ずいぶんと前置きが長くなってしまいました。
今回、山に行ったのは、この作業をするためでした。

参加者は、県内の山岳会会員と一般の有志(大学生や遠く関東から来てくれた方もいました)。
あと環境省のレンジャーも。(国定公園なのと、いろいろ法規制がかかっているので、勝手に作業するのはいけません)

作業した場所は、この写真の山(中岳)と、大朝日と中岳のあいだにある金玉水という水場の上のところでした。写真では、中岳に続く登山道がなかほどでちょっと幅があるようになっていると思いますが、その場所。
あと。写真の下端の土が露出しているところでした。
山の草とか花とか虫とか-中岳と鞍部

前日の作業では、小屋から30分くらい下ったところから、以前に使ってあまり具合のよくなかったヤシ繊維を運搬しました。大学生の女の子などは、濡れて重くなっているヤシ繊維を80Lほどのザックに満杯にし、土嚢袋につめたものを両手に持ってあげていました。それでにこにこしているんだからおそるべし大学山岳部。です。あと、いろいろ運びました。

さて、二日目の作業。班分けして作業でしたから内容はぼくのところだけ。
登山道の脇のところが道から侵食していったのか、雪庇が動くときにはがれるのか、風でめくれるのか、いずれかの要因で土が露出していっています。
山の草とか花とか虫とか-登山道脇の露出した土壌

土は、泥炭のように見えました。薄い黒い層が重なって出来ています。
山の草とか花とか虫とか-露出した土壌

道の反対側は、イワイチョウらしき葉もあって、湿地のような植生です。
もともとは高層湿原だったのかもしれません。
山の草とか花とか虫とか-作業現場西側

露出した部分は、持ってきたヤシ繊維と、登山道の浮石を使って雨や風、水流でこれ以上削れないようにしました。時間がたてば、ここに砂が入り草が生え、ヤシ繊維は分解され、草の根が土を守るようになるはずです。
山の草とか花とか虫とか-土壌を石で守る

また、ここは雨が降ると、水路のようになって水が流れてもいるようだ、とのことで、麻の袋を使用して、ちいさくせき止めるようにしました。麻袋のなかは、ヤシ繊維です。水量が少ないときには、麻袋を浸透して通過し、多いときには、ここでいったん水の勢いがとまり、さらに砂が徐々にたまって、そこに草が生えてくるはずです。
山の草とか花とか虫とか-麻袋ダム
写真の左側の石の部分は、石のあいだに草が生えて、よい感じになっていました。こういうところはいじらないようにしました。

なお、こういった山岳緑化自体が、まだ15年ほど前から始まったばかりとのことで、ちょっと未知数な部分があります。これは、実験の3パターン。この箇所の侵食の原因により、どの程度の作業で、どんな効果になるのか違いをみるそうです。左から、水流のせき止めのみ、麻の布で覆うもの、ヤシの繊維をおくだけのもの。
山の草とか花とか虫とか-3パターン

なお、いかにもぼくがやった、みたいに書いてありますが、班は6名でした。
そして、途中で気になる虫がいる、とのことでほかの人に呼ばれて見に行ったので、あまり役に立っていません。気になる虫はのちほど。

作業したところから見た大朝日岳。
三角ですね~。
山の草とか花とか虫とか-作業場所からみた大朝日

自分たちの班の作業が思いのほか早く終わったため、ほかの班の作業に合流しました。
写真の奥が西。日本海側です。ここは、季節風なども強く、基本的に日本海から風が吹いてきます。
ここが草がなくなっているのは、雨や踏み付けなどでなく、風で植生が剥がれているのでは?とのことでした。(風の場合は、自然のおこないですから、そのまま崩れるのもよい、という考えもあるかもしれません)
山の草とか花とか虫とか-緑化ネット敷設状況
ここには、裸地に緑化ネットと、さっきのようにヤシ繊維を、草地と裸地との境目に配置しました。

緑化ネットと呼んではいますが、ただの麻の目の大きな網です。
ほかの植物のタネなどが入っていると、ここの生態系が変わってしまうので、こうして麻繊維のネットをはることで、風などの浸食の緩和、新たな草の種が発芽育成するための湿度の確保、種がとどまりやすくする。などの効果が期待されます。はい。
山の草とか花とか虫とか-緑化ネット

数年前から実施しているネットの効果はこんなかんじ。(銀玉水上部の様子です)
ネットのはじから草が生えてきています。
山の草とか花とか虫とか-緑化ネットに進入する草

こちらは、ネットのしたから新しい草。手前のネットは、ここのうえにヤシ繊維を敷いていた箇所ですが、それだと、どうも発芽してから定着しにくいのでは?との疑問があり今回取り除いて上の場所に使った次第。写真奥の場所では、もうネットが朽ちて土に還り、新しい草の根がこれからはネットがわりになっていきますね。
山の草とか花とか虫とか-緑化ネットから出てきた草

なお、これは県の事業でしたもの。
階段、ではなく水の勢いをいったん止めて、これ以上登山道が掘れてしまうのを止めるためのものだそうです。
山の草とか花とか虫とか-銀玉水上部の登山道
歩きにくいから、と道脇の草地などを歩いたりしないことと、ポールの先っちょのゴムはしっかりつけてくださいね。(かつて、トレッキングポールを使っていると、おこられたりするイメージでしたが、今は使っているほうが多いみたいです。)

しかしね。草を生やすのに、みんなでああだ、こうだ、と知恵を出し合っている様子は、ちょっと山のしたとまた違って面白いですね。