
■木造集合住宅:古民家を磨く、カールベンクス氏【その4】
松之山街道を離れ、車で10分ほど山間に分け入る。
24年前の1993年に居を構えた新潟県十日町市竹所は廃村寸前の限界集落だった。
崩れそうな古民家を買おうと決心したものの心配はあった。
外国人のカールベンクス氏が購入できるかどうかです。
そして、集落の人が受入れてくれるかどうか。
不動産の取得は問題ありませんでした。
最初は不思議がっていた集落の人達も、心を開けばすぐに打ち解けた。
集落には同じ様な古い古民家が残っていて“竹所プロジェクト”と名付け、次々と再生していきました。
自宅の次に完成したのが壁を黄色に塗ったイエローハウス。
ベンガラの家、レンガの家と造っていった。
牛小屋もキレイにし、2016年は古民家を改修したシェアハウスも完成した。
当初、竹所には9軒しかありませんでしたが、その後に減ったが新しく建てた8軒で今では13軒。
集落の人口も20人を超えた。
これまで50軒以上の古民家を再生。
古民家とつきあっていると、日本の職人技に驚かされる。
屋根裏で雪の重さに耐える梁は太く曲がりくねっているのに、柱と寸分の狂いもなく組み合わさっている。
継手には釘を使わず、独特の細工ではめ込んでいる。
古民家を再生するという事は、こうした手仕事の技を次世代に伝えるという意味がある。
ただ、最近は担い手が減っている。
茅葺の職人はほとんどいないし、大工や左官も若手が少ない。
古民家が無くなれば、こうした技術も廃れます。
そして一度失われた技術は簡単には取り戻せません。
古民家再生や町並み整備の活動が評価され、2017年1月に総務省の“ふるさとづくり大賞”を受けた。
新潟市に豪農の屋敷を保存した木造の博物館がある。
日本画家の東山魁夷がこう書き残している。
『古い家のない町は、思い出のない人間と同じだ。』
人が住み続けた家には思い出が詰まっていて、それが積み重なって街ができる。
無味乾燥な新築が並ぶ街は記憶に残らない。
竹所には自然も人も古くからの住まいも揃っている。
人は限界集落と言いますが、こんな贅沢な場所は他にありません。
【日本経済新聞 2017年11月2日】
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