4日遅れでバレンタイン記念SS第二弾
こちらは通常営業です
時空管理局本局、ロストロギア保管庫。
ここには、各次元世界から回収された、“ぶっちゃけやばそうな”ロストロギアが集められ、厳重に保管されている。
そして本来ひと気など無いはずの薄暗い庫内に、もぞもぞと動く二つの人影があった…
「…私の調べた情報が確かなら、この辺りのはずなの…」
「…なのは…やっぱり、やめた方がよくないかな…?」
「フェイトちゃん…私達に、最早手段を選んでる余裕なんて無いの…」
片や管理局の誇るエース・オブ・エース、高町なのは。
片や管理局きっての敏腕執務官、フェイト・T・ハラオウン。
その2人が、こんな場所で何をしているかと言うと…
「それは、そうだけど…流石に、保管されているロストロギアを無断で持ち出して使うのは…手段がどうとか以前の問題なんじゃ…」
「乙女にとって恋愛は何にも勝る最重要事項なの。管理局の法律なんて、その前では塵よりも軽いの」
「バレて捕まったらどうするんだよ…」
「それで局をクビになるなら望むとこなの。ストーカー同然のファンを気にせず、堂々とユーノ君のもとに嫁げるの」
「クビじゃ済まないよ…下手すりゃ実刑は免れないよ…」
「その時はその時、ユーノ君とヴィヴィオと家族3人で愛の逃避行なの…あ、あったの!」
「え、本当にあったんだ?第87管理外世界で発見された超強力な媚薬、『サカリツーク8000』が!?」
なのはが目的のブツを発見した途端に、それまで乗り気じゃなさそうだったフェイトが食い付く。
「間違いないの…これさえあれば、夢にまで見たユーノ君でロストバージン…そのまま、あのブラコン巨乳女の手の届かない遠い世界で、ユーノ君と私とヴィヴィオの親子3人で幸せに暮らすの…」
「わわわ、私もソウマに処女捧げて…姫子から、略奪愛しちゃうんだ…エリオ、キャロ、もうすぐお父さんを紹介してあげるからね…」
ハァハァと不気味に息を荒げながら、妄想で盛り上がる2人。
と、その時、不意に庫内の照明が灯り2人を眩しく照らした。
「「っ…!?」」
慣れた暗闇からいきなり眩い光に照らされ、眩んだ目をしょぼつかせる2人の背後から、三つの人影が近付いてくる。
「ハイ、2人ともそこまでやで~」
「なのは、今すぐそのケースを置いてあった場所に戻せ。変な真似したらアイゼンの頑固な染みにするぞ」
「テスタロッサ、お前も両手を挙げて頭の後ろで組め。レヴァンティンの錆になりたくなければな」
管理局の切り札たる凄腕捜査官、八神はやて。
その両隣には、彼女の騎士であるヴィータとシグナムが控えている。
「ど、どうして分かったんですか…?」
「あれだけ血眼になってそのロストロギアの情報を調べていたら、お前達が何をしようとしているかぐらい簡単に検討がつく」
「嘘っ!?…さり気無く調べていたはずなの…」
「デスクワークサボって関連資料漁るのの何処が「さり気無く」だ!?」
「さぁ、2人とも観念しぃや。今なら、何も無かった事にしといたるから…」
シグナム・ヴィータと間抜けな遣り取りをするフェイトとなのはに溜息をつきつつ、はやてが2人に歩み寄る。
「ぐっ…こんなところで諦めるわけにはいかないの…このサカリツーク8000には、私の『ユーノ君ゲット大作戦・バレンタイン編』がかかってるの…」
「私だって、ソウマを姫子から奪い取る数少ないチャンスなんだよ!?はいそうですかと諦められないよ!」
「ロストロギア指定されてる媚薬をバレンタインチョコに入れて既成事実て頭悪過ぎやろ常識的に考えて…まぁ、なのはちゃんとフェイトちゃんが焦る気持ちも分からんでもないけど…」
ある意味予想通りの反応に、はやては頭を抱えたくなった。
六課の隊長クラス2人が本局に保管されているロストロギアを無断で持ち出して使用など、はやての責任問題だけでは済まないだろう。
下手すればなのはもフェイトも逮捕は免れない。
しかも、それを承知の上で次元世界のお尋ね者になってそれぞれ意中の人と逃亡生活を送るつもりでいるのだからタチが悪い。
当然、ユーノやソウマがこの事を知る由も無いのに。
「はやてちゃんに何が分かるって言うの?フラグが立つどころか、フラグを立てるお相手さえ居ないのに!」
「そうだよ!雑誌の写真撮影でいつも背景の穴埋めかハブにされて、ガチレズ扱いされた事の無いはやてに私達の気持ちは分からない!!」
グサッ!
