大切に見つめるということ

ただ、強く、熱く見つめればいいというものではない
目の前の人や物は
むしろ変わらずにそこにある
変わっているのは僕の目だ。
僕の心持ちでその像は
硬くも柔らかくもなり
優しくも辛くも映る
目を閉じて
或はその人がいなくなった後
僕がその場を立ち去った後
まぶたに残る残像は
もっと劇的に自分の心を映し出す。
僕にとっての真実は
そちらの方だと信じている

こんなお水がなんであんなに美味しかったのだろう
いや、むしろそのカルキ臭さが
夏の光を彩っていた
夏の光は今もそんなに変わるものではないだろうけど
あの時僕はもっと深く強く息をしていた
そう思うと苦しささえも美しい
僕はいろんな色を見て来たのだな。
そしてその時を立ち去った今も
それは心に残っているのだな。
こんなに鮮明に
それは残るものなんだな。
だから大切な人、愛しい空気
会う度に色を変える僕の心の鏡
見つめていたいと
心から思う。
僕の目が閉ざされる時まで
一度でも多く
見つめていたい。
