今回のお話を読む前に、先に創起さんの短編『謎の特捜司書 Jパーソン』を読んでおく事を推奨します
ある朝、ジャックが爽やかな好人物に変貌してしまうというおぞましい騒動は、ジャックとユーディ、そしてMX-A1改めJP/Jパーソンが、ユーノのプロテクトナックルによる拳骨と3時間に及ぶ説教をくらう事で終結した。
そしてJアークに戻ったジャック&ユーディ夫妻をいの一番に出迎えたのは…
「ば~~~~っかじゃねえの!?」
友人であるガーニィの、一片の情けも容赦も身も蓋も無い罵倒だった…
「それが騒動を解決しようとした功労者に対する言葉!?」
「そうだな。ついでに言うと、その騒動が起きたそもそもの元凶はお前だったよなあ!?」
「ひはひっ!ひはひよわーにぃふんっ!?」
今回の騒動は、ユーディがジャックのモーニングコーヒーに、クリープの代用品に『ケミカルXディバイダー』をブチ込んだ事が発端である。
そんな彼女の反論に、ガーニィはすかさずユーディの頬を両手で掴み、縦に2回、横に2回、最後は円を描くように引っ張ってから、パッと手を放す。
「ふん…」
「うぅ…酷いよ!か弱い女の子のほっぺに、縦縦横横丸描いてチョンするなんて!?」
「お前の何処が『か弱い』『女の子』だあ!?」
更に食い下がるユーディの言葉に、米神に血管をヒクつかせながらも、ツッコミを入れずにはいられないガーニィ。
「JP君はそう言ってくれたもん!」
「自分の旦那のコピーロボットが言った事を真に受けて、舞い上がってんじゃねーぞコラ!?」
「…ちょっと待ちたまえガーニィ君。君はMX-A1…今はJPとかJパーソンとか名乗っているようだが…彼が無限書庫に居る事を知っていたのかね?」
それまで毎度お馴染みの喧嘩と静観を決め込んでいたジャックが、ふとガーニィの口ぶりに疑問を呈する。
「知っているも何も、アイツのメンテナンスは俺が定期的にやっているんだぞ?」
「確かに、君にはオペレーションアームがあるが…私は全く聞いていないのだが?」
「当然だ。司書長に口止めされていたからな」
「なるほどな…」
司書時代からユーノに心酔し、今も変わらぬ忠誠心を誓うガーニィなら無理もない、と納得をせざるを得ないジャック。
「しかしまあ、自分のコピーロボットと嫁を取り合う旦那も旦那だが、それで少女漫画のヒロイン気取りになって舞い上がる嫁も嫁だなあ?」
「ガーニィ君…いい加減にしないと、私、本気で怒るよ…?」
怒気の成分が濃くなり始めたユーディの声に、ジャックも、それまで一言も発していなかったゴトー達も『これはヤバい!』と気付く。
…気付いていないのは只一人…
「それで自分の息子に拳骨くらってお説教とか、どっちが子供か分からないでちゅね~?」
「………(大激怒)」
赤ちゃん言葉まで使って煽るガーニィに、遂にユーディの中で何かがプツリと切れた。
ガシッ!
「…何だ?」
「疾きこと風の如く――っ!」
ギュルンギュルンギュルン
「おわ~っ!?」
ガーニィをダブルアームの体勢に捕らえると、大回転を加えるユーディ。
「あれは風林火山!?」
「知っているのか、オリジナル!?」
「ハワイの伝説的ベテラン超人レスラーが使った48の殺人技の一つだ。ダブルアーム、ローリングクレイドル、パイルドライバー、ロメロスペシャルという基礎技を集合させた、まさに本物の殺人技…」
「無限書庫の最深部に跋扈する超強力モンスターを、パンチとキックだけで薙ぎ倒せる彼女がそんな事したら―――」
ゴトーとコトーが男塾的な解説をしている間に、ローリングクレイドルとパイルドライバーを経て、ロメロスペシャルを決められるガーニィ。
「48の殺人技No.3“風林火山”~~~っ!!」
「ウギャア~ッ!?」
ブチブチブチッ!!