グサグサッ!!
「ぐはぁっ…!?」
なのはとフェイトの言葉の刃がはやての心にクリティカルヒット!
はやてはその場に突っ伏して倒れてしまう。
「はやてーっ!?」
「主っ!?主ぃ!お気を確かに!!」
慌ててはやてを介抱するヴィータとシグナム。
その隙を逃すなのはとフェイトではなかった。
「フェイトちゃん、今のうちに逃げるの!」
「合点承知の介だよ、なのは!」
バリアジャケットを構築し、サカリツーク8000の保管されたケースを抱えて逃げ出すなのは。
フェイトもそれに倣う。
「しまった!?」
「あいつら…ん?」
咄嗟に追おうとするシグナムの手を、倒れたはやてが掴んでいた。
「主、如何されました?」
「………や…」
「…はい?」
何やらボソボソと呟くはやてに、怪訝そうに耳を近付けるシグナム。
「捕まえるんや…あの2人を…」
「は、はぁ…それは勿論、直ちに…」
「非殺傷設定は解除してかまへん…非常事態や、2人の生死は問わん…」
「………は?」
主の口から飛び出した不穏な言葉に、シグナムは我が耳を疑い、思わず硬直してしまう。
「ええから、何が何でも捕まえるんや!ロストロギアの奪回を最優先とし、2人があくまで抵抗するならDead or Aliveやー!!」
「はやてがキレたー!?」
完全にプッツンした状態で喚くはやてに呆然としながら、ヴィータは万が一を考えて保管庫の入り口で待機させておいたスバルとティアナが、何とかなのはとフェイトを取り押さえてくれる事を願ったが…
『大変ですぅ~!保管庫から出てきたなのはさんとフェイトさんに、スバルとティアナがあっさり撃破されてしまったですぅ~!!』
「やっぱ駄目かチクショー!」
やはり入り口で待機していたリインフォースⅡからの念話に、ヴィータが天井を仰いで絶叫する。
幾ら日々実力を上げているスバルとティアナとは言え、ユーノLOVEで暴走しているなのはとソウマLOVEで暴走しているフェイトの相手は荷が重過ぎたようだ。
『2人はそのまま逃走を続けているですよ!』
「行くぞヴィータ。こうなった以上、我らであの2人を止めるしかない!」
「でも、はやてはどーすんだよ!?」
最早完全にトチ狂ったのか、コロセーコロセーと十面鬼のように喚き散らすはやてをこのままにしておくのは気が引けたが…
「…置いていくしかあるまい。下手にお連れしたら、本気でなのはとテスタロッサを殺しかねん」
「…だな…」
それから、2時間46分にわたる追跡劇の末、なのはとフェイトはザフィーラの鋼の軛に行く手を阻まれ、シャマルによってリンカーコア<はらわた>をブチ撒けられ、行動不能に陥ったところを漸く御用となったのだった…
一方その頃、クラナガン郊外の豪邸・姫宮邸のキッチンでは…
「…どうして私は姫子に監視されながら、ユーノへのバレンタインチョコを作っているのかしら…?」
ボウルの中の湯煎で溶かしたチョコをゴムべらで掻き混ぜながら、エプロン姿の姫宮千歌音が溜息混じりに呟く。
「それはね、千歌音ちゃんがユーノ君へのチョコに変な物を入れたりしないようにする為だよ」
同じくエプロン姿の大神姫子(旧姓・来栖川)が、仁王立ちで腕組みしながら、そんな千歌音を見張っている。
「失礼ね。親戚の『J親父』さんから購入したこの『白金粒精泉ジャクビンビン』を入れるだけよ」
「名前だけで十分怪し過ぎるわーっ!」
スパーンッ!
