何を血迷ったかシリアスに挑戦してみました(ヲイ
高町なのはが任務中に撃墜された。
その一報を聞いたのは、無限書庫の業務が一段落し、千歌音とユーノが一息ついていた時だった。
病院に駆けつけた時、なのはは集中治療室の中だった。
待合室には、ハラオウン家や八神家といったいつもの面子の他に、なのはの家族や友人達の姿もあった。
彼らが、なのはが魔法と関わる切欠になったユーノを責めるのではないか、と千歌音は警戒したが、幸い、誰一人としてユーノに責任を擦り付ける者は居なかった。
「…僕の、せいだ………僕と、出会わなければ………僕が、なのはに魔法を教えなければ…こんな事には…」
…只一人、ユーノ本人を除いては…
どんな時も 傷付いた羽隠して
明日に向かう後ろ姿は もう見たくないわ
千歌音には、こうなる事は分かっていた。
デウス・エクス・マキナの中で見た未来の記憶。
その中には、高町なのはが撃墜され、その一件でユーノが自分を責め苛む姿もあった。
だから千歌音も、ここ最近はなのは当人への嫌悪は横に置き、彼女に近しい人達と同様に、無茶はしないように忠告をしてきた。
だが、彼女から返ってくる返事はいつも、
「大丈夫だよ」
だった。
何が大丈夫なものか。
結局、彼女はこうして重傷を負った。
そしてその事で、ユーノが心に深い傷を負ったのだ。
高町なのはが死のうが生きようが、千歌音の知った事ではない。
それどころか、一度この手で殺そうとした事さえある。
だが、その事で最愛の弟が、激しい自己嫌悪に陥っている。
こんな事にならないようにと願っていたのに、運命は変えられなかったのだ。
翌日、ユーノはいつものように、本局へと出勤しようとしていた。
その顔は憔悴し切り、とても書庫の仕事などさせられたものではない様子なのにも関わらず。
「ユーノ、今日は休みなさい。心の疲れが顔に出ているわよ」
だから千歌音は、ユーノを引き止める。
「大した事無いよ…それに、僕に出来る事はこれぐらいなんだから…」
ユーノも引き下がらない。
なのはに魔法を教え、その結果が彼女の撃墜事故へと繋がった、とユーノは頑なに責任を感じている。
だからこそ、そんな自分が、精神的な疲労を理由に休む事など許されない、そう思っているのだろう。
疲れ切った顔に、自虐的な笑みを浮かべている。
姉を心配させまいと笑って見せたのだろうが、それは、とても11歳の子供がするような表情ではなかった。
「…いいから休みなさい。休暇の申請は、私がしておくから」
そんな弟の姿に、声が詰まりそうになるのを堪え、有無を言わせぬ口調で高圧的に告げる。
そうでもしないと、ユーノがこのまま自分を追い詰め続け、壊れてしまいそうだったから。
「大した事じゃないって言ってるだろ!こんなの、なのはの怪我に比べたら…」
パァンッ!
「…いいかげんに、しなさい…」
「っ…姉、さん…?」
気が付けば、初めて、面と向かって、弟に、手を上げていた。
掌に残るジンジンとした熱と、ユーノの頬に浮かぶ赤く腫れた痕が、それを後から認識させる。
「確かに、なのはさんに魔法を教えたのは貴方よ…でも、管理局の仕事に就いたのも、無茶をして大怪我する羽目になったのも、全て彼女が自分で選んだ道よ…貴方は、それすらも背負い込もうとするの?」
「でも…僕と、出会わなければ…」
「彼女と出会ったのが貴方の運命なら、貴方と出会ったのは彼女の運命よ…貴方は、他人の運命まで背負うつもり?そんなの、傲慢以外の何物でもないわ…」
「………僕は………僕、は…」
言葉に詰まるユーノ。
やがて、堪え切れなくなったように、その翡翠のような瞳を潤ませ、涙を溢れさせる。
「ユーノ…」
「うぅ………う、ぁ…うわぁぁぁ…!」
千歌音は、ユーノをそっと抱き寄せる。
その腕の中で、姉の胸に縋るように、ユーノは、声を上げて泣きじゃくっていた。
そっと 涙を拭かせて そっと 優しく抱かせて
そっと この胸の中で 安らいで欲しい
いつの間にか、ユーノは千歌音の腕に抱かれたまま、眠ってしまっていた。
恐らく、昨夜は一睡もしていなかったのだろう。
自分を苛み続け、雁字搦めに縛り付けていた糸が切れたのと、泣き疲れたのもあるのだろう。
その寝顔は、歳相応の、11歳の少年のそれだった。
「ユーノ…貴方は、私を呪縛から救ってくれた…」
永遠に繰り返される、陽と月の巫女の運命。
呪いのようなその定めから自分を救い出してくれたのは、今、自分の腕の中で眠っている、小さな弟。
「だから、今度は私が貴方を守るわ…貴方を苦しめる、この世界の運命から…」