バキバキバキィ!!!
「こ、この嫌な音は…」
「うむ、ガーニィ君の全身の筋肉が断裂し、骨がバラバラに砕ける音だな」
「冷静に解説してないで止めろよ!アンタの嫁だろ!?」
「大丈夫だ。彼はこの時空でなら、ギャグ補正があるから死にはしない!」ドヤァ
「ドヤ顔でメタ発言してんじゃねーよ!?」
「アルク!ファス!担架だ、担架~!!」
それから暫く後、Jアーク内の医務室にて…
「ユーディの阿呆…相変わらず無茶苦茶しやがって…」
「君が調子に乗って煽るからだろうが…少しはデリカシーというものを持ったらどうかね?」
全身包帯でグルグル巻きの、ミイラ男のような姿でベッドに寝かされ、ユーディへの怒りを燻ぶらせるガーニィを、ジャックが正論で諌めるが…
「自分のコピーロボットに、同じ事を言われた奴が言っても、説得力なんて全然ねーよ」
即座にブーメランで自分に戻ってきた…
「私のは、愛情の形の一つとしてだね…」
「それでコピーロボットに嫁さん寝取られかけてりゃ世話無いなあ~?」
名調子は止まらない、とばかりに、ヒッヒッヒッと聞いている相手の神経を逆撫でするように笑うガーニィ。
流石にこれには、普段あまり感情を露わにしないジャックもムカついたが…
「………まあ、それだけ口が達者なら、命に別状はないだろう…」
それだけ言うと、ジャックは医務室を後にした…
そして、その日の夜。
「やれやれ、やっとマトモに立って歩けるようになったぜ」
「いや、昼に全身の筋肉が断裂して骨がバラバラになってたのが、何で夜にはもう立って歩けるまでに回復してるんだよ…」
ミイラ男状態から復活したガーニィを前に、コトーが至極真っ当なツッコミを入れる。
「元・無限書庫司書を舐めるな。これぐらいの回復力が無きゃ、開拓期の無限書庫ラッシュは切り抜けられなかったんだよ」
「………そうなのか、オリジナル?」
「確かに最深部の探索は、ぶっちゃけ武装隊の仕事が生温く思えるぐらい、命が幾つあっても足りなかったけど…」
コトーの疑問に、一時は無限書庫司書だった事もあるゴトーが答えるが…
「それでも、ガーニィさんの回復力は異常だ…」
「アンタ、本当に右腕以外は生身なのか!?」
ガーニィが自分達と違い、万能義手である右腕以外は全く改造も強化もされていない、純粋な生身である事が信じられない、という感想を率直にぶつける2人。
「俺はしぶといんだよ」
「いや、しぶといで済まされても…」
「しつこいぞ。納得出来なきゃギャグ補正だからって事で無理にでも納得しろ」
「メタ発言持ち出したー!?」
いつもの調子で、ヤマもオチも意味も無い問答を繰り広げる、むさ苦しい野郎3人。
そこへ、一服の清涼剤達がやってくる。
「皆さん、お夕飯の支度が出来ましたよー!」
「ユーディさんも、お腹を空かせて待ってますよ~」
アルクとファスの参入により、Jアーク内における最大の懸念事項であった『家事』に関する問題は解消されていた。
「…これで、後は『アレ』さえ無かったらなあ…」
「ああ…ウハウハの展開だったのになあ…」
「見ているこっちは楽しいけどな♪」
「「鬼かアンタは!?」」
そして深夜、ジャックの艦内ラボにて…
「…さて、ジャックはユーディと風呂でプレイ中…この分なら、戻ってくるまで相当の時間がかかるはず…」
コントロールアームでロックを解除し、ラボに侵入したガーニィが、説明的な台詞を呟く。
「あれからラボに籠りっきりで、夕飯にも遅れて来た…アイツが何かを企んでいるのは明白…っと」
暗いラボ内で暫く目を凝らしていたガーニィは、あっさりと目的の物を発見した。
それは台の上に寝かされている、未だ外装を取り付けられていない、内部が剥き出しの状態の人型ロボット。
「こいつか…」
ピピピピピ…
義手をオペレーションアームに換装し、未完成の人型ロボットに端末を接続するガーニィ。
「………なるほど、自省回路を内蔵した人型ロボット…要するにメタルダーかよ。で、俺の人格を元にしたAIを搭載している…と」