「ぎゃふんっ…!?」
いかにも怪しげなJ丸印の小瓶を取り出した千歌音の顔面に、姫子のハリセンがいい音を立てて炸裂した。
「うぅ…姫子が、姫子が私とユーノのハッピーバレンタインを邪魔する…」
「ハッピーなのは千歌音ちゃんだけでしょ…そんな如何わしい薬を実の弟へのチョコに盛るなんて…」
「でも、これを使うと、いつもはベッドの中では生まれ立ての子犬のように大人しいユーノも、雄の本能丸出しでガンガン攻め立ててくれるのよ?」
「既に使用経験の前科アリ!?おまわりさんこの人です!」
姫子は本気で頭が痛くなってきた。
この容姿端麗・頭脳明晰なはずの親友は、弟の事になると一瞬で只の変態と化す。
デウス・エクス・マキナを巡る一連の戦いの後、千歌音がユーノと一緒に暮らす事にしたと聞かされた時は、姫子も千歌音の孤独を知っているだけに、心から祝福したのだが、まさかこの親友がここまでのブラコンに超進化<ビッグバン・プログレス>するとは思ってもいなかったのだ。
「姫子…見逃してくれたら、貴女にも一瓶分けてあげてもいいんだけど…」
「…シグルブレイドでぶった切られたいみたいだね…」
千歌音の提案に、米神に青筋を立てながら、姫子は怒りの力でスパローのウェアをゲイジングしようとするが…
「だって…大神君、姫子の事を大事にし過ぎてそうなんですもの…姫子だって、偶には壊れるぐらい滅茶苦茶にして欲しい、って思う時ぐらいあるでしょ…?」
「それは…まぁ、ねぇ………ソウマ君、いつも私の事気を遣ってくれるけど…気を遣い過ぎて、ちょっと物足りないかなぁ…なーんて思っちゃったりする事も…確かに…」
図星を指され、あっさり怒りを収めて同調しだす姫子。
やはり親友、何処か似た者同士なところがあったようだ。
「男性局員のお給料は安いけど、何とかやりくりして大分貯金も出来たし…そろそろ、子供も欲しいなぁ…なんて…」
「でも、姫子がそんなに怒るんじゃ仕方ないわね。残念だけど、今回はお詫びの手紙を添えて『J親父』さんに返品する事にしましょうか…」
ガシッ!
わざとらしく小瓶を仕舞おうとした千歌音の腕を、姫子が掴む。
「…どうしたの、姫子?」
「千歌音ちゃん…バレンタインは女の子にとっての一大イベントだよ?ちょっとぐらい、ハメ外しちゃってもいいんじゃないかな?」
極上の笑顔を浮かべながら、姫子は寝返った。
普段、千歌音に対するツッコミに情けも容赦も無いのは、実は欲求不満の八つ当たりも混じっていたのかも知れない。
「話は聞いたわ。私にも、その薬分けてもらえないかしら?」
いつの間に居たのか、キッチンの入り口にルナマリア・アスカ(旧姓ホーク)が佇んでいた。
「ルナちゃん、どうしてここに?」
「ツッコミの増援が要るかと思って来たんだけど…」
増援が現れて即寝返りとか、前代未聞である。
「まぁ、それはともかく…改めて、3人でバレンタインのチョコ作り、再開しましょうか」
「「おーっ!!」」
最早誰も止める者の居なくなった千歌音に、欲望に魂を売り渡した女2人が拳を振り上げて同意する。
結局、バレンタイン当日の2月14日を、なのはとフェイトは六課のオフィスで、始末書の山に埋もれて過ごした。
そして翌日の15日、ユーノとソウマとシンは黄色い朝日を見る羽目になり、千歌音と姫子とルナはその日一日、妙に肌がツヤツヤしていたという…
これにて今年のバレンタインSS記念は終了
前回、真面目なユーなの更新しといて、その翌日にこんなの更新する私は頭おかしいと思う
こちらは通常営業です
時空管理局本局、ロストロギア保管庫。
ここには、各次元世界から回収された、“ぶっちゃけやばそうな”ロストロギアが集められ、厳重に保管されている。
そして本来ひと気など無いはずの薄暗い庫内に、もぞもぞと動く二つの人影があった…
「…私の調べた情報が確かなら、この辺りのはずなの…」
「…なのは…やっぱり、やめた方がよくないかな…?」
