耳は音の波形をちゃんと識別できるのか? | toshiのブログ

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日頃、科学技術について調査していることや趣味でやっていることなどを紹介していきます。

耳のしくみはこんな風になっています。
toshiのブログ-鼓室階
wikipediaより引用)

耳の鼓室階というところで、音が脳へ続く神経に伝達されているそうです。

どんな波形の音波でも、いろんな周波数の正弦波に分解できることが数学で知られています。

どうやら、鼓室階でも、音を周波数別に分解し神経に伝達しているらしいのです。
たとえばある波形Yが15個の周波数成分(Y1,Y2,・・・Y15)から成っていたとすると、鼓室階でY1,Y2,・・・Y15に相当する信号に分解して脳に伝えているということです。

ここで、ひとつ疑問が生じました。

Y1,Y2,・・・Y15は、それぞれの「振幅」と「位相」を有しています。
脳は、Y1~Y15の「振幅」・「位相」の両方を認識しているのでしょうか。あるいは「振幅」だけを知覚しているのでしょうか。そのことを確認するため、ある実験を行ってみました。

●音源「00」
矩形波を分解して得られる成分のうち、主成分15個を使って波形を「再合成」しました。
音のファイルが、コレ(音源「00」)です。

もともと矩形波だった成分を、再合成すれば、当然ながら矩形波に近い波形が現れています。
下の図は波形(上段)とスペクトル振幅(下段)です。
左・右 同じ波形(つまりモノラル)を割り当てています。
toshiのブログ-フーリエ00

●音源「11」
次に、主成分15個の振幅はそのままで、各成分の相対的な位相をバラバラにずらせて「再合成」してみました。
音のファイルが、コレ(音源「11」)です。

スペクトル強度は音源「00」と同じにしてありますが、もとの位相情報を完全に失っていますので、合成すればぐちゃぐちゃな波形になってしまいます。
toshiのブログ-フーリエ11

でも聴いてみてどうですか? 私の耳では、音源「00」と区別がつかないのです。

ここまでの実験で、スペクトル強度に違いが無い場合は、「モノラル」で聴くと波形の違いが聞き分けられないという結果になりました。


●音源「01」
こんどは、「ステレオ」でやってみました。左耳に、音源「00」のチャンネルを、右耳に音源「11」のチャンネルを割り当ててみました。
このファイル(音源「01」)です。

各チャンネルの波形は、こんなかんじです。
toshiのブログ-フーリエ01

これを聴いてみると、音源「00」や「11」とは違って聞こえます。空間的な拡がりが、違うのです。(ヘッドホンで聴くとよくわかります)

ためしに、「左耳だけ」とか「右耳だけ」で聴くとそれぞれ同じ音に聞こえます。
でも、左右同時に聴くと、やはり音源「00」・「11」とは違います。

どうやら、左右の位相情報に違いがあることは、識別できるようですね。

左右の位相差は、「音像定位」を決める重要なファクターですが、スペクトルの各成分レベルで位相差がバラバラになってしまった音は、定位が決まらずなんか違和感があります。
いままでに無かった刺激を脳が受け取って新たな学習をしようとしているのでしょうか?

聴覚のメカニズムって奥が深そうです。