ロボットの内部構造を解析し終えたガーニィは、ジャックが何の目的でこれを作ったのか、おおよその見当を付けていた。
「手の込んだ嫌がらせだなあ…そもそも、俺がモデルのロボットに『敵を愛し、許す心』なんて似合わないだろ…」
そう呟くと、ガーニィは義手を元に戻し、足元に真紅の魔法陣を展開し、探索魔法を発動させる。
「………確か、コトーが大破したら搭載する予定で作っていたよなあ…ビンゴ!」
ラボ内を探索魔法で調べたガーニィは、“それ”が存在する棚に視線をやり、邪悪極まりない笑みを浮かべるのだった…
それからまたまた数時間後…
「やれやれ、ユーディの反応が可愛くてついつい可愛がり過ぎてしまったよ…朝までには完成させなくては…」
妙に艶々した表情で、ジャックは件の人型ロボットの仕上げにかかっていた。
「ガーニィ君の人格をモデルにし、自省回路を内蔵した超人機…彼も、私がMX-A1に対して抱いた、煩わしさを思う存分味わうがいい…!」
そんな理由で超人機を作るなと言いたくもなるが、ジャックだから仕方がない。
「よし、これで完成だ!………はて、面妖な。私は超人機を作っていたはずなのだが、ノリと勢いに任せて作業をしていたら、赤と青のハーフボディではなく、全身が真っ黒な人造人間になってしまった…これは一体?」
完成したロボットを前に、首を傾げるジャック。
その時だった。
俺の名は 俺の名は ハサイダー
潰せ! 殺せ! 破砕せよ!!
胸の 回路に指令が走る
俺の 俺の使命 俺の宿命
ヴィヴィオを破砕せよ! 破砕せよ!!
俺の名は 俺の名は ハサイダー
潰せ! 殺せ! 破砕せよ!!
黒い 身体に光が走る
俺の 俺の後輩 俺の同僚
ヴィヴィオを破砕せよ! 破砕せよ!!
俺の名は 俺の名は ハサイダー
潰せ! 殺せ! 破砕せよ!!
右手の 鋏に炎が走る
俺の 俺の標的 俺の宿敵
ヴィヴィオを破砕せよ! 破砕せよ!!
何処からともなく流れてくる、重厚なテーマソング(替え歌)と共に、完成したロボット…ハサイダーが起動し、立ち上がる。
「何故だ?メタルダーを作るはずが、ハカイダーになってしまった…まさか!?」
ハッと例の棚に視線をやるジャック。
「無い!?コトー君が大破したら、G4システムやゼロシステムと一緒にパーフェクトコトージバンに搭載する予定だった、悪魔回路が無い…!?」
「ハッハッハッハッハッ!」
頭上から聞こえてくる哄笑に、ジャックは珍しく狼狽えた様子でそちらを見やる。
「すり替えておいたのさ!!」
「………君、いつからそこに居たのかね…?」
天井の隅にへばりつき、台詞の元ネタ以上に某蜘蛛男っぽい感じになっているガーニィを見つけたジャックは、呆れの混じった表情で脱力気味に問いかける。
「いーんだよ、こまけぇこたぁ…よっ、と」
「細かくないと思うが…じゃあ、いつから私のやろうとしている事に気付いたのかね?」
「お前が何も言い返さずに医務室を後にした時から、だな…あのままグッと怒りの矛先を収めるとか、お前がそんな殊勝な奴のはずないだろ?」
「君はそうやって、時々、私の心を読むような真似をする…ガーニィ君、恐ろしい子!」
天井から着地したガーニィの答えに、戦慄しながらもアウトサイダーのネタを交えて返すジャック。
…そんなやり取りをする2人は、起動したハサイダーの存在をすっかり忘れてしまっていた…
『ウゥ…ウゥゥゥゥゥ…!』
唸り声と共に、紅い両目を爛々と光らせ、ゆっくりと2人の方を向くハサイダー。
「…おい、何かヤバそうだぞ?さっさと機能停止させた方がいいんじゃないか…?」
「うむ、それがだね…君が鬱陶しさのあまりコントロールアームで機能停止させたり出来ないよう、複雑な手順が必要な仕組みになっていて…」
「マジで俺への嫌がらせ専用のロボットかよ!?」
「しかし私は謝らない!…そして君が自省回路を悪魔回路にすり替えたせいで、君の短気で執念深くて性根の捻じ曲がった人格をモデルにしたAIが、更に凶悪化してしまっているという…」
「チックショー、ムカつく言われようだけど否定出来ねえ…それって、超ヤバくないか?」
