地震現象の全貌は、プレートテクトニクス説で全てが説明できるわけではなく、宏観異常現象にも重要な手がかりがある。
宏観異常現象の1つに、地震の前に起こる「地電流の変化」がある。
アテネ大学で開発されたVAN法という地震予知技術がある。地電流変化を検知して地震を予知するというものだ。ギリシャでは、VAN法で地震を予知し、住民の避難に成功したという実績があるという。
地電流変化は、地震の予兆として二次的に発生する結果だと考えられていたのだが、最近の研究ではどうやらそうではなく、地電流変化が地震を誘発する原因になっているということがわかってきた。
これについて、以下の講演から引用する。
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title: 地震予知研究の歴史と現状
author: 上田 誠也(東京大学 名誉教授)
publication: 学士会会報(2007年7月 No.865)
【抜粋】
「電磁気現象は単に前兆だけではなく、それ自体が地震を誘発しないのかということです。もしそうだとしたら、それは地震制御につながるかもしれません。昔の日本人はナマズを料亭にまねいてご馳走や美酒を振舞って暴れないようにするという賢明な? ことをやっていた。ロシア人も、そのようなことを考えました。その当時はソ連領だったキルギスの天山山脈で2・8キロアンペアもの電流を地下に流し込む実験をしたのです。日本では100アンペアも地中に電流を流せば文句が出るでしょう。幸い、人跡まれの地でしたからできたのかもしれません。百十何回も実験を重ねたのでかなり信用できるのですが、翌々日くらいから地震が増え、数日のうちに収まる。そして流した電流のエネルギーよりも、地震のエネルギーのほうが1OO万倍も大きかった。ですから、電流が地震を起こしたのではなくて、電流が刺激して溜まったストレスが出るような仕掛けがあるらしいという結論になりました。そうなると、我が国でも東京大地震あるいは東海大地震の前に、ナマズを手なずける方法がないかと期待できるわけです。予知は実験ができないが、制御なら実験可能です。実験物理学者たちは、M8の地震をM5の地震に分けて起させるとかの実験に乗り出すかもしれません。もしかすると、制御のほうが早いかもしれませんね。」
日本大気電気学会でも、ロシアでの最新の研究について同様の報告があるので引用する。
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title: IWSE-AS国際会議に出席して
author: 早川正士(電気通信大学)
publication: 大気電気学会誌(2011年 Vol.5 No.1 P.14)
【抜粋】
「ロシアでのMHD(2kA)電磁パルスによって地震を誘発する実験である。地殻がcritical(ないし super-critical)段階になっていれば、いかなる小さな効果でも地震を引き起こすと考えられるが、どうもそうではなく、いつMHDパルスを打ってもすぐに地震が誘起されるとの事。」
地電流の変化は、太陽活動によってももたらされる。
太陽風が地球にもたらす磁気嵐によって、導体である地殻に電流が誘導されるのだ。
ということは、大規模な太陽フレアが発生した後に地球で地震が発生する可能性がある。
以下、太陽活動と地震の関係について報告されている資料を紹介する。
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●title: Whether solar flares can trigger earthquakes?
author: Jain, R.
publication: American Geophysical Union, Spring Meeting 2007, abstract #IN33A-03
資料へのリンク
【概要】
1991年から2007年にかけて調査されたマグニチュード4以上の地震(682件)について太陽フレアとの関連性について検討されている。これによると、大規模なフレアの後に強い地震が発生すると言い切るには十分ではないが、50件の地震については、太陽フレアの発生位置との関係について興味深いことがわかったとしている。
フレアが太陽風となって地球の磁気圏に到達すると、環状電流が発生し、それが断層帯のプレートに急激な変化を与えるモデルを提唱している。
フレアの発生位置と地球への影響度の関係については、以下にも記述がある。
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●title: 太陽の科学
author: 柴田一成
publication: NHK BOOKS
【抜粋】
P.116
(太陽の)東側(地球の北半球から見て太陽の左側)で放出されたプラズマの流れは、太陽の自転により磁力線が曲がるため、地球の方向には来ないのです。その代わりに真ん中で起きると私たちにとって危ないわけです。
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人工地震であっても、太陽風が誘起する地震であっても、原因が地電流なのであれば、防御することができるかもしれない。
地電流を監視していて、もし変化があった場合、その変化を打ち消すような「逆位相電流」を流してやれば、トータルで地電流変化は現れないことになり、ナマズを手なずけることができそうだ。たかだか数千アンペアの制御でそれができるのであれば、実験段階の試みであれば、一企業の資本で可能なのでは?