小説「蒲生邸事件」 宮部みゆき | フインキーのふんいき レビュー

小説「蒲生邸事件」 宮部みゆき

完全にタイトルで損してるであろう作品。
第18回日本SF大賞を受賞しました。そう、SFなんです。
蒲生邸事件 (カッパ・ノベルス)/宮部 みゆき
¥1,000
Amazon.co.jp
スコア選択: ★★★★

新書版、2段組みで530ページ。とってもぶっとい本です。
そして、読みにくい。なかなか先に進まないこの感じ、分かりますか?


サクッと読める軽い本ではなく、じっくり腰を据えて読む重厚な本です。
内容がタイムスリップ系なので、「七回死んだ男 」や「さよならの代わりに 」のような軽いモノを期待したら、いい意味で裏切られます。

「火車」 ではあまり感じなかったんですが、比喩のような言い回しが多く、くどいです。
よってスピード感がなくなり、ページの割に展開が遅い遅い。
これだけ沢山の言葉がポンポンと出てくる宮部さんには脱帽ですが、もう少し軽くしてもらいたかった。

読みにくさはあるものの、その分得られる感動はかなりのものです。
だから、手に取った人は最後まで読んでほしい。



現代に生きる孝史は予備校を受験するため、東京のホテルに宿泊する。
が、そこで火事にあい、時間旅行の能力者である平田と一緒に過去に連れて行かれる。助けられたはいいものの、その時代はちょうど、二・二六事件の真っ只中で、とても危険な状態であった。


タイムスリップできる能力があれば、過去を変えられ、歴史を思いのままにできる。
いわゆる神になれる、と誰しも思いますが、この本では少し違います。

歴史が先か、人間が先か。
人間が歴史を作るのか、歴史は行き着く所が既にあって人間はそれを成すための駒なのか。

多くの本は前者の方ですが、この本は後者の考えです。
つまり、過去に遡って、大きな事件を防いだとしても、また違うときに必ず起こる。その事件で多くの人々を救うことができても、違う人たちが同様にして被害にあってしまう。
ある人に起こる出来事(歴史的事実)は変えることはできても、歴史は変えることはできない、ということです。

この設定によって、移動できる能力を持っていても誰も助けられないと、平田は苦しみます。
自分の満足するレベルで活用すればいいのに、すべてを背負ってしまう。平田さんは、本当やさしい心の持ち主でした。

なぜ、二・二六事件の頃にタイムスリップしたのか、孝史を連れてきた理由、蒲生邸の大将の死、黒井の存在など、面白所がここには書ききれないくらい沢山あります。何よりも、ふきが。涙、涙。。。

最後はもっともっと色んな事を語って欲しかった。輝樹のこととか・・・もっと。