今まで、前回のあらすじを書いていなかった事に今頃気が付いた
そして、今後もこの『リリカルなのは絶滅計画』に関しては、あらすじを書くつもりはありません(ヲイ



時空管理局・本局。
そこは今、戦場と化していた。

ティアナ・ランスター執務官の指揮する武装隊と、ガーニィ・レイザ元司書に率いられた“かつての”無限書庫司書達…今では無限書庫を本局からブロックごと切り離そうとするテロリスト…との戦い。
今は亡き無限書庫司書長ユーノ・スクライアに報いる為と挑んだ弔い合戦も、戦いが本職の武装隊の前に、司書であった彼らがマトモに太刀打ち出来るはずもなく…

「ゴトーとの連絡が取れない…やられたか…」

頼みの綱であった元武装隊のゴトー・クサカも、激戦の最中に行方知れず…常に最前線へと突っ込んでいった彼の事、この状況では生存は絶望的だった。
ガーニィは友人を、仲間を次々と喪っていく戦場に忸怩たる思いを抱きつつも、態勢を立て直すべく、残った仲間の状況を確認しようと辺りを見回した。

「うう…」
「た、助けてくれ…」

うめき声のする方へ駆けつけると、そこには2人の元司書が倒れている。
2人とも瓦礫に身体を挟まれ、身動きが取れない様子だ。

「………」

ガーニィは、そんな2人の顔に見覚えがあった…



『おい、ヴィヴィオちゃんの事聞いたか?』
『ああ、聞いたともさ。とうとう司書長にも春が来たな!』
『とは言えヴィヴィオちゃんは、まだまだ小さいからなあ…』
『後、10年か…長いなあ』



…何が春だ。
あの小娘が無限書庫にもたらしたのは、永遠に過ぎ去る事のない冬ではないか。
後10年だと?
1年も経たずにユーノは犯罪者の烙印を押され、遂には命を奪われた。

全てはあの小娘が無限書庫に来たから。
そして目の前の2人のような、能天気な馬鹿共が居たから…



「あ、ガーニィ…さん…?」

元司書の片割れが、ガーニィに気付く。
と同時に、信じられないものを見たように表情が凍りつく。

「…待っていろ、すぐ楽にしてやる…」

ガーニィの左腕…隻腕の彼にとって唯一の腕には、ナイフが握られていた。
そして、自分に気付いた元司書へと近付いていくと、そのナイフを首筋に…

「が、ガーニィさんっ…何故…っ!?」

プシャァァァッ!

そのまま刃に力を籠めると、元司書の喉が切り裂かれ、派手な鮮血が飛び散る。

「………次、は…」
「ヒィ…!」

返り血を浴びながら、ガーニィは極めて無表情のまま、残る一人の元司書へと向き直る。

「どうしてだ…何でアンタが、同じ無限書庫の、仲間を…!?」

やはり目の前の光景が信じられない、といった元司書の問いかけに、ガーニィはそれまで無表情だった顔を醜く歪め…

「すまんなァ…あの小娘を認めるのであればッ!味方であろうと許す事は出来んのだァ!!」

…嗤った。
凄惨な笑みというのも生易しい、狂気の宿った嗤い顔。

同じ元司書の仲間であろうと関係無い。
ここには居ないヴィヴィオへの憎しみこそが、今の彼にとっては何よりも重要だった。

「………これが古参司書のやる事かーッ!?」

ザシュッ…!

元司書の憤りに満ちた叫びにも耳を傾ける事無く、ガーニィは相手の左胸にナイフを突き刺した…



「…昔の夢、か…」

椅子に腰かけたままの状態で、彼は眠りから目覚める。
目の前のデスクには、報告の為に目を通していた資料の山。

「資料に目を通していて眠ってしまう…いつ以来だったかな…」

そんな自分の状況に、一瞬、かつて“人間だった頃”に戻ったように錯覚し、彼は苦笑する。

それにしても、人間の身体というのは不便なものだ。
活動中にも関わらず、疲労が溜まると食事や睡眠を必要とする。

かつては自分にもあった機能が、一度“人ならざるモノ”になってしまうと、ここまで不便に感じるとは想像もしていなかった。
やはり“生命〈いのち〉ある者”“存在〈かたち〉ある物”は下等だと再認識しつつ、彼は今の『主』への報告の為、席を立つのだった。



