■長周期地震動の影響が大きいタワーマンション

巨大地震が発生すれば数百km離れた高層ビルを揺らす“長周期地震動”を巡り、耐震診断や改修工事を促す国の補助制度が浸透していない。

巨大地震対策地域で2017年4月から設計基準を強化したが“旧基準”のタワーマンションが大阪市や神戸市に150棟ほどある。

2011年3月11日に発生した東日本大震災で、震源地から770km離れた大阪市住之江区の南港に建つ『大阪府咲洲庁舎』を“長周期地震動”が10分間揺らし続けた。

高さ256mの55階建ての超高層ビルでは最上階の揺幅が2.7mに達し、室内の間仕切壁やエレベーターが破損した。

南海トラフ巨大地震に備え国土交通省では2017年4月から、関東、静岡、中京、大阪の広域地域を新築する高層建築物の設計基準を強化した。

それ以前の“旧基準”の建築物は、立地エリアの揺れが設計時の計算を上回る可能性を“非常に高い”“高い”“ある”の三区分で示した。

耐震対策を促進するため“①:詳細診断”“②:改修に向けた設計”“③:改修工事の費用を一部補助する制度の利用を促す”を設け、“①:詳細診断”の補助額は最高1/3としている。

ただ、分譲のタワーマンションからの申請は1件もない。

4地域で20階建て以上のタワーマンションは2022年末で1092棟あり、“非常に高い”“高い”の地域には大阪市と神戸市に164棟あり、そのうち“旧基準”で建設されたタワーマンションは150棟ある。

関東は南海トラフからの震源地から距離があり、地盤の硬さから基準は“ある”のみだった。

巨大地震が起こればタワーマンションの柱や梁に深刻な被害が生じるとみられる。

建物内の設備が損傷し機能しなくなりエレベーターやエントランスドアが稼働せず、玄関ドアも歪んで開かなくなる可能性もあり、そのまま生活できない恐れもある。

ただ、“旧基準”でも、その立地や建物規模により設計が異なり、巨大地震が起こったとしても建物被害が出ない事もあり、一律に耐震問題がある訳ではない。

地震対策が進まないのは分譲のタワーマンションは管理組合が組成され、区分所有者の意思決定で成り立つ。

タワーという大規模建築物の住戸は数千万円~数億円し、当然に建物の耐震性や構造の堅固さの説明を受けて購入を決めている。

南海トラフ巨大地震とはいえ、周辺の建物よりは大丈夫という認識がある。

さらに耐震改修するにも総会で決議しなければならず、都心のタワーマンションは投資用で購入している区分所有者も多く、巨額費用を支出する議題に対して合意形成が難しい。

もし耐震改修工事を実施するとなると費用の見積書も作成しなければならず、東日本大震災で“長周期地震動”の被害に遭った『大阪府咲洲庁舎』は制震装置の設置などの耐震改修工事で40億円が投じられた。

いくら地震対策とは言え、国も民間の建築物に数億円規模の補助金を出せる余裕はない。

“①:詳細診断”だけでも数百万円以上が掛かり、管理組合が納得して支払える金額ではない。

まずタワーマンションの区分所有者や居住者に地震の災害意識を持ってもらい、家具の固定、食料や飲料の備蓄、避難マニュアル対策などを備え、防災意識を向上させる事が先決である。

知らんけど。

【俺の経済新聞 2023年3月19日】

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