「………はっきし言って、『超』面白カッコい…もとい、ヤバい!」
などと、何処か緊迫感の無いやり取りをしている間に…
『ウオォォォ…!!』
ハサイダーは右手の鋏を振り上げ、2人に迫っていった―――
翌朝。
「…で、そのロボット…ハサイダーは、2人をボコボコにしてJアークから脱走した…と」
呆れた様子で溜息交じりに言うゴトーの目の前には、2体に増えた、医務室のベッドに横たわるミイラ男。
「何だろう…ジャックさんは変態的な天才科学者、ガーニィさんは古参の元・無限書庫司書で、俺達の中では頭の良さツートップなのに…」
何だかなあ、と言いたげな表情のコトーが後に続く。
ちなみに鬼畜外道っぷりもツートップなのは、今更言うまでもない。
「時々、私より馬鹿なんじゃない?って時があるよねー…」
「「「「「「いやいや、それはない」」」」」」
「え、アルクとファスまで揃って否定するの!?」
自分以外の6人全員から口を揃えて否定され、涙目になるユーディだった…
次回の小ネタに続く!
あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
「私は、メタルダーネタを書いていたと思ったら、いつのまにかその前日談SSを書いていた」
な…何を言っているのか以下略(ヲイ
ある朝、ジャックが爽やかな好人物に変貌してしまうというおぞましい騒動は、ジャックとユーディ、そしてMX-A1改めJP/Jパーソンが、ユーノのプロテクトナックルによる拳骨と3時間に及ぶ説教をくらう事で終結した。
そしてJアークに戻ったジャック&ユーディ夫妻をいの一番に出迎えたのは…
「ば~~~~っかじゃねえの!?」
友人であるガーニィの、一片の情けも容赦も身も蓋も無い罵倒だった…
「それが騒動を解決しようとした功労者に対する言葉!?」
「そうだな。ついでに言うと、その騒動が起きたそもそもの元凶はお前だったよなあ!?」
「ひはひっ!ひはひよわーにぃふんっ!?」
今回の騒動は、ユーディがジャックのモーニングコーヒーに、クリープの代用品に『ケミカルXディバイダー』をブチ込んだ事が発端である。
そんな彼女の反論に、ガーニィはすかさずユーディの頬を両手で掴み、縦に2回、横に2回、最後は円を描くように引っ張ってから、パッと手を放す。
「ふん…」
「うぅ…酷いよ!か弱い女の子のほっぺに、縦縦横横丸描いてチョンするなんて!?」
「お前の何処が『か弱い』『女の子』だあ!?」
更に食い下がるユーディの言葉に、米神に血管をヒクつかせながらも、ツッコミを入れずにはいられないガーニィ。
「JP君はそう言ってくれたもん!」
「自分の旦那のコピーロボットが言った事を真に受けて、舞い上がってんじゃねーぞコラ!?」
「…ちょっと待ちたまえガーニィ君。君はMX-A1…今はJPとかJパーソンとか名乗っているようだが…彼が無限書庫に居る事を知っていたのかね?」
それまで毎度お馴染みの喧嘩と静観を決め込んでいたジャックが、ふとガーニィの口ぶりに疑問を呈する。
「知っているも何も、アイツのメンテナンスは俺が定期的にやっているんだぞ?」
「確かに、君にはオペレーションアームがあるが…私は全く聞いていないのだが?」
「当然だ。司書長に口止めされていたからな」
「なるほどな…」
司書時代からユーノに心酔し、今も変わらぬ忠誠心を誓うガーニィなら無理もない、と納得をせざるを得ないジャック。
「しかしまあ、自分のコピーロボットと嫁を取り合う旦那も旦那だが、それで少女漫画のヒロイン気取りになって舞い上がる嫁も嫁だなあ?」
「ガーニィ君…いい加減にしないと、私、本気で怒るよ…?」
怒気の成分が濃くなり始めたユーディの声に、ジャックも、それまで一言も発していなかったゴトー達も『これはヤバい!』と気付く。
…気付いていないのは只一人…
「それで自分の息子に拳骨くらってお説教とか、どっちが子供か分からないでちゅね~?」
「………(大激怒)」
赤ちゃん言葉まで使って煽るガーニィに、遂にユーディの中で何かがプツリと切れた。
ガシッ!
