛星が山の際の向こう側を通って、ちかちかしているのだろう、くらいなもので。
ところが、だんだんと降りてきます。

はて?北寒江でさようならした単独の、竜門に向かった方が竜門小屋から引き返して来たのだろうか?
それとも、なにかしら起きたのだろうか?正直なところどきどきしていました。

タヌキは、しょっちゅううちの近くをうろうろしています。
キツネは、時折うちの近くにやってきます。

うちの犬(柴犬です)がもう少し若く、血気盛んだったころのこと。
夜中に、助けを求めるような声がするものだから、庭に行くと、キツネと睨み合っておりました。
キツネにはこれまで何度も遭遇しましたが、いつもぴょんぴょんと山に走っていくばかり。
ところが、この時ときたらすっかり犬と睨み合っているものだから、こちらが追い払おうとしても逃げません。
そのうち、血気盛んで、気の強いはずのうちの犬なのに、しっぽを後ろ足の間にはさみ、すっかりビビらされてしまいました。
キツネは、こちらにはヒト(ぼくね)もいるのに、それは鬼気迫る迫力でした。
恐ろしいものです。

冬に、雪の山に動物のあしあとを追っていくと、キツネのものらしき足跡があちこちに見当たります。
ところが、キツネの足跡を追っていったはずなのに、いつの間にか、ウサギのような足跡になっていたり(キツネが小走りすると、ウサギのような足跡になるそうです)、きちんと辿っているはずなのに、いつのまにか見失ったり。後ろに進むトラップを使うそうです。

あ、はなしがそれました。
やってくるのが、ヘッドライトだと認識したあと、小屋に来たに違いないし、なにかあったとしたら困っているかも、と思ったのでちょっと迎えに出ました。

「こんばんは」
「あ、こんばんは」
ああ、良かった。とりあえず、挨拶を返せるヒトでした。
挨拶が返ってこなかったら・・・。

キツネも恐ろしいですけれど、一番怖いのは見知らぬ人。
キツネは人を化かすやも知れませんが、人が人を騙すことのことのほうが確実です。
知らぬ人と二人きりならば、一人きりのほうがよほど気が楽。
三人寄れば楽しいですね。

ちょっと、嫌な感じの書き方になってしまいました。きっと良い人だと思うのです。

聞くと、三面からの長い道を来たとのこと。
・・・しかも、スパイク付きとは言え、ながぐつで。
玄関でながぐつを脱ぐのかな?と思ったら、前転しそうになっていました。
・・・あしが攣ってしまい、脱げない。のだそうな。

途中の避難小屋を使うはずが、鍵がかかっていたのでここまで来たそうです。
ビバークするという手もありましたよ、と言うと、なんとツエルトひとつ持っていない。
いやいや、この時期に山に、そんなルートを行くのだから、持ちましょうよ。それは。

ちょっと、心配な感じのかたながら、まあ。落ち着いた後。

狐穴の小屋と、後ろに以東岳。北斗七星。
山の草とか花とか虫とか-狐穴小屋と以東岳

この夜は、うっすらと空の高いところに雲がありました。光の線は、飛行機かな?
山の草とか花とか虫とか-狐穴から見た月山

小屋からちょっと北(小屋の裏のほう)に向かいました。
木星が明るく見えます。
山の草とか花とか虫とか-狐穴小屋と木星

げげぇ。
月に暈がかかっています。
暈がかかると、お日様の暈とおなじく、翌日か、翌々日あたりは天候が崩れることが多いです。
山では見たくない、月のわっか。
山の草とか花とか虫とか-11月4日の月の暈

月の暈の一部とペガスス座。
ちょっと虹のようでしょう?
山の草とか花とか虫とか-月の暈とペガスス

この夜は、小屋に人がいるものだから、夜中に星を撮りにいったりするのはちょっと気がひけました。
(その人は、一階に寝て、ぼくは二階でした)

前日に、ちょっと寝坊してしまったものだから、今夜は早くに眠り、今度こそ暁のなかを歩くのだ。
同じ失敗を二度繰り返すロッキーチャックさんではござらん。

・・・と思ったけれど、やはりちょっと寝過ごしました。
起床したのは5時20分ころ。

朝ごはんをさささと食べ、小屋を発つ準備が終わるころには、日が昇り、以東岳は朝日に照らされていました。
山の草とか花とか虫とか-朝焼けの以東岳

3日目の朝。
小屋を発ったのは、6時41分。
写真は、三方境の東側の小屋に下りる分岐点。
山の草とか花とか虫とか-三方境の東側分岐点

昨夜に到着した方。
ぼくの発つころにも、まだ眠っています。
というか、小屋の毛布を借りて寝ているのに、朝になって気がつきました。
・・・寝袋も持ってきてないのか。

「もしも~し、ぼくはお先に発ちますよ!!!」
何度か大きな声で呼びかけますが、返事がありません。ぐっすり眠っています。
う~ん、困った。
毛布の下で、肩は動いているように見えるから生きているでしょうし、一人で来たのだから、一人で帰るでしょう。
長いルートを戻ると聞いていたので、はやめに出ようぜ、とも思いましたが、付き合いきれずに小屋をあとにしました。

このあと、大朝日岳へと、南に向かいました。