■熱海土砂災害は自然災害か人災か【その5】
個人所有の土地が起因して、その周辺に土砂災害により甚大な被害を発生させた場合の責任追及はできるのか。
所有者は土地に対して“所有者責任”を有しており、地盤などの異変があれば補修などの対応をしなければなりません。
例えば、建物に関しては不動産の法律で“所有者責任”が定義されており、民法の第717条【土地の工作物等の占有者および所有者の責任】では、土地の上にある建物等による他人に損害を与えた場合は所有者に過失が無くとも責任を負う。
法律上の“所有者責任”は無過失責任を負うとなっている。
この法律から考えると、土地により他人に損害を与えた場合も同等の解釈ができ、個人所有の土地の盛土により土砂災害を引き起こしたなら、たとえ災害発生の可能性を知らなくても損害賠償を負う可能性がある。
今回、盛土のあった土地所有者は麦島善光氏であるから、無過失であっても土砂災害の責任を負う。
ただし、盛土を実施した所有者から差押えた熱海市から取得しているため、この時間軸を考慮すると買主の麦島善光氏は盛土や土砂の不法投棄を把握していた売主の熱海市に対しても重要告知義務違反や契約不適合責任(瑕疵担保責任)などにより損害賠償請求を追及する事は可能である。
要は不動産売買に当てはめると、売主が熱海市、買主が麦島善光氏になり、売主責任が発生してくる。
売主の熱海市は土地に対する不法造成工事や、前所有者の新幹線ビルディングの数々の不法や不適切や行為を知っていた上で、買主の麦島善光氏に物件を引渡した。
万が一、買主の麦島善光氏が、これらすべての不都合な事実の説明を受けて、納得した上で取得しているなら、当然に責任の所在は麦島善光氏にある。
ただ、その可能性はかなり低いと思われる。
結局、法律上の“所有者責任”を追及したとしても、現所有者の麦島善光氏の責任が回りまわって熱海市に行く事になり、行政による不適合や怠慢な業務により引き起こされ人災の犠牲となったのは熱海市民とも言える。
被災直後に静岡県知事が現地視察後に、土砂災害は『原因は水による災害。』と断言しており、専門家の調査などの意見を待たずに最初から盛土による崩落の災害ではなく、集中豪雨により崩れるはずのない地盤が水により崩れ土砂災害になったと説明したのは、このような事情を最初から把握していたのかと合点がいく。
環境や自然を軽視し利益優先した行政や企業は、いずれ報いがある事を知らしめた災害でもある。
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