
■木造集合住宅:古民家を磨く、カールベンクス氏【その1】
ドイツ人建築デザイナーのカールベンクス氏が新潟県の山中に移り住み、古民家の再生を始めて20年以上になる。
冬は4mを超える雪に閉ざされる有数の豪雪地。
そこで見つけた廃屋は磨けば光る原石に見えた。
以来、50軒以上の古民家が彼の手で息を吹き返した。
事務所がある建物は元々“田村屋”という旅館。
新潟の塩沢と高田を結ぶ松之山街道に面し、1904年の明治37年に開業した木造の建物。
近年は客足が減り、所有者は建物を解体しようと考えていた。
2009年、カールベンクス氏が土地建物を手に入れた。
100年を超える太い柱や梁など構造を支える部分はそのまま残し、壁は断熱材を入れて薄いピンクに塗替え、古い民家やお寺の建材を使いながら内装も変えた。
旅館だった昔のように、人が集まり交流する空間になった。
建物は解体されてしまえば死んでしまいます。
建物が消えれば何年もかかって創られた街道沿いの風景も消えます。
今は街道沿いの建物の外壁を改修するプロジェクトを進めていて、8軒が終わった。
少しずつ昔の風景が戻ってきた。
日本では古いものには価値がないと考えがちです。
逆にドイツでは古いほど価値がある。
古い建物を壊す事を制限する法律があり、戦争で壊されてもそのまま復旧しました。
住みにくい、寒い、暗いと見捨てられた日本の古民家は磨けば光る宝石の原石です。
日本では宝石を捨て、砂利を拾ってきたのです。
日本の木造家屋への思いを渋いという言葉にこめる。
そこには積み重ねた職人の確かな技と木の手触りがある。
“わび”“さび”と同じでドイツ語で訳すのは難しい。
奥ゆかしく控えめ。
全体を見れば調和が取れ、乱れがない。
構造や空間に落ち着いた美しさがある。
これがカールベンクス氏にとって渋いです。
天井の梁は雪の重さに耐えて、地震にもびくともしなかったケヤキです。
昔の職人が1本1本削った跡がまだ残っている。
ドイツの建築家ブルーノタウトは、日本の職人は芸術家だと言っている。
昔の職人は経験で身に付けた技術で素晴らしい仕事をしていたのです。
【日本経済新聞 2017年10月30日】
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