一度は二つの世界の邪な意思によって引き裂かれ、再会を果たしたかと思えば、敵同士に分かれてしまった弟。
しかし彼は、運命を乗り越え、こうして、彼女のもとに戻ってきた。
「もう、二度と離れないから…私の、この世で一番大切な…愛しい弟…」
何があろうと、絶対に手放しはしない。
改めて、千歌音は、心にそう誓うのだった。
愛しい貴方が 未来<あす>を 飛べる ように
はぐれる事無く いつも 傍に 居るわ
それから、8年後。
JS事件も解決し、その事後処理に、無限書庫も相変わらずの激務の真っ只中にあったその日。
ユーノが、一人の少女を書庫に連れてきた。
「彼女は高町ヴィヴィオ。高町教導官の娘で、今日からここで司書見習いとして働く事になったよ」
金髪に、右目が緑、左目が赤のオッドアイの少女。
千歌音は、彼女の事も、デウス・エクス・マキナの中で知っていた。
最初はユーノに懐いていながら、5年も経たずに格闘技へと興味を移し、書庫を去っていく、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの『娘』。
「そう…宜しくね、ヴィヴィオさん」
「うんっ!」
こちらの作り笑顔に、無邪気な笑顔を返してくるヴィヴィオ。
それが、千歌音には、本当にどうでもいいものとしか見えなかった。
やがてこの少女もユーノから離れていく。
だが、そんな事はもうどうでもいいのだ。
ユーノの傍には、ずっと、自分が居るのだから。
彼を支えられるのは、この世でたった一人の姉である、自分だけなのだから。
暗い夜を 貴方が彷徨うならば
月に代わって向かう先へと 照らしてあげたい
創起さんや浅倉さんに倣って歌詞を取り込んだ作風を目指してみました
タイトル及び本編中の歌詞は『魔法騎士レイアース』の2mdEDより
我ながら身の程知らずな事をしたもんだと痛感しています(;^_^A
高町なのはが任務中に撃墜された。
その一報を聞いたのは、無限書庫の業務が一段落し、千歌音とユーノが一息ついていた時だった。
病院に駆けつけた時、なのはは集中治療室の中だった。
待合室には、ハラオウン家や八神家といったいつもの面子の他に、なのはの家族や友人達の姿もあった。
彼らが、なのはが魔法と関わる切欠になったユーノを責めるのではないか、と千歌音は警戒したが、幸い、誰一人としてユーノに責任を擦り付ける者は居なかった。
「…僕の、せいだ………僕と、出会わなければ………僕が、なのはに魔法を教えなければ…こんな事には…」
…只一人、ユーノ本人を除いては…
どんな時も 傷付いた羽隠して
明日に向かう後ろ姿は もう見たくないわ
千歌音には、こうなる事は分かっていた。
デウス・エクス・マキナの中で見た未来の記憶。
その中には、高町なのはが撃墜され、その一件でユーノが自分を責め苛む姿もあった。
だから千歌音も、ここ最近はなのは当人への嫌悪は横に置き、彼女に近しい人達と同様に、無茶はしないように忠告をしてきた。
だが、彼女から返ってくる返事はいつも、
「大丈夫だよ」
だった。
何が大丈夫なものか。
結局、彼女はこうして重傷を負った。
そしてその事で、ユーノが心に深い傷を負ったのだ。
高町なのはが死のうが生きようが、千歌音の知った事ではない。
それどころか、一度この手で殺そうとした事さえある。
だが、その事で最愛の弟が、激しい自己嫌悪に陥っている。
こんな事にならないようにと願っていたのに、運命は変えられなかったのだ。
翌日、ユーノはいつものように、本局へと出勤しようとしていた。
その顔は憔悴し切り、とても書庫の仕事などさせられたものではない様子なのにも関わらず。
「ユーノ、今日は休みなさい。心の疲れが顔に出ているわよ」
だから千歌音は、ユーノを引き止める。
「大した事無いよ…それに、僕に出来る事はこれぐらいなんだから…」
ユーノも引き下がらない。
なのはに魔法を教え、その結果が彼女の撃墜事故へと繋がった、とユーノは頑なに責任を感じている。
だからこそ、そんな自分が、精神的な疲労を理由に休む事など許されない、そう思っているのだろう。
疲れ切った顔に、自虐的な笑みを浮かべている。
姉を心配させまいと笑って見せたのだろうが、それは、とても11歳の子供がするような表情ではなかった。
「…いいから休みなさい。休暇の申請は、私がしておくから」
そんな弟の姿に、声が詰まりそうになるのを堪え、有無を言わせぬ口調で高圧的に告げる。
そうでもしないと、ユーノがこのまま自分を追い詰め続け、壊れてしまいそうだったから。
「大した事じゃないって言ってるだろ!こんなの、なのはの怪我に比べたら…」
パァンッ!