「フェイトちゃん…私達に、最早手段を選んでる余裕なんて無いの…」
片や管理局の誇るエース・オブ・エース、高町なのは。
片や管理局きっての敏腕執務官、フェイト・T・ハラオウン。
その2人が、こんな場所で何をしているかと言うと…
「それは、そうだけど…流石に、保管されているロストロギアを無断で持ち出して使うのは…手段がどうとか以前の問題なんじゃ…」
「乙女にとって恋愛は何にも勝る最重要事項なの。管理局の法律なんて、その前では塵よりも軽いの」
「バレて捕まったらどうするんだよ…」
「それで局をクビになるなら望むとこなの。ストーカー同然のファンを気にせず、堂々とユーノ君のもとに嫁げるの」
「クビじゃ済まないよ…下手すりゃ実刑は免れないよ…」
「その時はその時、ユーノ君とヴィヴィオと家族3人で愛の逃避行なの…あ、あったの!」
「え、本当にあったんだ?第87管理外世界で発見された超強力な媚薬、『サカリツーク8000』が!?」
なのはが目的のブツを発見した途端に、それまで乗り気じゃなさそうだったフェイトが食い付く。
「間違いないの…これさえあれば、夢にまで見たユーノ君でロストバージン…そのまま、あのブラコン巨乳女の手の届かない遠い世界で、ユーノ君と私とヴィヴィオの親子3人で幸せに暮らすの…」
「わわわ、私もソウマに処女捧げて…姫子から、略奪愛しちゃうんだ…エリオ、キャロ、もうすぐお父さんを紹介してあげるからね…」
ハァハァと不気味に息を荒げながら、妄想で盛り上がる2人。
と、その時、不意に庫内の照明が灯り2人を眩しく照らした。
「「っ…!?」」
慣れた暗闇からいきなり眩い光に照らされ、眩んだ目をしょぼつかせる2人の背後から、三つの人影が近付いてくる。
「ハイ、2人ともそこまでやで~」
「なのは、今すぐそのケースを置いてあった場所に戻せ。変な真似したらアイゼンの頑固な染みにするぞ」
「テスタロッサ、お前も両手を挙げて頭の後ろで組め。レヴァンティンの錆になりたくなければな」
管理局の切り札たる凄腕捜査官、八神はやて。
その両隣には、彼女の騎士であるヴィータとシグナムが控えている。
「ど、どうして分かったんですか…?」
「あれだけ血眼になってそのロストロギアの情報を調べていたら、お前達が何をしようとしているかぐらい簡単に検討がつく」
「嘘っ!?…さり気無く調べていたはずなの…」
「デスクワークサボって関連資料漁るのの何処が「さり気無く」だ!?」
「さぁ、2人とも観念しぃや。今なら、何も無かった事にしといたるから…」
シグナム・ヴィータと間抜けな遣り取りをするフェイトとなのはに溜息をつきつつ、はやてが2人に歩み寄る。
「ぐっ…こんなところで諦めるわけにはいかないの…このサカリツーク8000には、私の『ユーノ君ゲット大作戦・バレンタイン編』がかかってるの…」
「私だって、ソウマを姫子から奪い取る数少ないチャンスなんだよ!?はいそうですかと諦められないよ!」
「ロストロギア指定されてる媚薬をバレンタインチョコに入れて既成事実て頭悪過ぎやろ常識的に考えて…まぁ、なのはちゃんとフェイトちゃんが焦る気持ちも分からんでもないけど…」
ある意味予想通りの反応に、はやては頭を抱えたくなった。
六課の隊長クラス2人が本局に保管されているロストロギアを無断で持ち出して使用など、はやての責任問題だけでは済まないだろう。
下手すればなのはもフェイトも逮捕は免れない。
しかも、それを承知の上で次元世界のお尋ね者になってそれぞれ意中の人と逃亡生活を送るつもりでいるのだからタチが悪い。
当然、ユーノやソウマがこの事を知る由も無いのに。
「はやてちゃんに何が分かるって言うの?フラグが立つどころか、フラグを立てるお相手さえ居ないのに!」
「そうだよ!雑誌の写真撮影でいつも背景の穴埋めかハブにされて、ガチレズ扱いされた事の無いはやてに私達の気持ちは分からない!!」
グサッ!