時空管理局・無限書庫。
そこは今、戦場と化していた。

はやてとノーヴェに引率されたヴィヴィオ一行による無限書庫探索ツアーにおいて、緊急事態に対応出来るよう、ユーノは管理室に缶詰めを余儀なくされていた。
その為、司書達は陣頭指揮を執る司書長を欠いた状態で、多忙な業務を強いられる羽目に陥ったのだ。

「おいタクトぉ!タクト司書は何処行った!?」

相も変わらず不機嫌な顔をしたガーニィの怒鳴り声が、司書達の右往左往する無重力の書庫内に響き渡る。

「へ~い。ガーニィさん、何スか?」

その怒鳴り声に、一人の司書がガーニィの前へと“文字通り”飛んできた。
歳は17か18、ヤンチャさが残る顔だちをした、赤い短髪の少年。

「何スか?じゃねーよ!報告用の資料はどうした!?」
「え、アレって期限明日までじゃなかったっけ?」

タクトと呼ばれた若い司書がキョトンとした顔をすると、ガーニィの米神にピキピキと血管が浮き上がる。

「期限は明日だが不備があったらもう一度一から調べ直さなきゃならなくなるから司書長に提出する前に今日俺がチェックするって言っただろ!?一週間も前に!」
「うえっ!?…あ~、そーいやそんな事言ってたような、言ってなかったような…?」

「 言 っ た ん だ よ ! ! 」

金切り声でがなり立てるガーニィの剣幕に、タジタジになるタクト。

「…ったく…お前、若い連中の纏め役だろ?シャキッとしろシャキッと!ユノマシンにくだらん悪戯教えて遊んでる暇なんかねーんだぞ!?」
「………スンマセン…」

ちなみにこの間、他の司書達は2人の方に顔も向けず、業務に専念していた。
慣れっこになっている、そもそも気にしている余裕が無い、下手に割って入ってとばっちりをくらいたくない…とまあ、内心はそれぞれではあるが。

「今日中…日付が変わるまでには提出しとけよ…」
「りょ、了解~…」

憤りと声を押し殺しながら念を押し、業務に戻っていくガーニィを見送ったタクトは、

「………ゴトーさん、今日のガーニィさん一段と機嫌悪くね?」

偶々近くを通りかかったゴトーに、ゲッソリした顔で声をかける。

「まあな…ほら、今日の件で…」
「あー…ガーニィさん、ヴィヴィオちゃんの事嫌ってるって言うか寧ろ憎んでるからな~…」

納得、と言わんばかりに天を仰ぐタクト。

「だから、お前も迂闊な事言ったら…うっかりぶん殴られても文句は言えないんだぞ?」
「いや、殴られたら流石に労働問題でしょ?幾らこのブラックRXな無限書庫でも…」
「…某六課では、直属じゃない下士官を殴っても問題にならなかったそうな…」
「それってゴトーさんの愛しの某オッパイ騎士様の事ですか?」
「言うな!今では半分幻滅してるんだからよ!!」
「つまり半分はまだ未練があるんですね…」

結局、ここでもシグナムに片思いしていた事で弄られるゴトーであった。
…ちなみに他の司書が知っているのは、彼が司書見習いとして書庫に配属された当日にガーニィが言いふらしたからである…

「うるさいなー…あ、そういや今日、お前のカミさん来てたぞ?」
「ラブが?何で?」
「何でって…姫宮秘書のお供に決まってるだろーが」
「あー、千歌姉さんのお付きか~…」



虚数空間に浮かぶ巨大な要塞。
蛇の頭部と、蜘蛛の胴体とを繋ぎ合わせたような、生物的なフォルムを持つ次元戦艦。
かつて、とある世界において太陽の子と戦った、異次元の侵略者達が地球攻撃の旗艦として使用した『クライス要塞』。

その内部に、彼は居た。

「…EXA-DBと黒歴史、無限書庫の全記録の最適化は完了。第97管理外世界も、傘下に加わっていたフリーメイソンと300人委員会の手で第三次世界大戦を引き起こし、ディストピアを形成する事によって制圧しました」

