アンテナから出る電磁界はどのように放射され、アンテナから離れていくのでしょうか。
これを知るには、アンテナ周辺の電磁界の分布や伝搬のしかたをきちんと計算できる準備をしておく必要があります。
まず、電磁界の式が必要で、それに基づいて分布や伝搬の特徴を解析していきます。
電磁波工学の書物で、電磁界の近傍解をよく見かけます。でも、それらを導く過程が省略してあるので、どんな近似が含まれているのかわかりません。つまり、誤差を無視できる適用範囲がどれくらいなのか不明なのです。
ここはひとつ頑張らねばと思い、まず「電気ダイポール」が輻射する電磁界の式を導いてみました。
このノートにまとめました
近傍解は、カシミール力の計算や、エバネッセント光の解析など極微の世界にも適用されているものです。
ノートには、導出過程で近似を適用した箇所(複数)を明記しています。基本的な近似はダイポールのサイズが、観測者までの距離に比べて無視できるとしたことと、波長よりもずっと短いとしたことです。
ダイポールのサイズが無視できない問題を解く場合は、近似解を用いると誤差が大きくなります。
この場合、近似無しの気の遠くなるような解を導くのも一法ですが、もっと楽な方法があります。
ダイポールを微少サイズに分割してそれぞれの近似解の和を得るとよいのです。
たとえてみれば、地図の測量で、海岸線の長さを測るのに曲線を直線で近似しますが、なるべく短い直線の集合にするほど誤差が小さくなるのと同様です。