「…何だ?」
「疾きこと風の如く――っ!」
ギュルンギュルンギュルン
「おわ~っ!?」
ガーニィをダブルアームの体勢に捕らえると、大回転を加えるユーディ。
「あれは風林火山!?」
「知っているのか、オリジナル!?」
「ハワイの伝説的ベテラン超人レスラーが使った48の殺人技の一つだ。ダブルアーム、ローリングクレイドル、パイルドライバー、ロメロスペシャルという基礎技を集合させた、まさに本物の殺人技…」
「無限書庫の最深部に跋扈する超強力モンスターを、パンチとキックだけで薙ぎ倒せる彼女がそんな事したら―――」
ゴトーとコトーが男塾的な解説をしている間に、ローリングクレイドルとパイルドライバーを経て、ロメロスペシャルを決められるガーニィ。
「48の殺人技No.3“風林火山”~~~っ!!」
「ウギャア~ッ!?」
ブチブチブチッ!!
バキバキバキィ!!!
「こ、この嫌な音は…」
「うむ、ガーニィ君の全身の筋肉が断裂し、骨がバラバラに砕ける音だな」
「冷静に解説してないで止めろよ!アンタの嫁だろ!?」
「大丈夫だ。彼はこの時空でなら、ギャグ補正があるから死にはしない!」ドヤァ
「ドヤ顔でメタ発言してんじゃねーよ!?」
「アルク!ファス!担架だ、担架~!!」
それから暫く後、Jアーク内の医務室にて…
「ユーディの阿呆…相変わらず無茶苦茶しやがって…」
「君が調子に乗って煽るからだろうが…少しはデリカシーというものを持ったらどうかね?」
全身包帯でグルグル巻きの、ミイラ男のような姿でベッドに寝かされ、ユーディへの怒りを燻ぶらせるガーニィを、ジャックが正論で諌めるが…
「自分のコピーロボットに、同じ事を言われた奴が言っても、説得力なんて全然ねーよ」
即座にブーメランで自分に戻ってきた…
「私のは、愛情の形の一つとしてだね…」
「それでコピーロボットに嫁さん寝取られかけてりゃ世話無いなあ~?」
名調子は止まらない、とばかりに、ヒッヒッヒッと聞いている相手の神経を逆撫でするように笑うガーニィ。
流石にこれには、普段あまり感情を露わにしないジャックもムカついたが…
「………まあ、それだけ口が達者なら、命に別状はないだろう…」
それだけ言うと、ジャックは医務室を後にした…
そして、その日の夜。
「やれやれ、やっとマトモに立って歩けるようになったぜ」
「いや、昼に全身の筋肉が断裂して骨がバラバラになってたのが、何で夜にはもう立って歩けるまでに回復してるんだよ…」
ミイラ男状態から復活したガーニィを前に、コトーが至極真っ当なツッコミを入れる。
「元・無限書庫司書を舐めるな。これぐらいの回復力が無きゃ、開拓期の無限書庫ラッシュは切り抜けられなかったんだよ」
「………そうなのか、オリジナル?」
「確かに最深部の探索は、ぶっちゃけ武装隊の仕事が生温く思えるぐらい、命が幾つあっても足りなかったけど…」
コトーの疑問に、一時は無限書庫司書だった事もあるゴトーが答えるが…
「それでも、ガーニィさんの回復力は異常だ…」
「アンタ、本当に右腕以外は生身なのか!?」
ガーニィが自分達と違い、万能義手である右腕以外は全く改造も強化もされていない、純粋な生身である事が信じられない、という感想を率直にぶつける2人。