グサグサッ!!
「ぐはぁっ…!?」
なのはとフェイトの言葉の刃がはやての心にクリティカルヒット!
はやてはその場に突っ伏して倒れてしまう。
「はやてーっ!?」
「主っ!?主ぃ!お気を確かに!!」
慌ててはやてを介抱するヴィータとシグナム。
その隙を逃すなのはとフェイトではなかった。
「フェイトちゃん、今のうちに逃げるの!」
「合点承知の介だよ、なのは!」
バリアジャケットを構築し、サカリツーク8000の保管されたケースを抱えて逃げ出すなのは。
フェイトもそれに倣う。
「しまった!?」
「あいつら…ん?」
咄嗟に追おうとするシグナムの手を、倒れたはやてが掴んでいた。
「主、如何されました?」
「………や…」
「…はい?」
何やらボソボソと呟くはやてに、怪訝そうに耳を近付けるシグナム。
「捕まえるんや…あの2人を…」
「は、はぁ…それは勿論、直ちに…」
「非殺傷設定は解除してかまへん…非常事態や、2人の生死は問わん…」
「………は?」
主の口から飛び出した不穏な言葉に、シグナムは我が耳を疑い、思わず硬直してしまう。
「ええから、何が何でも捕まえるんや!ロストロギアの奪回を最優先とし、2人があくまで抵抗するならDead or Aliveやー!!」
「はやてがキレたー!?」
完全にプッツンした状態で喚くはやてに呆然としながら、ヴィータは万が一を考えて保管庫の入り口で待機させておいたスバルとティアナが、何とかなのはとフェイトを取り押さえてくれる事を願ったが…
『大変ですぅ~!保管庫から出てきたなのはさんとフェイトさんに、スバルとティアナがあっさり撃破されてしまったですぅ~!!』
「やっぱ駄目かチクショー!」
やはり入り口で待機していたリインフォースⅡからの念話に、ヴィータが天井を仰いで絶叫する。
幾ら日々実力を上げているスバルとティアナとは言え、ユーノLOVEで暴走しているなのはとソウマLOVEで暴走しているフェイトの相手は荷が重過ぎたようだ。
『2人はそのまま逃走を続けているですよ!』
「行くぞヴィータ。こうなった以上、我らであの2人を止めるしかない!」
「でも、はやてはどーすんだよ!?」
最早完全にトチ狂ったのか、コロセーコロセーと十面鬼のように喚き散らすはやてをこのままにしておくのは気が引けたが…
「…置いていくしかあるまい。下手にお連れしたら、本気でなのはとテスタロッサを殺しかねん」
「…だな…」
それから、2時間46分にわたる追跡劇の末、なのはとフェイトはザフィーラの鋼の軛に行く手を阻まれ、シャマルによってリンカーコア<はらわた>をブチ撒けられ、行動不能に陥ったところを漸く御用となったのだった…
一方その頃、クラナガン郊外の豪邸・姫宮邸のキッチンでは…
「…どうして私は姫子に監視されながら、ユーノへのバレンタインチョコを作っているのかしら…?」
ボウルの中の湯煎で溶かしたチョコをゴムべらで掻き混ぜながら、エプロン姿の姫宮千歌音が溜息混じりに呟く。
「それはね、千歌音ちゃんがユーノ君へのチョコに変な物を入れたりしないようにする為だよ」
同じくエプロン姿の大神姫子(旧姓・来栖川)が、仁王立ちで腕組みしながら、そんな千歌音を見張っている。
「失礼ね。親戚の『J親父』さんから購入したこの『白金粒精泉ジャクビンビン』を入れるだけよ」
「名前だけで十分怪し過ぎるわーっ!」
スパーンッ!
