■相続対策、不動産活用に黄信号
2009年、90代のAさんが東京都と神奈川県で2棟の賃貸マンションの土地建物を13億8000万円で購入した。
Aさんは2012年に亡くなり、資産は子供等に相続された。
その2棟の賃貸マンションを相続したBさん。
路線価の相続税評価額は3億3000万円だったが、Aさんは信託銀行から購入代金10億円を借入しており、相続税評価額から借金残金分を差引くとマイナスになり、債務控除で実質的にBさんの相続税はゼロとなる。
税務署は相続税評価額が購入代金の30%(4億1400万円)に満たさず著しく不適当と判断した。
国税局の再評価による例外規定で12億7000万円とし、相続税3億円の追徴課税を納税通知した。
Bさんは国税局の納税通知を不服とし裁判所に訴訟を起したが敗訴した。
最高裁判所の判決では、時価が路線価を上回るだけでは著しく不適当ではないとしている。
借入による大幅な評価額圧縮が可能な賃貸不動産など、相続税節税を期待して購入する対策自体が著しく不適当と判断した。
賃貸マンション購入する当時の90代のAさんは、返済メドも立たないような10億円を借金し、借入先の信託銀行の稟議書にも『相続対策の借入依頼。』と記入されていた。
さらに相続後、1棟は1年未満に売却されており、Bさんは相続税を免れた上に、売却金で借入金の一部を返済している可能性がある。
今回の事例は富裕層の潤沢な資金の相続税対策にしか当てはまらないため、一般的な相続には適用されないケースとなる。
《即族税対策と国税局対応の想定フローチャート》
〔1〕賃貸マンション2棟を購入:13億8000万円
〔2〕賃貸マンションの相続税評価額(路線価):3億3000万円
〔3〕被相続人(Aさん)の負債(借入金):10億円
〔4〕相続税遺産(資産-負債):3億3000万円 - 10億円 = ▲6億7000万円
〔5〕相続税額:ゼロ円
〔6〕賃貸マンション1棟売却(想定額):8億円
〔7〕借入金返済:8億円 - 10億円 = ▲2億円(Bさんの借金)
〔8〕国税局の相続税評価額(例外規定):12億7000万円
〔9〕相続税遺産(資産-負債):12億7000万円 - 10億円 = 2億7000万円
〔10〕相続税額など追徴課税:3億円
富裕層の相続税対策では、2012年頃から都心のタワーマンション購入のタワマン節税が活発化した。
タワーマンションは低層階と上層階の販売価格や実勢価格の差が大きく、同じ専有面積でも数百万円~数千万円の差が出る。
ただ、固定資産税・都市計画税や相続税は専有面積で算定するため、上層階の税額が抑えられている状況にあった。
その差を当て込んだのがタワマン節税で、資産を多く保有する富裕層を中心にタワーマンションの多くの住戸が販売された。
そこに待ったを掛けたのが国税局で、相続税評価額は路線価ではなく実勢価格から算定する例外規定を適用するとした。
国税局に政策あれば、富裕層に対策ありが、納税の歴史でもある。
知らんけど。
【俺の経済新聞 2022年6月11日】
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