光を発する三本の杭が中央に並び立つ部屋。
その杭から発せられた光が、天井に作り出すモニターに向かって、彼は報告をしていた。

『…そう。なら、早々に決着をつける事にしようか…』

モニターから返ってくるのは、かつての上司と全く同じ、中性的な声。
しかし、その人物なら絶対に発さなかったであろう、感情の籠らない冷たい声。

…今の主、『大首領』ガルド・アウグストスへの報告を終えると、彼は部屋を後にした…



「窃視・盗聴魔法の反応、消失しました…気付かれたのでしょうか?」
「私達じゃなく、ルーテシアさんの方にね…予定通りの展開だわ」

無限書庫の秘書室は、昨夜の内に運び込まれた、無数の機材に埋め尽くされていた。
そのコンソールを操作しながら、懸念を口にする乙羽に対し、千歌音はデスクの椅子に腰かけたまま、全く動じる様子を見せない。
そして千歌音の目の前、デスクの上には、あの『玩具箱』が置かれている。

「この後、魔女のお嬢さん…ファビアとかいったかしら…彼女が無限書庫に不法侵入…そして、ヴィヴィオさん達と書庫内で派手な戦闘を始める…」
『ウェーイ…そこまで先の展開が分かっているなら、介入して阻止した方が良いのではないディしょうか?』
「何故?どうして私がそんな事をしなくてはいけないの?」

お前は何を言っているんだ。
…まさにそう言わんばかりの真顔で、ブレイドの進言に疑問を投げかける千歌音。

『書庫内で暴れられたら、最終的に困るのはユーノさんなんディスよ!?』
「それでヴィヴィオさん達に愛想を尽かす結果になれば、対価としては十分よ」
『外道ディスー!まさに外道がここに居るウェイ~!!』

平然と言い切った千歌音に、ブレイドはデスクの上で、『玩具箱』の周りをジタバタ走り回りながら騒ぎ出す。

「…そもそも、私が介入して事態が変化するなら、とっくの昔にしているわよ…」
『ウェイ?』
「………でも、結果は何も変わらなかった…なのはさんは撃墜され、ユーノは心に深い傷を負い…『JS事件』の時も、機動六課の活躍ばかりが持て囃され、この無限書庫が正当に評価される事はなかった…」

椅子の背凭れに寄りかかると、千歌音は天井を仰いで溜息をつく。
…全てを、諦め切ったような表情で…

「ヴィヴィオさんが格闘技に興味を移した時、私は確信したのよ。この『リリカルなのは』の世界そのものの流れは変わらない…先の展開を知っている、私が何をしようと…」
『千歌音さん…』
「だから、ユーノだけは救いたいのよ…彼は私の弟。彼がこの世界の腐敗に殉じる義理は無いはずだわ」

千歌音は背凭れから上体を起こすと、『玩具箱』の蓋を開ける。

そこには、別の並行世界の光景が映し出されていた。
時空管理局が存在せず、なのは達が魔法を使わない普通の少女として、カードゲームに没頭している世界。

しかし、その世界は何処か歪で、自分達が今居る世界よりも、何かがおかしい…そう見えた。

「…エルトリアの連中も信用出来なくなってきたわ…やっぱり、ユーノは私と一緒に帰るべきなのよ。本当の生まれ故郷である、『神無月の巫女』の世界に…」

その世界のなのは達とカードゲームに興じる、赤毛と桃色の髪の姉妹を冷たい目で睨みつけると、千歌音は『玩具箱』の蓋を閉じる。

「…お茶が入りました…」

それとほぼ同時に、一人のメイドが、ティーセットを載せたトレイを運んできた。
歳は17か18、大人しそうな感じの、茶色いボブカットの髪をした、小柄なメイド。
メイド服なので体型は分かり辛いが、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる…と、ブレイドの心眼(右目に『欲』、左目に『望』という文字が浮かび上がっている)は捉えた。
特徴的なのは、頭の白いフリルの付いたカチューシャを挟むように存在している、短い毛に覆われた三角の耳…所謂、猫耳である。

「ありがとう、ラブ」
『ウェーイ、乙羽さん以外のメイドさんと会うのは初めてディスね~』
「今日は乙羽には監視作業に専念して貰うから…他の雑用を任せる為に連れてきたのよ」
『しかし猫耳メイドさんとは、あざといまでにツボを突いていますウェイ~』
「あ、あざとい…ですか?」

