■広がらないコンパクトシティー

人口減少で都市の規模を縮小させ行政の効率化を図る“コンパクトシティー”が、地方都市ではなかなか浸透していない。

各地で目立つのが中心市街地の再整備と、郊外の大規模開発を同時進行させる矛盾がある。

背景にあるのは自治体の異なる担当部署が別々の政策を実施する“縦割り行政”にある。

“コンパクトシティー”とは、中心市街地に都市機能や居住地を集積し、住民が徒歩で生活できる街区形態。

下記の4項目を基軸に、郊外開発を抑制し人口密度を上げる事を目的としている。

①:中心市街地の活性化
②:行政サービスの効率化
③:財政支出の削減
④:地球温暖化対策の利点

秋田市は中心市街地から5kmほどに行った外旭川地区で、イオンタウンが2015年に自治体と協定を締結した。

13万9520㎡(4万2204坪)の敷地に商業施設やスタジアムの開発を計画し、総事業費は1000億円ほどになる。

外旭川地区は都市計画で開発が制限されおり、秋田市では2001年に“コンパクトシティー”を目指す都市計画を策定し、2008年から中心市街地に整備を実施し、高層マンション建設などが増加し、地価も上昇している。

茨城県取手市はJR取手駅前の再開発を検討し“コンパクトシティー”を目指しているが、2km離れた田園地帯で大規模商業施設も計画している。

長崎県諫早市も郊外の商業施設を誘致しており、開発しやすい郊外は経済活性化や雇用創出につなげるのに手っ取り早い事情がある。

“コンパクトシティー”は国土交通省の部署、郊外開発は経済産業省の部署と別れており、縄張り争いが見え隠れする。

1990年代に“コンパクトシティー”の議論が始まる、バブル崩壊後に中心市街地の衰退が進んだ。

求心力を高めるため1998年に『中心市街地活性化法』が制定され、自治体が基本計画を作成し、国の認定を受ければハードソフト事業が支援される。

それに併せるよう同じ年に『都市計画法』も改正された。

ただ、2000年の『大規模小売店舗立地法』により郊外開発の規制緩和で、郊外での大規模モールの建設ラッシュとなった。

国に『まちづくり3法』(中心市街地活性化法・改正都市計画法・大規模小売店舗立地法)の改正や『都市再生特別措置法』の施行で修正を図るが、中心市街地と郊外開発の溝は埋まっていない。

自治体の本音では“コンパクトシティー”の実現可能性は低いとの認識で、住民の住居も市街地を進んで選択していない。

郊外型商業施設がある自治体は、無い自治体より人口減少率が低い統計もある。

北九州市は2018年の西日本豪雨により、傾斜地から市街地に人口やインフラを集中させる計画を発表したが、一部の住民の反発で計画は修正縮小した経緯がある。

成功例では、アメリカのポートランド市は都市境界線の外側について開発を厳しく規制する。

2035年の完成を目指す中心市街地の長期都市計画は、積極的に参加する住民の声に基づいている。

“コンパクトシティー構想”の核となる中心市街地の活性化も成功モデルも見えない。

中心市街地の整備した商業施設の失敗が多発し、人口減少に加え、公共交通網が整っていない事が運営困難に陥らせている。

全国初の“コンパクトシティー”形成した青森市も、2001年に中心市街地で総事業費184億6000万円を投じ複合ビルの『フェスティバルシティ・アウガ』を開業した青森駅前再開発ビルが集客できず、2016年に負債総額32億7900万円で経営破綻した。

日本には全国的な“東京一極集中”があり、自治体の地域内でせめぎ合いが続けば地方全体が衰退していくだけである。

知らんけど。

【俺の経済新聞 2022年12月19日】

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