宮大工 西岡常一の遺言
西岡常一(にしおか つねかず:1908~1995)は奈良県法隆寺の宮大工の家に生まれ
希代の棟梁となった人である。法隆寺の昭和の大修理や薬師寺伽藍の復興に尽力し、
ひたすら木のいのちを生かすことを考えた。
西岡氏は一瞥しただけで木の質や癖、産地まで見抜く。宮大工としての豊富な経験と深い造詣、
柱に残った釘跡ひとつから創建時どのように建てられていたかまで分かるという。
儲けなどは頭になく、仕事のない日は田畑を耕し、困窮しても民家建築には手を染めない。
本当の職人とはこういう人のことを言うんだなと納得させられた。
西岡氏は小学校を卒業して祖父の厳命で農学校に入ることになるが、木の命を知るには
まず土を知れとの教えだった。
木に無理をさせずに組み上げた先人の叡知に触れ、千年先を考えた仕事に精魂傾ける。
速さと効率、利益が命の現在の社会にあって
「ごまかしやなしに、ほんまの仕事をやってもらいたい」
という後進への言葉はこの人だから言えることなのだろう。
今建築業界では様々な問題を抱えている。耐震偽造から建築基準法が改正され法の基準に
頼りきって、考え・検証することが少なくなってきたのも一つだと思う。
法令遵守は必要だが見直さないといけないことが数多くあるのも事実である。
1000年先を見据えた建築を造った棟梁の言葉の中に、忘れてしまった大事なものを取り戻す
ヒントが潜んでいるのは間違いないだろう。