「ぎゃふんっ…!?」
いかにも怪しげなJ丸印の小瓶を取り出した千歌音の顔面に、姫子のハリセンがいい音を立てて炸裂した。
「うぅ…姫子が、姫子が私とユーノのハッピーバレンタインを邪魔する…」
「ハッピーなのは千歌音ちゃんだけでしょ…そんな如何わしい薬を実の弟へのチョコに盛るなんて…」
「でも、これを使うと、いつもはベッドの中では生まれ立ての子犬のように大人しいユーノも、雄の本能丸出しでガンガン攻め立ててくれるのよ?」
「既に使用経験の前科アリ!?おまわりさんこの人です!」
姫子は本気で頭が痛くなってきた。
この容姿端麗・頭脳明晰なはずの親友は、弟の事になると一瞬で只の変態と化す。
デウス・エクス・マキナを巡る一連の戦いの後、千歌音がユーノと一緒に暮らす事にしたと聞かされた時は、姫子も千歌音の孤独を知っているだけに、心から祝福したのだが、まさかこの親友がここまでのブラコンに超進化<ビッグバン・プログレス>するとは思ってもいなかったのだ。
「姫子…見逃してくれたら、貴女にも一瓶分けてあげてもいいんだけど…」
「…シグルブレイドでぶった切られたいみたいだね…」
千歌音の提案に、米神に青筋を立てながら、姫子は怒りの力でスパローのウェアをゲイジングしようとするが…
「だって…大神君、姫子の事を大事にし過ぎてそうなんですもの…姫子だって、偶には壊れるぐらい滅茶苦茶にして欲しい、って思う時ぐらいあるでしょ…?」
「それは…まぁ、ねぇ………ソウマ君、いつも私の事気を遣ってくれるけど…気を遣い過ぎて、ちょっと物足りないかなぁ…なーんて思っちゃったりする事も…確かに…」
図星を指され、あっさり怒りを収めて同調しだす姫子。
やはり親友、何処か似た者同士なところがあったようだ。
「男性局員のお給料は安いけど、何とかやりくりして大分貯金も出来たし…そろそろ、子供も欲しいなぁ…なんて…」
「でも、姫子がそんなに怒るんじゃ仕方ないわね。残念だけど、今回はお詫びの手紙を添えて『J親父』さんに返品する事にしましょうか…」
ガシッ!
わざとらしく小瓶を仕舞おうとした千歌音の腕を、姫子が掴む。
「…どうしたの、姫子?」
「千歌音ちゃん…バレンタインは女の子にとっての一大イベントだよ?ちょっとぐらい、ハメ外しちゃってもいいんじゃないかな?」
極上の笑顔を浮かべながら、姫子は寝返った。
普段、千歌音に対するツッコミに情けも容赦も無いのは、実は欲求不満の八つ当たりも混じっていたのかも知れない。
「話は聞いたわ。私にも、その薬分けてもらえないかしら?」
いつの間に居たのか、キッチンの入り口にルナマリア・アスカ(旧姓ホーク)が佇んでいた。
「ルナちゃん、どうしてここに?」
「ツッコミの増援が要るかと思って来たんだけど…」
増援が現れて即寝返りとか、前代未聞である。
「まぁ、それはともかく…改めて、3人でバレンタインのチョコ作り、再開しましょうか」
「「おーっ!!」」
最早誰も止める者の居なくなった千歌音に、欲望に魂を売り渡した女2人が拳を振り上げて同意する。
結局、バレンタイン当日の2月14日を、なのはとフェイトは六課のオフィスで、始末書の山に埋もれて過ごした。
そして翌日の15日、ユーノとソウマとシンは黄色い朝日を見る羽目になり、千歌音と姫子とルナはその日一日、妙に肌がツヤツヤしていたという…
これにて今年のバレンタインSS記念は終了
前回、真面目なユーなの更新しといて、その翌日にこんなの更新する私は頭おかしいと思う