※注意※
このSSは『リリカルユーノ アニメイテッド』の設定を基本としていますが、最終的にはユーなのを予定しています
また、StSから四期現在までの『リリカルなのは』本編を、一切フォロー無しの否定的な観点で、思いっきりネガティブに捉えた上で進行します
そういうのが嫌な人は、見ない事をお勧めします



「はぁ…」

今日も今日とて、高町なのはは憂鬱だった。

「なのっ?」
「ゆのー?」

テーブルに頬杖突いて溜息をつく、そんななのはの様子に、心配そうになのマシンとユノマシンがトコトコと寄ってくる。
ヴィヴィオの護衛用に作られた、全てのなのマシンとユノマシンの試作機に当たる第一号達、それぞれ通称を『なの』と『ゆの』という。

「ん…何でもないよ。なのもゆのも、心配しなくていいからね」
「なの…」
「ゆの…」

二体を安心させるように笑いかけるなのは。
しかし、思えば本来ヴィヴィオの護衛であるはずのこの二体が、こうして家で暇を持て余しているという現実は、なのはの憂鬱の原因の一つでもあった。

「…ホント、どうしてこうなっちゃったかなぁ…」



事の起こりは、JS事件の終結から暫く後まで遡る。
ヴィヴィオを養女として引き取ったなのはは、『奇跡の部隊』と称される機動六課に所属していた教導官としての多忙な日々の中、それでもSt.ヒルデ魔法学院に通うヴィヴィオと一緒に帰宅してやりたいとの思いから、魔法の師であり幼馴染であり、何より密かに想いを寄せる相手でもあるユーノが司書長を務める無限書庫を待ち合わせ場所とし、ユーノにヴィヴィオを預かってもらっていた。
幸い、ヴィヴィオはユーノによく懐き、司書の仕事にも興味を持ち、司書見習いとして無限書庫に馴染んでいった。
これなら、そのうちヴィヴィオが「ユーノ司書長にパパになって欲しい」とか何とか言い出して、自分とユーノのキューピットになってくれるのでは?などと虫のいい期待をしていたなのはだったが、一向にそんな気配は無い。
これは一体どうした事かと疑問に思ったなのはは、ある日、それとなくヴィヴィオに聞いてみた。

「ねぇ、ヴィヴィオ。ユーノ君の事、好き?」
「うん。好きー」
「じゃあ、ユーノ君がパパになってくれたらいいなぁ、って思う?」
「?…パパってなぁに?」

返ってきた答えに、なのはは自分の耳を疑った。
ヴィヴィオはパパ、すなわち父親という存在を知らない。
何故?
元々本好きで、今や無限書庫で司書見習いとして働いている娘が、父親の意味すら知らないというのはおかしくないか?
…と、そこまで考えたなのはだが、思えば世の中には、『オバQ』は知っているくせに、その中にも登場しているママの意味を知らなかったカエル型宇宙人や、美少女アニメオタクの集まりのくせに、必ずと言っていいほどクローズアップされるクリスマスやバレンタインデーといったイベントを知らなかった忍者達も居るし、何よりかつての部下に自分が管理局員を目指すきっかけとなった事件の原因であるにも関わらず、「ロストロギアって何だっけ?」などと発言した愚か者が居たように、妙に偏った知識というのは現実にあるものなのだと自分を無理矢理納得させた。

しかし、はっきり言ってこれは拙いとしか言いようがない。
これが女手一つで娘を育てるシングルマザーならともかく、ヴィヴィオにはもう一人『ママ』が存在している。
2人の母親に育てられ、父親という存在自体を知らない娘…それが世の中から、どんな色眼鏡で見られるか。
ましてや自分と、もう一人のママであるフェイトは、常日頃から同性愛者のレズビアンであるという噂が絶えない。
管理局内に『なのフェ親衛隊』なるストーカー集団紛いのファンクラブまで存在し、高官の身内も所属している為、上層部もその活動を黙認しているという現状だ。
思えばヴィヴィオを引き取ってからというもの、やたらとなのフェ親衛隊の活動が活発化し、2人に一番近い汚らわしい異性としてユーノと彼の職場である無限書庫が嫌がらせに遭っていたが、それが何故か漸く分かった気がした。
このままでは、ヴィヴィオは自分とユーノのキューピットどころか、自分がフェイトとガチレズである動かぬ証拠になってしまう!
…かと言って、変な噂がこれ以上広まらないようにフェイトと距離を取るわけにもいかなかった。
ヴィヴィオが、フェイトの事もママと慕っている以上、自分の都合でヴィヴィオとフェイトを引き離すわけにもいかない。