はしゃぎ回るブレイドの言葉にキョトンとしながら、ラブと呼ばれたメイドの頭で、猫耳がピコピコと動く。

『…ウェイ?』
「貴方が居るから、本当は連れてきたくなかったんだけどね…あまり教育に良くないし」
『まるで母親のような事を言うんディスね』

少しムッとした様子で振り返るブレイドの言葉に、千歌音はクスリと何処か勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「間違ってはいないわね…彼女と彼女の夫は、私とユーノが後見人になっているから」
『…夫…人妻、だったんディスか…?』
「ちなみに彼女の夫は、この無限書庫の司書よ」

ガーン…という効果音が聞こえてきそうな感じで、再びこちらを見たブレイドに向かって、

「ラブ・姫宮・スクライアと申します。宜しくお願いしますね」

ラブはにこやかに微笑みながら、自己紹介するのだった。



通路を歩く彼の向かい側から、2人の構成員が歩いてくる。
2人とも、“彼と同じく”右腕にローゼンクロイツが描かれた腕章が付いた黒い軍服を身に纏っている。
そして、すれ違いざま、その片割れの首元を見た瞬間、“眼帯に覆われていない”彼の右目がギラリと光り…

ビシッ!

…瞬時に“右手に持っていた”指揮棒を、その構成員の首元に突き付けた。

「貴様、服装が乱れているぞ!服装の乱れは心の乱れだ!!」
「も、申し訳ありませんっ!」

指揮棒を突き付けられた構成員は勿論、一緒に歩いていたもう一人の構成員も立ち止まり、揃って身を竦める。
そして叱責された構成員が僅かに緩んでいた襟元を正すと、2人は逃げ出すように立ち去った。

この要塞では、彼こそが鉄の規律そのものなのだ。

「…いつまでコソコソしているつもりだ?…そこに隠れているのは分かっている…」

2人が去った後、彼は後方へと振り返り、一見何も無い物陰へと声を張り上げる。
すると、その物陰から、左右非対称の仮面を付けた人物が姿を現した。

「おやおや、ばれてましたか…それにしても…」

仮面の人物は、彼の姿を頭の天辺から足の爪先までジロジロと眺める。

「………随分と気合の入ったコスプレですね、ガーニィ元司書…」
「ガーニィ?知らんな…私は大首領ガルド・アウグストス様の配下、バカラシン・イイノデビッチ・ゾル大佐だ!」
「プロデューサーの裏設定で発表されたフルネームなんて誰も知りませんよ!…口髭まで生やしちゃって、とことんなりきってますね」
「…何とでも言うがいい…貴様の知っている『人間』であるガーニィ・レイザは、もうこの世には居ないのだからな…」

黒い軍服に身を包み、左目を眼帯で覆い、口髭を蓄え、失われたはずの右手に指揮棒を持った彼…ゾル大佐を名乗る男は、自分をガーニィと呼ぶ仮面の人物の言葉を冷たく否定した。

「いいえ、私にとっては貴方は今でもガーニィさんです。人外の存在になろうと、コスプレして偽名を名乗ろうと、貴方は私の友人で、元無限書庫司書のガーニィ・レイザなんですよ!」
「相変わらず甘い奴だ…いつまで経っても現実を受け入れられん。そんな事だから、私に二度も出し抜かれた…」
「ええ、酷い目に遭いましたよ…特にギャラクティアの時は、実際に殺されましたからね…」
「あの時は面白いものを連れていたな…妹の身代わりか?女々しい奴め…」

ゾル大佐を名乗る男から『妹』という言葉が発せられた瞬間、それまで飄々としていた仮面の人物の纏っていた雰囲気が、刺々しいものへと変わっていく。

「妹の事は…関係ないでしょう…」
「どうだろうな…貴様が腑抜けだから妹を喪った…そして今の貴様は、妹を守れなかった時と何も変わってはいない…違うか?」

挑発の言葉が終わると同時に、両者の視線が火花を散らす。

「黙れガーニィ…いや、ニャル滝ィィィッ!」
「久しぶりに遊んでやろう…ドクター・ジェミニ!」



ここは、アナザースペース。
千歌音達が暗躍しているのとはまた別の世界。

…その世界においても、ユーノ・スクライアと『リリカルなのは』の物語を巡る大きな流れが、動き出そうとしていた…



タクト&ラブ夫妻は『TMV』のコマンド千歌音編に登場予定だったのが、延びに延びて今作で初登場
向こうは一年以上ほったらかしなので、早く再開しないと…(-"-;A