「…いいかげんに、しなさい…」
「っ…姉、さん…?」
気が付けば、初めて、面と向かって、弟に、手を上げていた。
掌に残るジンジンとした熱と、ユーノの頬に浮かぶ赤く腫れた痕が、それを後から認識させる。
「確かに、なのはさんに魔法を教えたのは貴方よ…でも、管理局の仕事に就いたのも、無茶をして大怪我する羽目になったのも、全て彼女が自分で選んだ道よ…貴方は、それすらも背負い込もうとするの?」
「でも…僕と、出会わなければ…」
「彼女と出会ったのが貴方の運命なら、貴方と出会ったのは彼女の運命よ…貴方は、他人の運命まで背負うつもり?そんなの、傲慢以外の何物でもないわ…」
「………僕は………僕、は…」
言葉に詰まるユーノ。
やがて、堪え切れなくなったように、その翡翠のような瞳を潤ませ、涙を溢れさせる。
「ユーノ…」
「うぅ………う、ぁ…うわぁぁぁ…!」
千歌音は、ユーノをそっと抱き寄せる。
その腕の中で、姉の胸に縋るように、ユーノは、声を上げて泣きじゃくっていた。
そっと 涙を拭かせて そっと 優しく抱かせて
そっと この胸の中で 安らいで欲しい
いつの間にか、ユーノは千歌音の腕に抱かれたまま、眠ってしまっていた。
恐らく、昨夜は一睡もしていなかったのだろう。
自分を苛み続け、雁字搦めに縛り付けていた糸が切れたのと、泣き疲れたのもあるのだろう。
その寝顔は、歳相応の、11歳の少年のそれだった。
「ユーノ…貴方は、私を呪縛から救ってくれた…」
永遠に繰り返される、陽と月の巫女の運命。
呪いのようなその定めから自分を救い出してくれたのは、今、自分の腕の中で眠っている、小さな弟。
「だから、今度は私が貴方を守るわ…貴方を苦しめる、この世界の運命から…」
一度は二つの世界の邪な意思によって引き裂かれ、再会を果たしたかと思えば、敵同士に分かれてしまった弟。
しかし彼は、運命を乗り越え、こうして、彼女のもとに戻ってきた。
「もう、二度と離れないから…私の、この世で一番大切な…愛しい弟…」
何があろうと、絶対に手放しはしない。
改めて、千歌音は、心にそう誓うのだった。
愛しい貴方が 未来<あす>を 飛べる ように
はぐれる事無く いつも 傍に 居るわ
それから、8年後。
JS事件も解決し、その事後処理に、無限書庫も相変わらずの激務の真っ只中にあったその日。
ユーノが、一人の少女を書庫に連れてきた。
「彼女は高町ヴィヴィオ。高町教導官の娘で、今日からここで司書見習いとして働く事になったよ」
金髪に、右目が緑、左目が赤のオッドアイの少女。
千歌音は、彼女の事も、デウス・エクス・マキナの中で知っていた。
最初はユーノに懐いていながら、5年も経たずに格闘技へと興味を移し、書庫を去っていく、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの『娘』。
「そう…宜しくね、ヴィヴィオさん」
「うんっ!」
こちらの作り笑顔に、無邪気な笑顔を返してくるヴィヴィオ。
それが、千歌音には、本当にどうでもいいものとしか見えなかった。
やがてこの少女もユーノから離れていく。
だが、そんな事はもうどうでもいいのだ。
ユーノの傍には、ずっと、自分が居るのだから。
彼を支えられるのは、この世でたった一人の姉である、自分だけなのだから。
暗い夜を 貴方が彷徨うならば
月に代わって向かう先へと 照らしてあげたい
創起さんや浅倉さんに倣って歌詞を取り込んだ作風を目指してみました
タイトル及び本編中の歌詞は『魔法騎士レイアース』の2mdEDより
我ながら身の程知らずな事をしたもんだと痛感しています(;^_^A