「俺はしぶといんだよ」
「いや、しぶといで済まされても…」
「しつこいぞ。納得出来なきゃギャグ補正だからって事で無理にでも納得しろ」
「メタ発言持ち出したー!?」
いつもの調子で、ヤマもオチも意味も無い問答を繰り広げる、むさ苦しい野郎3人。
そこへ、一服の清涼剤達がやってくる。
「皆さん、お夕飯の支度が出来ましたよー!」
「ユーディさんも、お腹を空かせて待ってますよ~」
アルクとファスの参入により、Jアーク内における最大の懸念事項であった『家事』に関する問題は解消されていた。
「…これで、後は『アレ』さえ無かったらなあ…」
「ああ…ウハウハの展開だったのになあ…」
「見ているこっちは楽しいけどな♪」
「「鬼かアンタは!?」」
そして深夜、ジャックの艦内ラボにて…
「…さて、ジャックはユーディと風呂でプレイ中…この分なら、戻ってくるまで相当の時間がかかるはず…」
コントロールアームでロックを解除し、ラボに侵入したガーニィが、説明的な台詞を呟く。
「あれからラボに籠りっきりで、夕飯にも遅れて来た…アイツが何かを企んでいるのは明白…っと」
暗いラボ内で暫く目を凝らしていたガーニィは、あっさりと目的の物を発見した。
それは台の上に寝かされている、未だ外装を取り付けられていない、内部が剥き出しの状態の人型ロボット。
「こいつか…」
ピピピピピ…
義手をオペレーションアームに換装し、未完成の人型ロボットに端末を接続するガーニィ。
「………なるほど、自省回路を内蔵した人型ロボット…要するにメタルダーかよ。で、俺の人格を元にしたAIを搭載している…と」
ロボットの内部構造を解析し終えたガーニィは、ジャックが何の目的でこれを作ったのか、おおよその見当を付けていた。
「手の込んだ嫌がらせだなあ…そもそも、俺がモデルのロボットに『敵を愛し、許す心』なんて似合わないだろ…」
そう呟くと、ガーニィは義手を元に戻し、足元に真紅の魔法陣を展開し、探索魔法を発動させる。
「………確か、コトーが大破したら搭載する予定で作っていたよなあ…ビンゴ!」
ラボ内を探索魔法で調べたガーニィは、“それ”が存在する棚に視線をやり、邪悪極まりない笑みを浮かべるのだった…
それからまたまた数時間後…
「やれやれ、ユーディの反応が可愛くてついつい可愛がり過ぎてしまったよ…朝までには完成させなくては…」
妙に艶々した表情で、ジャックは件の人型ロボットの仕上げにかかっていた。
「ガーニィ君の人格をモデルにし、自省回路を内蔵した超人機…彼も、私がMX-A1に対して抱いた、煩わしさを思う存分味わうがいい…!」
そんな理由で超人機を作るなと言いたくもなるが、ジャックだから仕方がない。
「よし、これで完成だ!………はて、面妖な。私は超人機を作っていたはずなのだが、ノリと勢いに任せて作業をしていたら、赤と青のハーフボディではなく、全身が真っ黒な人造人間になってしまった…これは一体?」
完成したロボットを前に、首を傾げるジャック。
その時だった。
俺の名は 俺の名は ハサイダー
潰せ! 殺せ! 破砕せよ!!
胸の 回路に指令が走る
俺の 俺の使命 俺の宿命
ヴィヴィオを破砕せよ! 破砕せよ!!