どうしたものかと悩んだ挙句、なのはは、まずヴィヴィオに父親という存在を知ってもらおうという結論に達した。
これまで、なのはが帰れない時は、ヴィヴィオをフェイトの実家である海鳴のハラオウン家で預かってもらっていたが、これをやめる事にする。
ハラオウン家にもクロノという父親が“一応”存在しているが、自宅よりもクラウディアで多く過ごし、滅多に帰宅しない父親など、居ないのと同じだ。
カレルとリエラだって、父親であるクロノの顔を覚えているのかどうか。
何より、クロノには聖王教会のカリムとの不倫疑惑まで立っている。
そんな父親の家にこれ以上ヴィヴィオを預けて、男性不信にでもなられたら大変だ。
などとクロノに対して失礼極まりない考えを展開しながら、なのはは代わりの預け先を考える。

はやての八神家も駄目だ。
一見、ヴィヴィオが懐いているザフィーラが居るから良さそうに思えるが、ヴォルケンリッターにおけるザフィーラは『盾の守護獣』、すなわち獣扱いである。
将を含めて女性が3人、たった一人の男が獣扱い、これがヴィヴィオに男性蔑視の思想を植え付けでもしたら非常に拙い。
思えば彼らの主たるはやてからして、機動六課の主要メンバーのほとんどを女性で固め、提督であるレティの息子という事で副官に任命したグリフィスも軽視し、「誰か、指揮代わって!」などと戯言をほざいた前科がある。
ヴィヴィオにはあんな風になって欲しくはない、と心の中ではやてを罵倒しながら、なのはは八神家に×を付けた。

次になのはが候補として思い付いたのが、前述の愚か者ことスバルのナカジマ家である。
あの家は、なのはの周囲の人物には珍しく、父親のゲンヤが健在だ。
顔見知りのナンバーズ更生組も居るし、預け先としては悪くない。



「スバル、悪いけど、ヴィヴィオを預かってもらえないかな?今日、仕事が詰めて帰れそうにないんだ」
「いいですよー」

思い立ったら即行動とばかりに、教導隊の仕事が押して帰宅出来なくなったその日、早速なのははスバルにヴィヴィオを預かってもらうよう頼み、スバルはそれをあっさり快諾した。
これでヴィヴィオも父親という存在を知り、行く行くはユーノに「パパになって欲しい」と言うようになるだろう…と、なのはは自分の勝利が目前である事を信じて疑わなかったが、百合厨や主人公最強厨の思惑以外は上手くいかないのが彼女らの存在する世界である。

スバルは尊敬するなのはの要望に応えるべく、率先してヴィヴィオの相手をしていた。
その結果、ヴィヴィオは父親云々よりも、スバルやギンガのやっている格闘技に興味を持つようになってしまった。
最初はスバルやギンガがお遊び程度に教えていたが、なのは信者であるスバルとフェイト信者であるギンガが2人の『娘』であるヴィヴィオに教える格闘技は、言ってみれば接待ゴルフみたいなものであった。
それを見ていたノーヴェが空気を読まず割って入り、ヴィヴィオに本格的に格闘技を教え始めてしまう。
かくしてヴィヴィオはすっかり格闘技に夢中になり、次第に無限書庫ともユーノとも疎遠になってしまったのだ。



