■目指せ!建築士【建築計画】音の性質

遮音、吸音、音響計画に関する事項。

【ZE-263】

●解説
▼遮音、吸音、音響計画
▽遮音
〔透過損失〕
・壁に投射された音は、一部は吸収され、一部は反射し、一部は透過する。
・投射した音のエネルギーに対する透過した音のエネルギーの割合を透過率という。

透過率r=(透過した音のエネルギー/投射した音のエネルギー)

・投射音に対して、透過した音がどれだけ減衰したかをデシベル〔dB〕で示したものを透過損失〔TL〕という。
・透過損失は、壁体の遮音性を示すのに用いる。
・透過損失は、壁体の構造により影響を受ける。
・同じ構造の壁でも、音の周波数により異なり、高い音の方が、低い音よりも透過損失は大きくなる。

〔壁体の構造と透過損失〕
・壁の遮音性を高めるためには、壁の透過損失を高める事が必要である。
・壁の透過損失は、壁の単位面積あたりの重量の対数に比例するため、コンクリートなどの重い壁が効果的である。
・中空二重壁や二重サッシなどの中空層のあるものは、遮音性を高めるために有効である。
・壁の透過損失は、高音域の方が大きい。

▽吸音
〔吸音率〕
・音のエネルギーが壁などに吸収され、反射しない事を吸音という。
・投射された音のエネルギーに対して、反射せずに吸収された音のエネルギーの割合を吸音率という。

吸音率=〔(吸収音+透過音)/投射音〕

吸音率=〔(投射音-反射音)/投射音〕

・吸音率は、柔らかく多孔質な材料ほど高く、中高音域では吸音効果は大きいが、低音域では吸音されにくい。
・壁などが音を吸収する機構は下記に分類される。

①:多孔質な繊維状の材料に対して、音のエネルギーは繊維の隙間に入るときの摩擦や、繊維を振動させるエネルギーに転換し吸収される。
②:薄い板状の材料に対して、板を振動させるエネルギーに使われ吸収される。

・穴あき板のような材料の穴に入込だ音は、一塊の空気として共鳴するように振動し吸収される。
・特に波長の長い低音域に対しては有効である。

▽音響計画
〔反響〕
・反射音は、直接音よりも長い距離を進んで到達するため、聞く人には時間的なズレが生じて聞こえる。
・反射音と直接音が1/20秒以上ズレると、別の2つの音として聞こえ、これを反響という。
・音の伝播速度は気温15℃で340m/sであるから、直接音と反射音の距離の差が17m以上にならないように、反射面を吸音性に富む仕上として反響を防ぐ必要がある。

音の距離差:340×(1/20)=17

・室の形状や音響の計画をするときは、反射音を集中させたり、反響が生じたりしないように注意する。
・劇場の座席後部などは、壁面を吸音性の物にしたり、壁面の形状を凹凸にする事で音を吸収させたり、拡散させる工夫をする。

〔残響〕
・室内では、音源が止まってからも、周壁などでの反復反射により、完全に音が聞こえなくなるまでに、ある程度の時間がかかる。
・音が止まった時の音の大きさから60dB下がるまでの時間を、その室の残響時間という。
・残響の単位はRT。
・室の用途により、適切な残響時間は異なる。
・話しを主とする教室、講堂などでは、明瞭度を高めて話しを聞きやすくするために、残響時間は短い方がいい。
・音楽を聴くコンサートホールなどでは、豊かな深みのある音を聴くために、残響時間はやや長い方がいい。

▼遮音の概要
▽遮音の特徴
(1)遮音性能
・遮音性能は、透過損失で表す。
・透過損失は、透過した音が投射した音より、どれだけ小さくなったかをdB(デシベル)で表す。
・透過する音の割合を透過率という。

透過率〔r〕=(透過した音のエネルギー/投射した音のエネルギー)

・遮音性能は、透過されない場合である透過損失を用いて表すため、透過率の逆数となる。

透過損失が大きい ⇒ 遮音性能が大きい

(2)建物の遮音
・遮音性能の高い建物を作る方法。

①:壁、天井、床などの施工精度を上げて隙間を無くす。
②:気密サッシなどを用いて、窓、開口部の気密性を上げる。
③:コンクリート、レンガ、鉄など単位体積あたりの重量の大きい材料を用いる。
④:壁厚は、厚い方が良い。
⑤:二重サッシなど多重の壁や窓にする。

▼音響計画の概要
▽音響計画
(1)反響
・音の速度は空気中で340m/secであるから、やや大きな室などでは直接音と反射音の時間的なズレが起こり、両者が別々に聞こえる。
・これを反響といい、ズレが1/20秒、直接音と反射音の道程差が17mを越えた時に発生する。

(2)残響時間
・室内で発生した音は、一部は周囲の壁、天井などに吸収されるが、一部は反射を繰り返し、音が鳴り止んでからもしばらく残る。
・これを残響という。

①:残響時間を左右する条件
・室容積の大きい方が、残響時間が長くなる。
・吸音性のある壁や物が少ない方が、残響時間が長くなる。

②:最適残響時間
・室の用途により、好ましい残響時間は異なる。
・講演など人の話が良く聞き取れるようにする室では、最適残響時間は短く、0.7秒~1秒程度。
・音楽ホールなどは、良い響きを持たせるため、長めの残響時間となり、2秒程度。

(3)音響調整
・反響防止や最適残響時間を得るためには、吸音により反射音を調整する必要がある。
・吸音により室内騒音を軽減する事ができる。
・吸音を計画的に行うには吸音率を算定し、さらに各壁面や床、天井などの吸音力を算出する。

吸音率〔%〕=(吸収された音のエネルギー/投射された音のエネルギー)×100

吸音力〔㎡〕=吸音率×材料の面積

・吸音材を使用した吸音方法は3つに大別できる。

①:グラスウールなど多孔質材料 ⇒ 高音を吸収。
②:ベニヤ板など板材料 ⇒ 中低音を吸収。
③:有孔ボードなど孔あき板 ⇒ 孔の大きさや数で特定の高さの音を吸収。

《音に関する単位》
◆吸音率の単位:%〔パーセント〕。
◆吸音力の単位:㎡〔メートルセービン〕。

【用語】
・透過損失(とうかそんしつ)・・・壁や床などの遮音性能を表す数値で、壁などの材料層への入射音と、それによる材料層から中に入った音の大きさの差の音圧レベル差のこと。

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