俺の名は 俺の名は ハサイダー
潰せ! 殺せ! 破砕せよ!!
黒い 身体に光が走る
俺の 俺の後輩 俺の同僚
ヴィヴィオを破砕せよ! 破砕せよ!!
俺の名は 俺の名は ハサイダー
潰せ! 殺せ! 破砕せよ!!
右手の 鋏に炎が走る
俺の 俺の標的 俺の宿敵
ヴィヴィオを破砕せよ! 破砕せよ!!
何処からともなく流れてくる、重厚なテーマソング(替え歌)と共に、完成したロボット…ハサイダーが起動し、立ち上がる。
「何故だ?メタルダーを作るはずが、ハカイダーになってしまった…まさか!?」
ハッと例の棚に視線をやるジャック。
「無い!?コトー君が大破したら、G4システムやゼロシステムと一緒にパーフェクトコトージバンに搭載する予定だった、悪魔回路が無い…!?」
「ハッハッハッハッハッ!」
頭上から聞こえてくる哄笑に、ジャックは珍しく狼狽えた様子でそちらを見やる。
「すり替えておいたのさ!!」
「………君、いつからそこに居たのかね…?」
天井の隅にへばりつき、台詞の元ネタ以上に某蜘蛛男っぽい感じになっているガーニィを見つけたジャックは、呆れの混じった表情で脱力気味に問いかける。
「いーんだよ、こまけぇこたぁ…よっ、と」
「細かくないと思うが…じゃあ、いつから私のやろうとしている事に気付いたのかね?」
「お前が何も言い返さずに医務室を後にした時から、だな…あのままグッと怒りの矛先を収めるとか、お前がそんな殊勝な奴のはずないだろ?」
「君はそうやって、時々、私の心を読むような真似をする…ガーニィ君、恐ろしい子!」
天井から着地したガーニィの答えに、戦慄しながらもアウトサイダーのネタを交えて返すジャック。
…そんなやり取りをする2人は、起動したハサイダーの存在をすっかり忘れてしまっていた…
『ウゥ…ウゥゥゥゥゥ…!』
唸り声と共に、紅い両目を爛々と光らせ、ゆっくりと2人の方を向くハサイダー。
「…おい、何かヤバそうだぞ?さっさと機能停止させた方がいいんじゃないか…?」
「うむ、それがだね…君が鬱陶しさのあまりコントロールアームで機能停止させたり出来ないよう、複雑な手順が必要な仕組みになっていて…」
「マジで俺への嫌がらせ専用のロボットかよ!?」
「しかし私は謝らない!…そして君が自省回路を悪魔回路にすり替えたせいで、君の短気で執念深くて性根の捻じ曲がった人格をモデルにしたAIが、更に凶悪化してしまっているという…」
「チックショー、ムカつく言われようだけど否定出来ねえ…それって、超ヤバくないか?」
「………はっきし言って、『超』面白カッコい…もとい、ヤバい!」
などと、何処か緊迫感の無いやり取りをしている間に…
『ウオォォォ…!!』
ハサイダーは右手の鋏を振り上げ、2人に迫っていった―――
翌朝。
「…で、そのロボット…ハサイダーは、2人をボコボコにしてJアークから脱走した…と」
呆れた様子で溜息交じりに言うゴトーの目の前には、2体に増えた、医務室のベッドに横たわるミイラ男。
「何だろう…ジャックさんは変態的な天才科学者、ガーニィさんは古参の元・無限書庫司書で、俺達の中では頭の良さツートップなのに…」
何だかなあ、と言いたげな表情のコトーが後に続く。
ちなみに鬼畜外道っぷりもツートップなのは、今更言うまでもない。
「時々、私より馬鹿なんじゃない?って時があるよねー…」
「「「「「「いやいや、それはない」」」」」」
「え、アルクとファスまで揃って否定するの!?」
自分以外の6人全員から口を揃えて否定され、涙目になるユーディだった…
次回の小ネタに続く!
あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
「私は、メタルダーネタを書いていたと思ったら、いつのまにかその前日談SSを書いていた」
な…何を言っているのか以下略(ヲイ