「こんなはずじゃなかったの…」

今やヴィヴィオはちょっとした不審者なら返り討ちに出来るまでの腕前になり、護衛用のなのとゆのはお役御免とばかりにヴィヴィオと行動を共にする事が少なくなった。
無限書庫では親六課派であるヴィヴィオファンの司書達が意気消沈してゾンビのようになり、逆に司書長秘書にしてユーノの姉である千歌音を筆頭に頂く反六課派の司書達が我が世の春が来たとばかりに高町家(笑)ネガティブキャンペーンを展開している。
クロノがこの場に居たら「世界はいつだってこんなはずじゃない事ばっかりだよ!」とでも言ったのだろうが、今や伝説の三提督に進言出来るほど出世コースまっしぐらで、年上の幼馴染を孕ませて結婚し、2人の子宝に恵まれ、あまつさえ不倫まで楽しんでいるような、勝ち組過ぎる男にその台詞を言う資格は無い。
そんなスーパークロノタイム、ブラスター3の砲撃で吹っ飛ばしてやるところだ。

「なのなのっ」
「ゆの、ゆの」
「いいなぁ…」

少し離れたところで、なのとゆのが仲良く遊んでいる。
自分達をモデルにしたマシン達は仲睦まじく戯れているというのに、オリジナルである自分達はどんどん距離が離れていくばかり。
何がいけなかったのか、どうすれば良かったのか、答えが出ないまま時間だけが虚しく過ぎていく。

ピピピピピ…

不意に、携帯電話のアラームが鳴る。
表示を見てみると、久しぶりのユーノからのメールである。

「ユーノ君から?…何だろ…?」

とりあえずメールを開いてみる。



『大事な話があります。2人きりで会えないかな?良ければ、空いている時間を教えてください』



簡潔なメールだが、『大事な話』『2人きり』といった単語が、なのはの思考回路を直撃した。

「ゆゆゆゆゆ、ユーノ君から大事な話!?しかも、2人きりで会いたいだなんて…これは、もしかして、もしかしなくても、告白とかプロポーズとか、そういう間違い無いパターンだよね!?だよね!?」
「なのっ?」
「ゆのー?」

なのとゆのから不思議そうな視線を受けているのにも構わず、一頻りキャーキャーと一人で盛り上がったなのはは、午後からならいつでも大丈夫との旨を返信するのだった。



そしてその日の午後、さり気無くいつもより気合を入れてお洒落をしたなのはは、時空管理局本局内の喫茶店で、ユーノと待ち合わせしていた。

「ごめん、待った?」
「うぅん、私もさっき来たとこだよ」

少し遅れた事を詫びるユーノに、気にしないように微笑むなのは。
傍から見ればデートとも取れるシチュエーションに、なのはは自分の予感が間違いじゃない事を確信する。
それから暫くは、なのはは紅茶、ユーノはコーヒーを飲みながら、互いの近況などを当たり障り無く談笑していた。

「それで…メールでも言ったけど、大事な話があってね…」
「うん…何、かな?」

談笑がひと段落したところで本題を切り出すユーノに、なのははいよいよ来たかと微かに身を強張らせながら、告白なりプロポーズなりの返答をシミュレートする。
勿論答えは、迷わずにSAY YES以外無いのだが。

「実は…今度、無限書庫を辞める事にしたんだ…」
「へっ?…あぁ、そうなんだ…」

自分が予想していたロマンティックな話題ではなかった事に気分が消沈し、気の無い返事を返してしまうなのは。

「………ちょっと待って?ユーノ君が、無限書庫を辞めるって事は…」

だが、次の瞬間、遅れて脳に達したその言葉が何を意味するか理解し、震える声で恐る恐る尋ねると。

「うん…なのはとも、フェイトや他のみんなとも…お別れだね…」

ユーノは少し寂しそうな、しかし、決意は固いといった表情で、今度は予想通りの答えを返す。

「そんな…」

呆然とするなのはの脳裏には、何故か赤く染まった地球をバックに高笑いする千歌音の姿が浮かぶのだった…



つづく



なのはの扱いが悪いと怒られた事はあるが、うちのブログで一番扱いが悪いのってクロノとはやてじゃなかろうか?